ドイツで行われた、中国臓器収奪問題に関するデモンストレーション(大紀元)

10日間で4つも提供された心臓 名古屋実習生の武漢での移植手術

名古屋にいた中国人実習生が重度の心臓病を患い、心臓移植手術のために中国に帰国した事案について、新たな事実が発覚した。女性は、武漢協同病院に着いてからの10日間で、3回も移植用心臓が提供可能な状態だったという。移植に至った3回目は、同時に2つの心臓が準備された。中国官製・人民日報で特集記事で伝えた。移植手術までの待機時間は日本なら3年以上だ。中国は、移植手術のために囚人の臓器の利用を停止したとしているが、いまもなお良心の囚人から移植手術のための臓器を収奪しているとの疑惑が深まった。

心臓移植手術までの待機時間は通常、日本なら3年以上かかる。中国は、移植手術のために囚人の臓器の利用を停止したとしているが、ドナー数を超える移植手術件数を行う病院は、中国全土に存在する。このため、今もなお中国では良心の囚人から移植手術のための臓器を収奪しているとの疑惑が絶えない。

この実習生についての心臓移植に関する話題は、在名古屋中国総領事館や中国官製メディアも「日中友好の証」として特筆した。複数の日本のメディアも「日中命のバトンが繋がれた」と美談として報道している。

武漢は渡航制限しており、中国側も高額な医療費、渡航費用、人材や設備が必要だったにも関わらず、中国当局は名古屋の中国総領事館を通じて実習生の心臓移植のために「全面的な調整」を行った。この話題自体が、両国間関係の緩和を狙う政治宣伝であった可能性がある。

米シンクタンク・ジェームスタウン財団は東京大学アジア先進研究所客員教授のラッセル・ヒョウ氏の分析として2019年、日本における中国共産党の対日工作の調査報告を発表した。このなかで同氏は、中国大使館は現地の政策決定や世論に影響を与える工作を行い、日中友好を掲げて必要に応じて融和ムードを作り、相手の安全保障能力を弱体化させ「政治戦争を仕掛ける」と表現した。こうした対外活動は、中国共産党中央委員会統一戦線部の活動とも一致すると指摘している。

10日間で3度提供された移植用の心臓

人民日報は7月初め、特集記事として、名古屋実習生の心臓移植までの渡航を詳細に伝えた。それによると、山東省威海市出身の24歳の女性・孫さんは、2年前に愛知県の電子機器製造工場で研修生として働いていた。

2019年5月、彼女は薬物アレルギーのために重度の心臓疾患を患い、藤田医科大学病院で治療を受けていた。9月、病院は孫さんに体外設置型人工心臓の手術を行った。しかし、家族と本人は機器のない生活を望んでいた。

孫さんの父親は武漢の華中科技大学同済医学院附属協和医院(以下、武漢協和病院)を訪ね、娘に「代わりの心臓」を見つけてもらえるよう、心臓外科医の董念国教授に掛け合った。

董教授は、中国における臓器移植問題について調査を行う人権団体・追跡調査国際(WOPIFG)により「臓器狩りに関与していると疑われる者」としてリストアップされている人物だ。

父親からの依頼ののち、中国の協和病院と日本の藤田医科大学病院は、孫さんの病状について数回のオンライン会議を行った。2020年1月24日、孫さんは武漢で心臓移植を予定された。しかし、中共ウイルス(新型コロナウイルス)の流行により、武漢便はキャンセルされた。

この時から、中国当局は、孫さんの渡航のために支援を始めた。中国南方航空の民間機737(160席)をチャーターして「専用機」とした。座席や電源の配置、特別な救急担架と輸液ラックの設置、UPS、モニター、酸素吸入器、除細動器などの医療機器の設置場所を設けた。

6月12日、名古屋の中国総領事館が「全力の調整」により両国の外交、出入国管理部門および医療界の協力を経て緊急輸送路「グリーンチャネル」を設けることができたと書いた。 孫さんは中部空港から武漢へ渡った。

6月16日、孫さんが武漢に着いてわずか4日目のことだ。人民日報によれば、地元・武漢で心臓ドナーが現れた。しかし、ドナーの心臓の冠状動脈は移植手術には適さないとして、見送られた。

6月19日、湖南省で別の心臓が「非常に良好な状態」で現れた。しかし、孫さんは39度の高熱だったため、リスクを懸念して、移植手術を実施するには至らなかった。

6月25日、「喜ばしいニュース」として、広州から一人、武漢から一人の心臓提供があったという。董念国教授チームの20人は、「広州で自動車事故により脳死となった33歳の男性」のドナーは、より強い臓器であるとして選択し、孫さんに心臓移植手術を行った。

こうして、人民日報の報道から、わずか10日間で4つの心臓が提供可能な状態であることが明らかになった。

「問題はこの4つの心臓は、誰のものだったのかということだ」と医療倫理擁護団体「臓器の強制摘出に反対する医師の会(Doctors Against Forced Organ Harvesting)」事務局長トルステン・トレイ博士は大紀元の取材に答えた。

中国臓器移植問題に詳しい、イスラエルのテルアビブ大学心臓外科医のジェイコブ・ラビ教授は大紀元の取材に対して、「もし、効率がよく完全なドナーおよび臓器分配システムが確立されているならば、(短期間で複数回の心臓提供は)不可能とは言えない。しかし、これまでの中国の慣習から、非常に疑わしい」と答えた。

中国臓器移植は推定「1兆円産業」といわれる。2019年6月、ロンドンで開かれた第三者による国際的な人道犯罪を調査・裁量する民衆法廷は、1年間に渡り50人あまりの報告者や経験者の証言をもとに、最終裁定を発表した。

民衆法廷・勅選弁護士のジェフリー・ナイス卿は、「中国が以前から無実の人間の臓器摘出に加担している点は反論の余地がなく、また、どのような立場にせよ中国と取引を行っている者は『犯罪国家』と取引していることを認識すべきだ」とする最終判決を発表した。

(編集・佐渡道世)

※2020年8月13日23時、記事タイトルおよび内容を修正しました。

関連記事
中共による臓器摘出から生還した程佩明さんが真実を告白。暗殺の危機に直面しながらも、真実を語り続ける姿勢に世界が注目し、米国も保護を進める。人権侵害の実態に対する国際社会の連帯が求められている
中国の中南大学湘雅第二病院に勤務していた羅帥宇氏が、不審な死を遂げた。生前の録音から、同病院が臓器移植研究のために子供のドナーを求めていた可能性が浮上。彼の家族は、羅氏が病院告発を計画していたことから口封じされたと主張している。
中野区で開催された講演会で、日本在住の法輪功学習者が中国で不当に拘束された妹の救出を訴えた。中国での劣悪な待遇や強制的な血液検査の実態を語り、臓器収奪の危険性を指摘。日本の人々に支援と協力を求めた
世界第2位の臓器移植大国だが、その臓器の出所に疑問が持たれている中国。世界で中国の生体臓器収奪が問題視される一方で中国共産党は否定している。今回、中国で臓器収奪に関与した元医師のトフティ氏が登壇し、中国での強制的な臓器収奪「臓器狩り」の実態を証言した。
10月12日、元中国外科医エンバー・トフティ氏の来日に際して、中国の臓器移植問題に関する講演会を開催した。山梨県から足を運んだ長嶺医師は、臓器狩りが起きていることをより多くの医者同士をしてもらいたいと述べた。