中国駐在記者も務めた米大統領副補佐官マシュー・ポッティンジャー氏は、中国共産党統一戦線の影響について語った(GettyImages)

中共の統一戦線工作の影響、軽視しないで=米大統領副補佐官が警告

米国のマシュー・ポッティンジャー大統領副補佐官は、民主主義国家は中国共産党の行動を警戒し、ニセ情報の流布や西欧の民主制度への侵害を防がなければならないと主張した。ポッティンジャー氏は、中国共産党の統一戦線工作は、世界各地で静かに展開されており、人知れずに西洋思想と民主主義制度を変えていると強調した。

ポッティンジャー氏は10月23日、英国の有名シンクタンク「ポリシー・エクスチェンジ(Policy Exchange)」のイベントにオンラインで参加し、流暢な中国語で講演した。同氏は、情報ネットワークの時代で、民主主義国家は独裁国家から挑戦を受けており、国家の経済力だけが、この戦いの勝敗を分ける唯一の要因ではない、と述べた。

ポッティンジャー氏はかつて、米報道機関の特派員として中国に駐在していた。同氏は、独裁政権は巨大な資源を支配、動員できるため、虚偽の情報を拡散させる能力、西方の世論と認知に影響する能力は軽視できないと語った。

同氏は、1946〜49年に中華民国・国民政府率いる国民政府軍と中国共産党率いる紅軍との間で行われた内戦の歴史を振り返ったとき、紅軍は軍事力以外に、統一戦線の工作が効果的だったと述べた。

中国共産党は思想の浸透と情報操作によって、国民党のエリートを取り込み、国民党の権力基盤を破壊し、政権を奪取した。ポッティンジャー氏は、中国共産党は国民党に対抗するために編み出した一連の統一戦線の手段を西側に使っている。西側市民の情報を広く収集し、各国のエリートを蝕み、社会に影響を与えていると語った。

ポッティンジャー氏は、中国共産党が全世界で実施する統一戦線工作に莫大な資源が投入されており、その人員は、米国務院の人員数の4倍を超えると述べた。

同氏はマサチューセッツ大学を卒業後、中国研究を専攻した。卒業後はロイター通信やウォール・ストリート・ジャーナル紙などで中国駐在記者を務め、中国に10年近く滞在。その後、海兵隊に転身しアフガニスタンやイラクに派遣され、国家安全保障の経験を積んだ。

2017年、ポッティンジャー氏は米国家安全保障会議(NSC)に加わり、国家安全保障戦略文書の起草に参加。中国を米国の戦略的競争相手と明確に位置づけるなど、米国政府の対中政策の変化に重要な役割を果たした。2019年9月、大統領副補佐官に就任した。

2020年5月4日、同氏は中国五四運動101周年に際し、ホワイトハウスからバージニア大学ミラーセンターでの米中関係についてのオンラインセミナーに参加した。その際、「米国の視点から見た中国の五四精神」と題する講演を中国語で行った。米国史上初のホワイトハウス高官による中国語での演説は、中国語圏、特に中国の人々に大きな反響を呼び、動画は100万回以上視聴された。

ポッティンジャー氏は、中国語で演説する理由について、言語上の溝を埋め、世界中の中国の友人に呼びかけるためだ、と述べた。

(翻訳編集・佐渡道世)

関連記事
「孔子学院?新華社?こんなものはもう退屈だろう。中国が本当に世界的なソフトパワー拡大には、モバイルゲームに焦点を当てるべきだ」中国国内メディアは最近、100億米ドル規模に達している中国ゲームの影響力の高まりに自信を見せている。当局は、ゲームコンテンツを通じて中国文化の浸透工作や、親共産主義人物の人気獲得を促進したりしている。
日本料理の「五味五色」が生む健康の秘密。陰陽五行に基づく養生観が、日本人の長寿とバランスの取れた食文化を支えています。
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。