オーストラリアの記者2人、安全上の懸念で中国から引き揚げ 豪中が外交交渉
オーストラリア放送協会(ABC)とオーストラリアン・フィナンシャル・レビュー(AFR)の両社は、ジャーナリスト2人を中国から移動したと伝えた。2人は、オーストラリア政府と中国共産党当局との外交交渉の末、9月8日までに出国した。中国当局は2人に出国禁止措置を命じており、拘束を恐れてオーストラリア公館に一時避難していた。
ロイター通信によると、中国の政府当局者は9月2日深夜12時過ぎに、ABCの北京駐在員ビル・バートルズ記者、AFRの上海駐在員マイケル・スミス記者の家宅訪問をし、この数日前に中国当局が拘禁した中国環球電視網(CGTN)のオーストラリア国籍のテレビキャスター成蕾(チェン・レイ)氏に関する審問に応じるよう求めた。
オーストラリアのマリス・ペイン外相は声明で「北京のオーストラリア大使館と上海のオーストラリア総領事館は、中国当局と通話し、2人の安全と帰国を確保した」と述べた。
バートルズとスミスの両氏は、中国の秘密諜報機関である国家安全部による1時間の個別尋問に応じた後、初めて、中国からの出国を許可された。
バートルズ氏は、尋問はある国家安全保障の案件に関するものだと伝えられ、国家安全部の当局者からは自身の報道内容については一度も質問されなかったという。
ABCの報道によると、中国を出国するおよそ1週間前、在中オーストラリア外交当局者がバートルズ氏に出国するよう2度警告していたという。しかし、中国当局はバートルズ氏が出国する前に行動を起こした。
オーストラリアに到着したバートルズ氏はABCに対して、慌ただしい数日間だったと語り、「真の法の支配がある国に戻ってこられてほっとしている」と言った。
マイケル・スミス氏は8日にAFRの取材で、2日の深夜に警察が尋問したときの心境を述べた。「警察の深夜の訪問は威圧的で不必要であり、現在、中国で外国人ジャーナリストが受けている圧力を浮き彫りにしている」とスミス氏は述べた。
AFRの編集長であるマイケル・スタッチベリー氏と編集者のポール・ベイリー氏は声明で、「上海に2年半駐在していた特派員のマイケル・スミスさんとABC社のビル・バートルズさんが今朝、無事オーストラリアに帰国したことを嬉しく思う」と述べた。
「通常の報道業務を行っていた2人のジャーナリストを標的としたこの事件は、遺憾で憂慮すべきものであり、オーストラリア・中国間の協力関係を損なうものだ」と彼らは発表した。
ABCニュースのディレクター、ギャビン・モリス氏は8日に声明で、オーストラリア政府からの通告を受けてバートルズ氏を帰国させたが、できるだけ早く替りのスタッフを中国に送ることを目指していると述べた。
「中国の物語、オーストラリアとの関係、そしてオーストラリア地域と世界での役割は全てのオーストラリア人にとって非常に重要です。私たちは引き続き現地にジャーナリストを派遣し、報道を続けたいと思っている」とモリス氏は述べた。
(大紀元日本ウェブ編集部)