日本の対外援助、パンデミックで地域主導権発揮 米誌「悪名高い一帯一路と全く対照的」と称賛
自国における予防接種の高速化を図る一方で、日本は世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策における自国の役割強化を推進している。
日本政府は最近、他諸国の支援を誓約して深刻なワクチン不足に直面している隣国台湾にワクチンを無償提供した。
2021年6月2日、菅義偉首相は国際連合などが主導するイニシアチブ「COVAXファシリティ」に800億円相当(8億米ドル)を追加拠出すると表明している。AP通信が報じたところでは、これは前回日本がCOVAXに拠出した額の4倍に相当する。
また、日本国内で製造するワクチン3,000万回分を目途としてCOVAXなどを通じて各国・地域に供給していく考えも示した。
AP通信によると、COVAXワクチン・サミット(AMC増資首脳会合)で「今こそ行動する時だ」と述べた菅首相は、今回の拠出を合わせると日本のCOVAXへの合計拠出額は1,000億円相当(10億米ドル)になると話している。
最近になって感染が拡大している民主主義の島国、台湾を支援するため、日本は確保していたアストラゼネカ(AstraZeneca)製ワクチン124万回分を寄贈した。ワクチンを乗せた飛行機は、6月4日に台湾に着陸した。
AP通信の報道によると、台湾を自国領土と主張する中国も、ワクチンの提供を申し出ていたが、台湾政府はワクチンの安全性に対する懸念からこの申し出を拒否していた。
国際社会では長年にわたり、中国が自国の経済的・戦略的利益のみのために対外援助を利用しているという批判の声が上がっている。こうした状況の中、「自由で開かれたインド太平洋」構想の一環として日本は地域開発に取り組んできた。この戦略の中には昨今の「ワクチン外交」も含まれている。
2021年5月にG20(G7を含む計20か国・地域)や主要機関が参加して開催された「グローバル・ヘルス・サミット」で、中国共産党中央委員会総書記を兼任する習近平主席は、開発途上国のコロナ復興支援として3,000億円相当(30億米ドル)を供与すると誓約し、ワクチンの協力に関する国際フォーラムの設立も提案したと、ロイター通信が報じている。
中国は特に南アジア地域に数百万回分のワクチンをすでに供給している。しかし、政治に特化した報道機関「ポリティコ」が伝えたところでは、中国からワクチンの無償提供を受けることで、台湾主権の移行など当該国は中国から政治的な譲歩を迫られる危険性がある。AP通信の報道では、中国は少なくともパラグアイに対してワクチン供与と引き換えに台湾との断交を迫っており、台湾の呉釗燮(Joseph Wu)外交部長(外相に相当)が批判を表明している。
同地域に対する野心の高まりに伴い、中国は債務を負わせた諸国での影響力強化を目的とする略奪的融資政策「借金地獄」戦略を行使しているとの非難も高まっている。ウィリアム・アンド・メアリー大学のグローバル・リサーチ・インスティテュート(GRI)が実施した2021年の調査報告書には、「中国の契約条項は債権者が債務者の国内政策と外交政策に影響を与えられるように構成されている」と記されている。
2017年に中国からの過重な建設融資の返済に行き詰まったスリランカ政府が、中国国有企業により建設されたスリランカの港湾運営権を99年間貸し出すことを余儀なくされた事例を指摘する声も多い。
開発援助などのデータを提供するウェブサイト「Donor Tracker」によると、中国とは対照的に、日本は市場金利を下回る金利とより長い返済期間で構成された譲許的融資を優先して提供している。近年、陸海を問わず中国との領有権紛争を抱え、中国の拡張主義に懸念を抱く諸国は日本政府からインフラ援助を受けるようになってきた。
ドイツに本拠を置くデータ分析機関によると、2019年に日本が実施した政府開発援助(ODA)の支出総額1兆5,500億円相当(155億米ドル)は世界第4位を誇る額であり、インド太平洋地域に限れば最大額となる。中国は外国援助額は国家機密であるとして発表していない。
2021年2月にフォーリン・アフェアーズ誌に掲載された記事には、日本の援助プログラムは透明性、持続可能性、説明責任を優先していると記されている。これは中国の「不透明で悪名高い一帯一路(OBOR)政策」とは「全く対照的」である。
同記事には、「折に触れて中国の巨額資金融資政策からは憎悪が生まれているのに対し、日本は自国の援助政策により真の信頼関係を構築している」と記されている。
(Indo-Pacific Defence Forum)