スウェーデンMSABが香港を撤退表明 同社情報機器、警察が黄之鋒氏の調査にも使用
スウェーデンのテクノロジー企業MSABは、米国が香港に与えていた特別待遇の地位を取り消したことを受け、香港から事業を撤退したと発表した。携帯端末調査機器を開発する同社は、香港の法執行機関や香港政府にデータ抽出技術を提供していた。民主活動家・黄之鋒(ジョシュア・ウォン)氏の携帯電話の調査にも同社機器は使用されていた。
ストックホルムに拠点を置くMSABのマイク・ディキンソン(Mike Dickinson)次長は9月23日、香港撤退について「ホワイトハウスが7月14日に発令した『香港に対する優遇措置の廃止令』を受けて決定した」という。ブルームバーグが報じた。
中国は香港国家安全維持法(香港国安法)を成立させ、50年間維持するとした香港の自治と自由の約束を反故にした。トランプ米大統領は7月14日、香港に対する優遇措置を廃止する大統領令に署名した。この執行令の発令で、香港との貿易は今後、中国大陸と同様に扱われる。特別な経済待遇は失われ、軍事転用可能な技術の輸出も行われなくなる。
ディキンソン氏はメールの中で、MSABは今後、香港警察サイバーセキュリティおよび技術犯罪局や、香港の他の政府機関へ「解決策を提供する」ことはもうないと表明した。またトランプ米大統領の執行命令は、MSAB米国法人や事業に影響を与えているとも付け加えた。
「MSABは輸出管理法に関連する『規制体制と制限』の変更により、2020年初頭に業務を中国から撤退した。現在は香港と中国本土ですべての事業を停止する戦略的な決断を下した」と述べた。
MSABのウェブサイトによると、同社は2013年に中国オフィスを新設。その「データ抽出」サービスは中国政府から「大量注文」を受けていた。
また、今年初めに香港警察から黄之鋒氏に提出された報告書で、昨年10月に黄氏が逮捕された際、香港当局はMSABの技術を使用して同氏の携帯電話の内容を検査していたことがわかった。
ブルームバーグによると、7月にリークされた提案書には、中国当局が香港国安法を執行することで、MSABは「香港政府からより多くの注文が期待できる」と示唆されていたという。
中国当局が香港国安法を施行することで、個人の言動や表現の自由が狭められ、香港の民主抗議デモの弾圧が加速している。民主主義を推進する活動家の逮捕者が続出して、すでに同法違反で20人以上が逮捕されている。
9月24日朝、黄之鋒氏が逮捕された。本人のツイッターアカウントや香港メディアが報じている。香港国安法違反の疑いで、民主派の大物で香港紙・蘋果日報創業者の黎智英氏や、民主活動家の周庭氏も逮捕された。それぞれ保釈されているが、今後、起訴される可能性がある。
米政府は、「自由と民主的プロセスを抑圧する中国中央政府の政策導入という点で直接の責任がある」とし、香港政府の最高責任者である林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官を含む、中国の高官ら11人に制裁を科している。
(大紀元日本語ウェブ)