中国で「軍民融合」「戦狼外交」を批判の声

中国共産党政権内部ではこのほど、習近平国家主席が提唱する軍民融合戦略や外交官による「戦狼外交」を批判する声が出ている。

軍民融合

中国紙・南華早報によれば、上海市政府発展研究センターがこのほど報告書を公開し、軍民融合戦略は創造性を阻害すると指摘し、国家主導は効率を悪くし、中国の民間航空産業が国際競争相手に後れをとっていると訴えた。

中国の国有航空機製造会社、中国商用飛機有限責任公司(COMAC)は上海市に本社を構えている。当局は、商用旅客機製造を、2021~25年の中期政策大綱である第14次5カ年計画の重要投資産業と位置付けた。当局は、COMACが研究開発した大型旅客機(C919)を通して、国際旅客機市場における米ボーイングと欧州エアバスの複占現状を崩そうとしている。

同報告書は、中国の航空機製造業は、欧米と比較すると、管理と技術の面で「落差」があるとの見方を示した。「コア技術とシステム的な研究・開発能力の不十分で」、中国の航空機製造業は「ローエンドの航空機部品しか作れず」、「短期間で、エンジンや航空機設備、新複合材などの主要技術は国際的なハイレベルに達することが難しく、結果的にローエンドの産業チェーンから抜け出せずにいる。さらに、耐空性検査能力もまだ弱く、短期的には国際的に十分に認められない」とした。

また、報告書は、中国の軍民融合戦略の効果的な運用に疑問を呈した。システム的な統合が行われていないため、中国軍側が技術を民間に転用するための取り組みと、民間企業の軍関連プロジェクトへの参加がいずれも妨げられ、効果的な共同技術革新がみられていないという。特に、産業や関連機関に対する国の支配・主導によって、共同研究開発が阻まれ、リスク分散と利益分配などのメカニズムが不十分となっている。

習近平政権は2015年の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)開催期間中、軍事力強化と国家経済発展を同時に目指す「軍民融合」を「国家成長戦略」にするとはっきり述べた。17年1月、中国共産党中央政治局は、「党中央軍民融合発展委員会」を設置し、習近平氏が委員会のトップを務めると決めた。

当局が今年の全人代で発表した第14次5カ年計画が言及した軍民融合の内容は、第13次5カ年計画と比べて大幅に増えた。

戦狼外交

一方、在仏中国人学者で、復旦大学中国研究院の宋魯鄭・研究員は11日、中国メディア「観察者網」で、戦狼外交について評論記事を発表した。

宋氏は、中国当局の戦狼外交は、抗議・懸念を伝えるための賢明な方法ではないと批判した。国際社会に対して、外交官ではなく、メディアあるいは学者が「戦狼」という役を担うべきだとの見方を示した。

同記事は、「中国の国力が高まるにつれ、国益を守る能力も強くなっている。欧米の攻撃に直面して、中国はより直接的で率直な反論している」とした。中国側の好戦的な外交姿勢に対して、欧米メディアなどが「戦狼外交」と表現したことは「中国を封じ込める戦略の一環に過ぎない。中国はその落とし穴に陥ってはならない」と示した。

宋氏は、中国当局に向けて、「欧米側は、中国外交部門の声に極めて殺傷力があり、それを受け止められないと感じれば、彼らは徹底的にその声を封じ込めるのである」と警告した。

「われわれは、中国のメディアと学者が(欧米諸国への反論を)担当できないという課題を一日も早く解決すべきだ。中国の外交官が常に第一線で、西側メディアや学者と争っている状況を変えよう」と提案した。

「何より、中国のメディアや学者が言い間違っても、あるいは過激な発言しても、他国の政府は大きく驚くことはないし、衝突も国レベルまで深刻にならないだろう」

3月、国際社会は中国外交官らによる「戦狼外交」に再び注目した。同月19日、中国の外交トップである楊潔篪・共産党中央政治局委員が、米アラスカでブリンケン米国務長官らと会談した際、外交儀礼に反して、冒頭から約15分間にわたって米側を非難し続けた。

欧州でも、中国の戦狼外交が目立った。3月下旬、中国当局の台湾政策を批判した仏学者について、中国の駐フランス大使館がツイッター上で「ごろつき」と罵倒した。フランス外務省は、中国大使を呼び出して抗議した。また、スウェーデンでは、中国当局による新疆ウイグル自治区での人権侵害を報道した同国の記者に対して、中国大使館が脅迫したことが明らかになった。同国の野党は、中国大使の国外追放を求めている。

一方、ロイター通信が昨年3月に行った報道では、習近平国家主席が過去、外交官に対して「戦う精神を持つよう」指示したことで、外交官らは威圧的な態度を取り始めた。

ソーシャルメディアでは現在、中国の外交官や外交使節団が作ったアカウントは60個以上ある。中国当局はこれらのアカウントを通して、国際社会の中国共産党に反対する言論に反撃している。昨年2月に中国外務省報道局副局長に就任した趙立堅氏は、高圧的で過激な発言で「戦狼外交官」の代表格となった。

豪シドニー工科大学の馮崇義教授(中国問題)は17日、米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に対し、戦狼外交は中国国内の民族主義者へのパフォーマンスであると分析。

「習近平氏は独裁体制を強めている。独裁体制を維持していくために、彼は国内の民族主義者に頼らなければならない。少なくとも、彼は表面的に国際社会に強硬姿勢を示さないといけない。だから、これ(戦狼外交)は国内政治にとって必要である」

(翻訳編集・張哲)

 

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