李克強首相、洪水被害の重慶市を視察、人民日報などは一時「無視」
中国の李克強首相は8月20日、深刻な洪水被害を受けた四川省重慶市に入り、被災状況を視察し、住民を慰問した。一方、習近平国家主席は18日以降、同じく水害に見舞われた安徽省を視察していた。しかし、中国共産党機関紙・人民日報、国営新華社通信と国営中央テレビ放送(CCTV)は習氏の視察だけを取り上げた。海外メディアは、党内序列5位でイデオロギーやプロパガンダ工作を主管する王滬寧氏の命令で、官製メディアが李首相について報道を控えたと指摘した。
最初に李克強首相の重慶市視察を報じたのは、国務院(内閣に相当)の公式ウェブサイト「中国政府網」だ。中国政府網は、李首相が20日、「慰問のため」重慶市に入ったと強調した。
中国政府網によると、李首相は20日午前11時頃、専用機で重慶市に到着し、被災状況が最も深刻な重慶市潼南区双灞村に入った。同ウェイブサイトに掲載された写真と映像には、長靴姿の李首相が、水が引いた後の泥が残る重慶市の町を歩き、片付ける住民と会話する様子があった。
大紀元の検索では、新華社通信電子版と中国新聞網は23日になって初めて李首相の重慶市視察を報じた。人民日報電子版は24日午前5時に報道を行った。
一方、人民日報、新華社通信とCCTVは、習近平国家主席が8月18~20日まで、安徽省を視察したことを大々的に報道した。さらに、視察先は農業生産が再開した農地、泥水はなく後片付けが終わったきれいな町だった。SNS上では、泥の中を歩く李首相とは対照的だとの声が上がった。
米ラジオ・フリー・アジアは8月21日付の評論記事で、人民日報などの中国官製メディアが習主席の視察だけを取り上げて、李首相の視察を「無視した」理由は、「習主席より李首相の方が目立ってはいけないという(当局の)方針があったのでは」と推測した。
同記事の執筆者は、中国国内の報道機関に勤める友人の話として、数年前に党中央宣伝部のトップである王滬寧氏が人民日報に対して、「李克強氏に関する報道は、一面トップに載せてはいけない」と命令した、と述べた。「人民日報は、当日の紙面に習近平氏の報道がなくても、李克強氏の報道を一面トップに掲載してはならない」とした。
「中国政府網」は、人民日報などに対抗して、同サイトのトップページに李首相の重慶市視察についての特集コーナーを設け、23日までに今回の視察に関して8本の記事を発表した。地方メディアの多くは中国政府網の記事を転載している。
大紀元コメンテーターの鍾原氏は、習近平国家主席と李首相の対立がますます表面化しており、「止まる気配がない」との見方を示した。
「国内外の圧力が強まる中、最高指導部や党内の不協和音がますます響くだろう」
(翻訳編集・張哲)