米連邦検事、議事堂侵入で「議員の誘拐や殺害計画の直接証拠はない」

米連邦議会の専属管轄下にあるコロンビア特別区の連邦検事代行マイケル・シャーウィン(Michael Sherwin)氏は15日、記者団に対して、連邦議会議事堂への侵入騒動で、暴徒が議員の誘拐や殺害を計画していたことを示唆する直接証拠はないと述べた。

シャーウィン氏は、地元当局が各地区の容疑者の特定に協力しているため、得られた証拠は齟齬(そご)の可能性もあると付け加えた。

このうえで、シャーウィン氏は、検察官たちが「議員の誘拐や殺害があったとの直接証拠を持ち合わせていない」と再度強調した。

シャーウィン氏は記者会見で、トランプ大統領の支持者による議会乱入に関連して、98人の刑事訴追を行い、275人以上の調査を開始したと述べた。

米アリゾナ州の地区の連邦検察官は、議事堂に侵入した暴徒が「議員を捕らえ暗殺することを集団としての目的にしていたとの証拠がある」と主張する法廷提出書類を発表した。同検察官は、同州出身で陰謀論を信じるジェイコブ・チャンズリー(Jacob Chansey)氏を勾留するよう要請している。

同検察官は以前、角をつけて上半身は着衣がなかったチャンジズリー氏は上院の会議室に立ち入り「時間の問題だ、正義は来る」とのメモを残した。検察官はさらに、「チャンズリー氏の行動は議事堂での暴徒化と議員を捕らえ殺害する内容を支持するもの」と定義した。

ドナルド・トランプ大統領を強く批判することで知られるベン・サッセ上院議員はこの主張を拡散した。

連邦検事シャーウィン氏は記者会見で「事件のすべてはワシントンで、法執行機関の協力で起訴に至っている。しかし、事件を前例なく異常で複雑なものにしているのは、事件の後、明らかに何千人もの人々が各自の地元に戻ったという事実だ。このことが事態を複雑にしている」と述べた。

「私たちは他の地区と協力して彼ら(容疑者)を見つける。各地当局に出頭してもらう」とシャーウィン氏は続けた。「専門の検察官により、テロ対策捜査官と協力して、関係組織の最も非道な行為を調査している」とした。

FBIのスティーブン・ダントーノ(Steven D’Antuono)調査官は1月15日の記者会見で、侵入に関与した容疑者は自首するよう呼びかけた。「暴力事件に加担した人々へ、知っておいて欲しいことがある。全国のFBI支局があなたたちを探している」「実際、あなたの友人や家族でさえ、私たちに情報を提供している」

BLM活動家も議事堂侵入に加わる

 

昨年、米国全土に広がった黒人権利運動ブラック・ライブス・マター(BLM)と、その混乱に乗じて極左メンバーの暴力や略奪、不法占拠などが起こった。自称反トランプの黒人過激派活動家ジョン・サリバン(John Sullivan)氏はBLMに参加し、暴動関与の容疑で逮捕、起訴された。

サリバン氏は、2018年オリンピック出場のスピードスケート選手でCM起用されたこともある。サリバン氏は、自分は極左アンティファではないが、BLMを支持していると逮捕当時、メディアのインタビューで説明している。

サリバン氏はガスマスクと防弾チョッキを着用し、2021年1月6日の議事堂侵入騒動に加わり、施設内で動画を撮影し、占拠を促す文言を叫び続けた。13日に、暴力や無秩序な行為で逮捕された。15日のワシントン地方裁判所で、数日後に釈放されることが決定した。

いっぽう、サリバン氏の兄ジェームズ・サリバン氏は、自身のインターネット・ラジオで、弟は「過激な社会主義イデオロギーによって教化された」と語った。

「弟が正直になって更生するための唯一の方法は刑務所に行くことだ。彼は止まらない。誰にも耳を貸さない」と述べ、「とても教化されていて、論理を欠いている」と付け加えた。いっぽう、ジェームズ氏は15日のFacebookの投稿で、「世界大会でスピードスケート選手として自分の国の代表を夢見ていた愛国的なアスリートだった」と弟について説明している。

米陸軍は15日、就任式が行われる20日までの間、最大2万5000人の州兵をワシントン中心部に配置した。2度目の増員でさらに5000人が追加された。ダニエル・ホカンソン陸軍最高司令官は声明の中で、「私たちの国家警備隊と空軍隊員は、国家と首都を守るために都市周辺に配置されている」と述べた。

首都ワシントンは6日の議事堂侵入事件を受け、大統領就任式まで過去よりも強い厳戒態勢が敷かれる。鉄道やバスの路線運行が制限され、道路も一部封鎖される。市内のランドマーク閉鎖や車両検問所の設置なども行われる。

トランプ大統領は14日、即日声明を発表。「更なるデモがあるとの報道を受けて、私は暴力なし、違法行為なし、破壊行動なしを促す。私はすべての米国人に、緊張を和らげ、気を鎮めるよう呼びかける」と声明を発表した。

(翻訳編集・佐渡道世)

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