中国のクロスカントリーで21人死亡 6人の命を救った羊飼いの男性
中国・甘粛省白銀市で22日に開催された山間部の100kmのコースを走るマラソン大会の競技中に天候が急変し、参加者21人が死亡した。主催者である地元政府の責任を問う声が上がる中、多くの遭難したランナーの命を救った羊飼いがいた。
中国メディアによると、大会は晴天に恵まれた22日朝に始まったが、同日午後から天候が急激に悪化し、冷たい雨、ひょうや強風が参加者を襲ったという。
気温の急降下と共に、低体温症などの不調を訴えるランナーが出始め、参加者の一部と連絡が取れなくなったため大会は中止された。同コースに参加した172人のうち、21人が死亡、8人が軽傷を負った。
多くの参加者は短パンやTシャツ姿の軽装だった。現地の気温は0度まで下がったため、いずれも死因は低体温症とみられる。
「雨と逆風を受け、指の感覚がなくなり、舌も冷たくなった」とある参加者はこう振り返った。
張小濤選手は大会の上位6人のランナーの中で唯一生き残った選手だった。張さんは低体温症で倒れ、山の中で2時間半も意識不明の状態に陥ったが、ある羊飼いの男性によって助けられたという。
張さんは中国SNSのウェイボー(微博)で、その一部始終を語った。
「大会がスタートした同日9時の時点で、すでに風が強く、帽子が風に飛ばされる人が続出していた。そして、午後になると天候が急激に悪化し、冷たい雨、ひょうや強風に襲われ、視野がぼやけ始め、道をはっきりと見ることができなかった。それでも走り続けたが、風が強すぎて10回以上転び続けた。ついには手足まで硬くなり、徐々に体のコントロールが効かなくなるのを感じ、最後に転んだ時にはもう起き上がれなかった。薄れていく意識の中で、保温毛布を羽織り、GPSのSOSボタンを押した後、気絶した」
「山の上で2時間半ほど意識を失っていたが、通りかかった羊飼いの男性が自分を窯洞(ヤオトン、中国甘粛省などの農村部に見られる洞穴式住居)に運び込み、火を起こして体を温めてくれた。それから1時間後に意識を取り戻した。 当時、同じ窯洞の中には他の選手もいたが、皆軽症だった。その後、一緒に山を降り、ふもとに着いた後、医療スタッフや武装警察に会った」
メディアの報道によると、多くの選手を救助した羊飼いの男性の名は朱克銘さんで、当時、助けを求める選手の声を聞いて窯洞から出て来たという。痙攣をおこしている選手を窯洞に連れていき、火を起こして温めたり、信号のあるところまで走って行き、救助ホットラインに電話をかけたりしていた。外で救助隊を待つ間にも低体温症で倒れた別の選手を助けた。
張さんを含む計6人の選手が朱さんに助けられた。
今回、遭難して死亡した選手の中には、山岳マラソンのエキスパートや中国マラソン界の名人、中国パラリンピックのチャンピオンなど有名なトップランナーも含まれているという。
この大会は、地元政府などが主催したもので、主催者は4年以上、現地でマラソンイベントを運営していた。
この死亡事故を受け、SNS上では主催した地元政府に対する怒りをあらわにした。気温の低下への備えを十分に呼びかけず、安全管理に問題があったのではないかと地元政府の責任を問う声が上がった。「これは天災ではなく、明らかに人災だ」
一部のネットユーザーはウェイボーに次のような投稿した。
「GPSのSOSボタンを押して2時間半の間、誰も救助に来なかった。助かったのは偶然に羊飼いのおじさんに出会ったから。助かった後も自力で下山しなければならない。こんなに長時間救助されないなんて、主催側は何をやっているの?そもそも救助計画など立てていなかったのではないか?」
「SOSボタンを押してから下山して医療スタッフや武装警察に会うまで3〜4時間かかった。その間、主催側は何をしていたの?馬に乗っていた古代じゃないんだ。これでは救援車は最初から出ていなかったのではないか。これはどう見ても天災ではない、人災だ」
(大紀元日本ウェブ編集部)