北極圏のコテリヌイ島に所在するロシア基地で軍用トラックの横に立つロシア軍兵士等(AFP/GETTY IMAGES)

北極圏に対する中国の野心とロシアが求める長期的利益の食い違い

中国共産党が3月に発表した最新の5か年計画(国民経済・社会発展第14次5か年計画)には北極と南極に関する政策が盛り込まれた。2018年に中国共産党は初めて自国を「北極近隣国」として主張し、その前年の2017年には一帯一路(OBOR)政策の一環として北極・南極の開発に積極的に関与する方針を打ち出していたが、同5か年計画で中華人民共和国(中国)のこうした野心が再度強調されることとなった。

専門家等の説明によると、中国共産党はその目標を達成するために北極圏での軍事展開の拡大を継続するロシアに取り入り、中国の庇護者および政治的な推進要素として同国をうまく利用している。 2020年3月にオンライン雑誌のザ・ディプロマット(The Diplomat)誌に掲載されたリン・クォ(Ling Guo)アナリストとスティーブン・ロイド・ウィルソン(Steven Lloyd Wilson)博士共著の記事には、「今のところ北極圏における中露の協力関係は双方にとって実用的であり相互に有益な取引となる。つまり、NSR[北極海航路]を開発できる地理的近接性と専門知識を備えたロシアとこの取り組みを支援する経済的手段を有する中国との単なる結合である」と記されている。

しかし、両著者と他者の見解を合わせて考えると、北極圏の資源についてはロシアが競合する計画を掲げていることで最終的には中国共産党の攻撃的な姿勢がロシアの思惑と衝突することになりそうである。 2020年7月、オーストラリアのディーキン大学の教授を務めるエリザベス・ブキャナン(Elizabeth Buchanan)博士はフォーリン・ポリシー(Foreign Policy)誌の記事で、「ロシア政府が外資を必要としていることで中国政府は北極圏で権力の座に就くことができるが、ロシアは中国の投資に警戒を抱いている。ロシア政府は中国政府と取引することでもたらされる可能性と落とし穴の両方に慣れている。北極圏におけるロシアの経済安保計画を遂行するために同国が中国に過度に依存すると、地理的な中国の影響力が拡大する可能性がある」と述べている。

▶ 続きを読む
関連記事
戦争や物価高が続いても、世界の旅行熱は衰えない。2026年の旅行支出は過去最高の7.8兆ドルに達する見通しだ。物よりも思い出や体験を重視する消費者が増え、高級旅行の需要も伸びている
香港の民主活動家・黄之鋒氏に新たに懲役10年の判決。釈放は2036年にずれ込む見通しだ。評論家らは今回の判決を厳しく批判し、中共による民主派弾圧を非難
欧州議会議員14人が、中国BYD車の安全保障リスクを問題視し、EUに調査と公共調達からの排除を要求
フランスの血液保管施設がサイバー攻撃を受け、冷凍庫の設定温度が最高110度に改ざんされた疑いが浮上。血液製剤に被害はなかった。欧州各国でも冷蔵・冷凍設備へのハッキング被害が報告されている
英国議会の委員会が、中国製コネクテッドカーやIoT機器の安全保障リスクを警告。中共による情報収集や遠隔操作を懸念し、重要インフラへの導入制限を提言した。英国の大学と中共軍関連機関の共同研究にも警鐘