写真は2020年10月、天安門広場で朝鮮戦争の式典に参加する軍人(Kevin Frayer/Getty Images)

日本の防衛研究所レポート 中国軍「徐々に先制攻撃を重視するようになる」

日本の防衛省傘下のシンクタンク防衛研究所は最新のレポートで、中国軍が民間企業が開発した人工知能の技術を、サイバー空間や宇宙における攻撃力の強化に利用しようとしていると分析した。

​同研究所が11月13日に発表した「中国安全保障」年次レポートによると、北京は先進技術を利用して中国軍を世界レベルの戦闘力に改造して、米国の総体的な軍事力に追いつこうとしている。このため、中国人民解放軍は、「サイバー空間や宇宙分野で米軍の役割を阻止するために、妨害能力や打撃能力を増強する」とみているという。

習近平・中国共産党総書記は2017年10月に開催された第19回中国共産党大会で、今世紀半ばまでに人民解放軍を「世界一流の軍隊」にするという長期的な目標を掲げた。同研究所はこれについて、中国は米国と同レベルの軍事大国を目指していると分析している。

報告によると、中国共産党は従来の陸海空に加え、情報空間を勝敗を分ける空間としてみており、これを支配する「制情報権」を勝ち取ろうとしている。人民解放軍は、制情報権のために先進技術を取り入れ、「科技強軍(科学技術による軍の強化)」を方針の一つとしている。

2019年7月に公表された中国国防白書は「科学技術革命と産業革命の推進のもと、人工知能(AI)、量子情報、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)など先端科学技術の軍事分野における応用を加速する」と書いている。

日本の防衛研究所の報告は、中国軍は民間の先端技術を取り込む「軍民融合」政策などを通じた軍事革命で、米軍を「曲がり角で追い越す(彎道超車)」ことが可能になるかもしれない、と考えていると分析する 。

こうした防衛研究所の指摘は、最近の人民解放軍および中央軍事委員会の動きからも確認できる。

​​11月8日、中国国営メディア・光明網は、中国軍事科学院軍政治工作革新発展研究センターの呉志忠研究員の記事で「中国共産党の19期五中全会では、国防と軍隊建設の面で、機械化・情報化・知能化の融合発展を強調する」と書いている。

10月下旬に開かれた共産党の第19期中央委員会第5回総会(5中総会)は、2027年の人民解放軍創設100年に合わせた「実現する奮闘目標」を公表した。許其亮・中央軍事委員会副主席は5中総会に関する分析記事で、「受動的な戦争適応から能動的な戦争立案への(態勢)転換を加速する」として、積極的な戦争関与を示唆した。

中国は毛沢東時代から「積極防御」の軍事戦略を採用してきたが、習近平政権は「戦える、勝てる」の実戦的能力を追求している。日本の防衛研究所は、中国軍は「徐々に先制攻撃を重視するようになる」と指摘している。

中国国営新華社通信は11月13日、人民解放軍の最高司令組織・中央軍事委員会が、陸海空軍などによる統合作戦の概要を定めた、実践的に最高レベルとなる法規を軍内で配布したと報じた。同月7日に施行されたこの法規は、「将来の戦争や戦争準備」に対応するものだという。

(編集・佐渡道世)

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