2020年12月10日 ブリュッセルEU本社ヨーロッパビルの前に立つポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相 (John Thys/ Pool/AFP via Getty Images)

<オピニオン>ビッグテックの検閲を禁止するポーランドを見習え

アメリカがポーランドやハンガリーより遥かに遅れているなんて、誰が想像できただろうか。この両国は明らかにソ連の圧政から教訓を学んだのだ。

ポーランド政府は、イデオロギーを理由として投稿を削除する巨大IT企業に1350万ドル(約14億2450万円)の罰金を科す法律を検討している。ポーランドのマテウシュ・モラヴィエツキ首相(Mateusz Morawiecki)は皮肉を込めて、フェイスブックに次のようなコメントを投稿した。

「…言論の自由検閲は、かつて全体主義的で権威主義的な政権の領域だったが、今では企業が異見者を黙らせるという新たな形で復活している」

モラヴィエツキ首相はアメリカの政治家よりも気骨がある。我々のリーダーと言えば、メガ・ドナー(超大口献金者)でもある巨大IT企業に買収され、無意味な公聴会を開くことしかできない。アメリカの制度は腐敗しているのだ。

我々が直面している「キャンセル文化」は民主主義を脅かす。我々は「制度的な人種差別」とか「批判的人種理論」といったゴミのような主張に対して否認する事も許されず、丁寧に耳を傾けることを強要される。そうしなければソーシャルメディアに「キャンセル」され、最悪の場合は仕事を失うからである。一方、なぜ反対側の人たちは、憲法の権利章典に基づく我々の伝統的で「古臭い」価値観に耳を貸さなくても許されるのだろうか。毛沢東は 「百花斉放・百家争鳴」(多彩な文化を開花させ、多様な意見を論争させること)を提案したではないか。もちろん毛は嘘をついたが、我々はそうであってはならない。

「キャンセル文化」の根源は絶望的な恐怖である。もし相手の考えを恐れていなければ、必死になって相手をキャンセルしないだろう。

巨大IT企業の創業者は往々にして天才的な技術力と経済知識を持っているが、政治哲学については分かっていない。彼らは学校で公民を学ばなかったか、あるいはそれをざっくりとしか教わらなかった世代である。

パーラーのような代替のプラットフォームを立ち上げても、問題の根本的な解決にはならない。開放性を目指すパーラーには敬意を表するが、彼らは市場を独占する大企業と競争し、全体主義的な相手と対峙することになる。これは、既に分断された我々の社会をさらに分断するだろう。誰もが自分の味方に対して自説を唱えるだけで終わってしまう。ベンジャミン・フランクリンは、「共和国…あなたがそれを保つことができれば」と警告した。これが21世紀の共和国のあり方なのだろうか。

ポーランド人は、より良いアプローチを取っている。彼らが検討している罰金はソーシャルメディアを公共の場にし、幼稚な20代の若者が不適切だと思う(あるいはそう教え込まれた)意見が検閲されることを防ぐだろう。

私は概ねリバタリアン(自由主義者)だが、このイデオロギーはさておき(すべてのイデオロギーには限界がある)、巨大IT企業は公共事業にすればいいと思っている。

アメリカの政治家が子供じみた芝居をやめて、寄付金を貰うことを断念し、今のポーランドを見習うことを強く希望する。

(文・ロジャー・サイモン/翻訳編集・郭丹丹)


執筆者:ロジャー・サイモン(Roger L. Simon)

アメリカの小説家・オスカー賞受賞脚本家。ニュースサイト「PJメディア」の共同創設者。

※寄稿文は執筆者の見解を示すものです。

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