2019年11月21日、パリのタブレット画面に表示された動画共有SNSアプリ「TikTok」 のロゴ (Lionel Bonaventure/AFP via Getty Images)

豪シンクタンク、 TikTokは「強力な中国の政治家」海外でも情報の流れ操作

オーストラリア戦略政策研究所ASPI)は、北京企業の提供する短編動画投稿アプリTikTokは、中国共産党にとって好ましい世界世論の形成に強い影響力をもつことから、「強力な政治家」と喩えた。

ASPIは最近、「TikTokとウィーチャット、グローバルな情報の流れを操作する(TikTok and WeChat:Curating and controlling global information flows)」と題した新たな報告書の中で、TikTokはどのコンテンツを表出させるかを操作しているとした。

あらゆる政治的・社会的なトピックを検閲し、コンテンツの降格や削除を行っている。同報告は、「地理的な地域、トピック、言語を超えた情報の流れを秘密裏にコントロールする能力を持ち、展開することで、TikTokはグローバルな影響力を持つ強力な政治参加者とみなすことができる」としている。

2019年の内部文書で、TikTokは、米トランプ大統領や日本の安倍総理大臣などの国家指導者の情報を含むコンテンツについても検閲している。また天安門広場、チベット、新疆ウイグル、法輪功といった中国共産党が検閲している情報も取り下げ対象にするよう、社員に通知していることが発覚した。

ASPIによれば、TikTokの社員がこの政治検閲問題は、今も行われていると暴露した。

ASPIは、オーストラリア国防省から資金の一部を受け取り、同国の安全保障体制を支援する報告を作成している。今回は米国国務省から25万豪ドルの研究補助金を受けて、報告書の作成に使用した。

北京拠点の字節跳動(バイトダンス、ByteDance)が所有するTikTokは、2020年7月時点で世界中に7億人近いユーザーがいる。このうち、1億人は中国国外のアカウントだという。中国でもっとも人気のある多機能アプリの微信(ウィーチャット、WeChat)は騰訊(テンセント、Tencent)が所有している。

フェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)、インスタグラム(Instagram)など、国際的なソーシャルメディアネットワークの大部分は、中国共産党の検閲システムにより同国内では利用できない。しかし、TikTokやウィーチャットなどの中国企業のアプリは海外に拡大して商業的利益を得ている。さらに、これらの中国アプリは、表現の自由を含めて、中国政府の好まない話題を検閲するシステムをそのまま「輸出」している。

TikTokの広報担当は、中国当局の検閲導入について否定している。「プラットフォームをユーザーにとって楽しく、本物で、安全な場所を作ることに力を入れている」と回答しているという。

しかし、中国共産党の広報誌や大紀元が入手した情報では、TikTokを運営する字節跳動やウィーチャットの騰訊にも、共産党の支部が存在することが明らかになっている。中国企業に設置されている共産党委員会は、「党の定款」等に基づき社員を教育監督している。さらに、共産党の路線や政策の宣伝活動を行う。党の要求は中国の法律で定められてはいないが、企業は党に従わなければ企業の発展は難しくなる。

2019年9月25日、オーストラリアの外国勢力の干渉に関する委員会では、TikTokおよびウィーチャットの活動について調査報告されている。それによれば、「字節跳動も騰訊も共産党の影響下にある。企業内の中国共産党委員会を通じて、サイバーセキュリティ法を施行している」

中国の法律によれば、企業は中国共産党当局にあらゆるデータを提供する義務がある。さらに、TikTokなどのソーシャルサイトは、共産党のプロパガンダを発信しなければならない。

「両社は中国共産党の政治的目標と企業の商業的目標を並列させている」「字節跳動CEOである張一鳴氏は、自社の製品が中国共産党のプロパガンダ計画の促進に役立つことを保証すると公式に述べている」とオーストラリアの委員会では報告されている。

ASPIの報告書によると、中国政府は長い間、TikTokおよびウィーチャットなど党紀に従う企業によって作られたアプリを通じて、世界の情報の流れを操作しようとしてきたと指摘する。

「TikTokの高度なAIアルゴリズムにより、中国語ではないプラットフォーム上でも世論を形成できる立場になった」と結論づけている。

ASPIは、こうした中国共産党によるグローバル規模の情報操作への対応について、どのように対処すれば良いかを提言した。各国は自国内で使用されるアプリならば、どこの国が開発したものであっても、信頼できる第三者組織から確認できるユーザーデータ保護システムの枠組みをつくり、その基準に従わなければ、アプリの活動を禁止させるべきだとした。

(翻訳編集・佐渡道世)

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