新型コロナウイルスの効果的な治療法開発に取り組むオーストラリアの医学者らは、思わぬものに目を向けている。アルパカだ。
ビクトリア州メルボルンにあるウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所(WEHI)の研究者らは、アルパカの免疫系が持つ珍しい特性が新型コロナウイルスに有効な治療法になるかどうか積極的に研究を進めている。
彼らは8月11日に発表された論文で、ラクダ科の動物(アルパカ、ラクダ、ラマ等)はその大きさから新型コロナウイルス治療に効果的だとされる小型の抗体を生成すると説明した。
8月13日、WEHI研究チームのワイ・ホング・タム(Wai-Hong Tham)准教授はエポックタイムズの取材に対して次のように語った。
「これからこの非常に小型な抗体(通称ナノボディ)を抽出・分析し、ウイルスを遮断するのに最も効果的なものを特定します」
またウイルスを遮断するのに最適なナノボディを特定した後、それらの構造を図表化したデータを用いて「人体に安全かつ効果的に使用できる抗体ベースの治療法を開発する」と述べた。
ナノボディは、従来の抗体よりも結合しやすく、安定していて再現性が高いことから、研究者らの注目を集めている。しかし、通常の抗体よりも10倍小さいため研究はより複雑になる。
ウイルスを正常に遮断するアルパカのナノボディを可視化するために、タムチームはオーストラリア原子力科学技術機構(Australia’s Nuclear Science and Technology Organisation)、オーストラリアン・シンクロトロン(Australian Synchrotron)の科学者らと共同研究している。
オーストラリアン・シンクロトロンの主任研究員であるマイケル・ジェームズ教授は、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)の表面から突出するスパイクをアルパカに注入すると述べた。スパイクとは、コロナウイルスが細胞に侵入して「複製を開始する」ために使用するものだ。実験ではSARS-CoV-2の非感染性のスパイクが使用される。
「ウイルスを攻撃する抗体の重要な部分を切り取ることができれば、それらの断片またはナノボディを使用してウイルスに結合し、ウイルスの細胞への侵入を防ぐことができます」とジェームズ氏は述べた。
WEHIの研究者らは、新型コロナウイルのヒト肺細胞への結合を防ぐ天然の抗体に類似した治療法を開発したいと考えている。タム氏はこれを「ウイルス感染サイクルの最初のステップ」だと述べた。
バイオ医薬品として知られる抗体をベースにした医薬品は、すでにガンなどの病気や炎症性疾患、自己免疫疾患に臨床使用されている。
ワクチンではない
タム氏は、抗体ベースの治療はワクチンとは異なるのだと強調した。
「ワクチンはヒトの免疫反応を誘発して抗体を生成しますが、抗体ベースの治療では抗体を直接投与します」
これが有効であれば、WEHI療法は新型コロナウイル治療と初感染の予防への効果が期待される。しかしタム氏は「効果があるのは治療を受けている間だけだろう」と述べた。
タム氏とWEHIチームは、ウォルター・アンド・イライザ・ホール医学研究所、ドハーティ研究所、CSL、Affinity BIO、オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)、バーネット研究所、カービー研究所の感染症・抗体治療を専門とする研究者らを集結させた「生物学研究プログラム」のメンバーである。
彼らはオーストラリア連邦政府とビクトリア州政府の両方から資金援助を受けている。
(大紀元日本ウェブ編集部)
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