ウィーチャットを運営するテンセントは社内に共産党支部がある(GettyImages)

ウィーチャットを運営するテンセント、社内に中国共産党支部 党員7000人超

中国深センの大手IT企業・騰訊(Tencent、テンセント)が提供するアプリ・微信(WeChat、ウィーチャット)について、米国当局は安全保障上の脅威として大統領令に基づき取引停止を決めている。最近、大紀元が入手した情報によると、テンセントは中国共産党支部を社内に設けており、党体制強化に協力している。大紀元はこのほど、テンセントの一部の党支部に所属する党員7000人あまりの名簿を入手した。

テンセントは中国本土で最大規模のインターネット企業。2019年3月31日時点で社員数は5万4600人に上る。中国企業に設置されている共産党委員会は、「中国共産党定款」等に基づき、会社幹部らが共産主義イデオロギーに基づいた人材養成や監督を行う。さらに、共産党の路線や政策の宣伝活動を行う。党の要求は中国の法律で定められてはいないが、企業は党に従わなければ企業の発展は難しくなる。

テンセント社内に設けられた共産党委員会は12の党本部、116の支部に分かれ、深セン、北京、上海、広州、成都などの8つの事業部に分布している。しかも、クラウドコンピューティングや音楽担当、オンライン決済担当、ソーシャルメディアプラットホーム担当、ネット教育担当など、各事業部門に応じた党支部も設置されている。

大紀元はこのほど、テンセント社内の党員名簿19通を入手した。党員は7723人になることがわかった。しかし、リストは完全ではなく、同社創業者であり全国人民代表大会代表(国会議員に相当)を務める馬化騰氏をはじめ、多くの幹部が含まれていない。

テンセントはイデオロギー的にかなり中国共産党寄りである。サウスチャイナ・モーニング・ポストは2018年、同社の共産党組織責任者の話として、当時社内にはすでに226の党組織があり、1万962人の党員がいると語っている。「事業のあるところに党の組織と党の仕事がある」と責任者は話している。

馬化騰最高経営責任者(CEO)は、積極的に中国共産党への忠誠を示している。2018年6月初め、馬化騰氏とネット通販大手の京東集団(JD.com)の劉強東氏は、紅軍服を着て、毛沢東ゆかりの地である延安を訪れた写真がネット上に出回り、「党に媚を売りすぎ」などの批判を集めた。

テンセントの共産党委員会書記は11人いる。そのうちの1人である郭凱天氏は同社の上級副総裁を務め、法務、行政、安全管理などを担当している。3人の副書記は、会社の情報セキュリティ管理、インターネットメディア、政府関連業務などを担当する幹部である。

テンセントの共産党委員会はまた、インターネット企業で初となる党機関紙誌「騰翔」を創刊した。2016年には同会がインターネット企業の中で唯一「全国先進基礎党組織」に選ばれている。

国有通信企業と協力して監視体制を強化

また、テンセントは、中国通信大手で国有企業と協力して、党員らの行動監視を可能にするシステムを作成している。

機能としては、テンセントを使用する党員の携帯電話データを収集して、行動監視や情報制御を行っている。このシステムについての説明は中国聯通(チャイナ・ユニコム)の子会社である中国聯通系統集成河南支社の内部文章にあった。

同説明、ネット通報の手段はこれまでのパソコンからスマートホンまで拡大し、ウィーチャットなどのアプリを利用するよう提言している。テンセントはすでに、中国共産党の監視体制の一部とも言える。ウィーチャット上の発言により、逮捕・連行・実刑判決が下る例がある。

中国では電子決済から個人や組織との情報交流まで、テンセントのサービスが生活に欠かせないものとなっている。ブルームバーグは、多くのサービスをウィーチャットに集約したため、市民への監視が容易になったと報じた。

3月2日、オランダの実業家でハッキング技術に詳しいビクター・ジュベール(Victor Gevers)氏は、テンセントのアプリの使用者たちは、数百万回にのぼる会話とユーザー情報が、中国の警察に伝送されていることを明らかにした。

広く知られている例としては、2019年末に中共ウイルス(新型コロナウイルス、武漢肺炎)について、友人や同級生のウィーチャットのグループで注意喚起した武漢の眼科医・李文良氏は、警察の取り調べを受けて反省文書を強要されている。のちに李医師はウイルスに感染し、死亡した。

法輪功迫害情報サイト・明慧ネットは7月30日、中国国内の法輪功学習者が参加していたウィーチャットのグループで300人以上が自宅から誘拐されたり私財を没収されたりするなどの迫害が発生したと伝えた。

ほかにも、ウィーチャットを通じて国外情報を広く伝えたとして、警察に家宅捜索されたり、拘留されたりした例が報告されている。

2017年9月、世界情勢を話し合うウィーチャットグループの「環球時報(グローバルファクトブック)」の代表である劉鵬飛博士が北京の警察に逮捕された。劉博士には2019年4月、「煽りと挑発」の罪で懲役2年半の実刑判決が下った。

2019年8月、重慶富華典當の社長・李淮慶氏は、ウィーチャットにおける政治的な発言が「国家転覆罪」とみなされ、同社の1億元以上の資産が没収された。

ニューヨーク・タイムズ紙、今年4月の報道によると、中国当局は通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)の元社員5人を逮捕した。5人はウィーチャットのチャットグループで同社とイランの取引について話し合ったためだという。

米国は危険視 大統領令を発布

米トランプ大統領は8月7日、ウィーチャットと、北京拠点のバイトダンス(字節跳動科技)の動画共有アプリ・TikTokティックトック)に対して、取引を禁止する大統領命令にサインした。中国企業のアプリは、米国人の個人情報を収集して中国共産党に提供しており、脅迫やスパイ活動につながるとしている。

大統領は声明のなかで、中国共産党が米国人や在外中国人の機密情報を入手するためのパイプとなり、中国共産党の利益のために虚偽のプロパガンダ活動を行い、商業スパイ活動に従事していると非難している。取引は、9月下旬から禁じるという。

トランプ政権関係者は、ウィーチャットはスパイのみならず、海外世論を中国共産党の都合の良いように誘導するため、中国についての「良い話」や嘘の情報を拡散させる強力なチャネルになっていると指摘している。

(翻訳編集・佐渡道世)

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