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≪医山夜話≫(37)

向こう側の生命

マルクは私の良い友達です。私が困難に遭った時、彼はよく助けの手を差し伸べてくれました。

ある日、彼の余命が短いということを知らされました。彼は脳の末期ガンで、命はあと一週間ほどだといいます。生命維持装置は全部外され、生命の「明かり」が自然に消えるのを待っている状態でした。友人たちは彼の最期を見守るために病院に駆けつけ、親族は涙を流して彼に別れを告げました。

しかし、一週間経ちましたが、彼はまだ呼吸しています。

彼はあの世に行って、また戻ってきたようです。数日間、何の食事も水分も取っていなかった体をどうやって維持できたのか、看護師は不思議に思っているようでした。

当時、私は忙しくて見舞いに行けず、毎日電話で彼の状況を尋ねることしかできませんでした。彼の家族に頼んで受話器を彼の耳もとに置いてもらい、彼にいろいろな話をしました……。看病していた奥さんによれば、彼は話すこともせず、ただ一心不乱に耳を傾けていたとのことです。

「彼は24時間以内にこの世を去るでしょう」と看護師は宣言しました。

ちょうどその日、私はやっと休みが取れたので、直ちに空港へ駆けつけました。

夜にS市に着き、空港から彼の所へ直行しました。病室で私の目に映ったのは、痩せこけて変形した彼の顔でした。知覚を失っていると思われたにもかかわらず、彼は私の声を聞くと、「あ、やっと来たんだね」と言いました。皆、とても驚きました。

彼の妻は悲鳴を上げて、思わず口を抑えて言いました。「あぁ、神様! 彼の意識がはっきりしています。彼はずっと、あなたを待っていたのですね」

私は彼女に、手振りで落ち着いてくださいと合図しました。

「マルク、準備はできたの?」私は彼に聞きました。

「うん」

「今日まで、命を維持してきた原動力は一体何だったの?」

しばらく沈黙して、彼は感動的なことを話してくれました。

「実は、僕はあの世に行っていたのです。生命が終わった後、みんなの行く先は異なります。僕は、まず夜がなく、永遠に昼が続く場所に行きました。空気の中に、微かな優しいメロディーが聞こえました。そこにいる人は少なく、みんな互いに会話も交わさず、ちょっと顔を合わせるだけで、またどこかに行ってしまいます。そこには美しい花がありますが、地球上の花と違って、枯れることがありません。そこの生命は永久不変なのです。『ここは私のいるべき場所でない。僕は偶然に道に迷ってここに来たけど、本来、僕はここに留まるべきでない』と僕は内心で分かりました。ためらっていると、『あなたの行くべき場所はここではない』という声を耳にしました。自分の徳行が足りないため、ここに残ることができないと分かり、僕はひざまずいて、『天上の神様、私はすでに人間の世界から出てしまいました。今行く場所が分からないのですが、どうか導いて下さい』と祈りました。そこは時間がなくて、すべては静止して動かないのです。すべては創造主の手に把握されて祈りを聞いている、と僕は分かりました」

ここまで聞いて、私の手のひらに汗が出ました。目の前の掛け時計の振り子は左右に揺れ動き、私が物質的空間にいることを教えてくれます。さもなければ、私はどこに身を置いているのか分からなくなります。

「それからどうなったの?」私は聞きました。

「晦冥(かいめい)の中、僕は話し始めました。『今日、生命が終点まで来て、人間世界のすべてはもうすぐ終わります。重苦しくてずっとプレッシャーを抱えていた心がやっと解脱でき、過去に非常に大切だと思っていた事は、もう重要ではなくなります。時間に束縛されることもなくなり、真実とうその間で良心に責められることもなくなって、とうとう本音を言う一刻がやってきました。私のこの一生は、とても苦しかった。朝起きて、服を着たら別人になって、口を開いて言うことは自分さえ聞くに耐えられないほど、うそばかりです。顔を洗ってひげを剃る時に見たのは一枚の仮面で、夜に家に帰った後、私はまるで化粧を落とした道化者でした。私の体に多くの紐が縛られ、誰かが紐を引いたら、私はすぐどこかに引っ張られてしまいます。苦しい、自分の人生を決められなかった私! 生命の終点に来た今、私の人生は自分自身に支配されるものだとやっと分かりました。私は本心に背かず、自分が納得できないことはしなければ良かったのに……』」

「今日、心の底にある話を君だけに教えよう。君は、私に法輪大法の教えをあれほど薦めてくれたのに。あなたの信仰を尊重しながらも、それが本当に存在すると僕は信じられなかった。その世界に行ってから、あなたが今の生き方を選んだ理由がやっと分かりました。くれぐれも、忘れないでください。もし、ある日、一匹の美しい蝶があなたの頭の上に飛んできたら、それは私です…」

数時間後、彼は他界しました。

彼を見送ってから、私は長時間、沈黙していました。

 

(翻訳編集・陳櫻華)

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