【紀元曙光】2020年12月31日

読者の皆様へ。

▼お陰さまで『紀元曙光』。なんとか1年を過ごすことができました。650文字という細やかな文章ですが、これは筆者から皆様への「手紙」なのです。Eメールではなく、便箋にペンでつづり、切手を貼って投函する、あの手紙です。今年、366通の手紙を、大切な読者の皆様にお送りしたつもりですが、お喜びいただけましたでしょうか。

▼新(あらた)しき年の始(はじめ)の初春の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)。

▼大伴家持(おおとものやかもち)の作。『万葉集』4516首の最後にある、まさに大歌集の締めくくりの歌です。これを「一年」に喩えれば大晦日から元旦への、年越しの歌ということになるでしょうか。それにしても『万葉集』の選者の一人でもある家持が、なぜこの一首を最後にすえたのか、気になるところです。

▼新しい年を、今まさに迎えようとする現代の私たちですが、天気予報を見ると、大寒波の到来による大雪警報や注意報が各地に発令中。地方によっては、激しい雪の降る大変な年越しになっているかもしれません。先日も大雪で関越道がストップして「立往生」だったように、流通に関わるお仕事の人や、雪国にお住まいの方々のご苦労はいかばかりかと推察します。

▼家持の歌は、そんな困りものの雪を「初春を迎える今日、この降り積もる雪のように、吉事がますます重なる一年になってほしい」と、見事な逆転の発想にしているのです。今年は、辛いことが本当に多くありました。来年は「いや重け吉事」。皆様に良いことが重なりますよう祈念いたします。

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