チベットの光 (49) 望郷の念
ミラレパがとぼとぼと歩いていると、突如として見慣れたような、しかし完全には記憶にはないような所に辿りついた。彼が目を凝らして見ると、それはシャアツェ地方の実家であった。それは四つの柱と八つの梁でできていたが、すでに記憶は確かではなく、その前に立ってみると、それは無残にもボロボロになって見る影もない。子孫代々に伝わった大事な仏法のお経も水にぬれて破れ、三角形の畑も野草でぼうぼうとなっていた。
家には一人もいなかった。母は既になく、妹も糊口を求めて他の土地に移り、乞食となっていた。ミラレパはこの閑散とした状況を目にし、幼少のころから遭遇した事が、その刹那忽然と脳裏に蘇ってきた。彼は、年少の頃に母親と妹と別れ、長年会うこともなく、もう永別したのだ。彼は、再び母親に会うことができないことを思うと、心の中に無限の悲痛が沸き起こり、忍びきれずに大声で泣きだした。「母よ!妹よ!」
こうして叫んだ時、忽然として目が覚めた。彼は元々洞窟の中で修行していたのだ。彼が籠りはじめた頃、寝ることもなく打座していたが、今朝の黎明時には思いもかけず寝入ってしまい、夢の中で故郷に帰っていたのであった。彼が夢から醒めると、衣服には涙で大きな沁みができていた。彼は母を偲ぶとき、涙がとめどもなく流れ出てきた。
関連記事
たった2週間で体重が最大5kg減、ウエストも約3cm細くなった人も。砂糖と精製でんぷんを抜き、週3日運動するだけの「322シュガーフリー・ボディリセット」と4分間ワークアウトを紹介します
西暦705年創業、世界最古の旅館・慶雲館。建物や時代が変わろうとも、変わらぬ「もてなしの心」を守り抜く姿から、日本の老舗企業が幾世代にもわたり受け継いできた事業承継の魂と「不易流行」の本質を紐解く
心臓病対策というと、コレステロールや薬を思い浮かべる人は多いでしょう。しかし近年の研究では、運動と睡眠が骨髄の炎症性細胞や動脈プラークに働きかける可能性が示されています。費用のかからない日々の習慣が、心臓を守る力になるかもしれません
誰に教わることもなく精巧な巣を編み上げる鳥たち。スズメ大の鳥が築く百年続く巨大な「命の都」を手がかりに、単なる「本能」という言葉では片付けられない生命の驚異と、万物が織りなす壮大な調和の神秘に迫る
「炭水化物は炎症を引き起こす」は思い込みかもしれません。サツマイモ、豆類、そば、キヌア。正しく選べば、炭水化物は炎症を抑える強い味方になります。栄養士が教える食べ方と簡単レシピも紹介します