仏子ども新聞、新疆記事の撤回求める中国大使館を一蹴 「謝罪しない」
フランスの子ども向け新聞紙モン・コティディアン(Mon Quotidien)は6月末と今月初め、中国新疆ウイグル自治区での人権問題や中国共産党結党100周年に関する報道を行った。在仏中国大使館は、ウイグル人への人権侵害などはねつ造した話だとして、同紙に非難する書簡を送り、記事の取り下げを強要した。同紙は記事の撤回をしないと表明した。
米ラジオ・フリー・アジア(RFA)12日付によれば、フランス国内の10~13歳の児童を対象にしたモン・コティディアン紙は6月30日、「中国でウイグル人が強制収容施設に送られた」と題した記事を掲載した。記事のサブタイトルは「ウイグル人ムスリムは、彼らの宗教が原因で虐待を受けている」。記事の中で、強制収容施設の中で拘禁されているウイグル人住民の会話が漫画で表現された。会話は、中国当局によるウイグル文化の消滅、ウイグル人への拷問や強制労働に言及している。
同紙のアンドレ・ガセリン副編集長はRFAの取材に対して、中国大使館からすぐに非難の書簡が届くことに驚いたと話した。副編集長は、中国外交官の好戦的な「戦狼外交」を知っているとした。フランス外務省は3月、同国の議員を侮辱したとして、中国大使を呼び出して抗議したことがある。しかし、「中国大使館が子ども向けの新聞紙に書簡を送るとは全く思わなかった」という。
「4、5日前、中国大使館から書簡を受け取った。書簡はわれわれの報道を批判し、記事を撤回するよう求めた。さらに、中国大使館からの電子メールも届いた。われわれが記事の中で取り上げた女性について、中国大使館は『テロリスト』だと決め付けた。大使館側から送られた他の書簡でも、一部のウイグル人がテロリストであると強調した」
ガセリン氏は、同紙は「報道を行う新聞紙で、意見を述べる新聞紙ではない」とした。このため、同紙はフランス在住のウイグル人女性のグリバハル(Gulbahar)氏を取材した。グリバハル氏は以前、中国に帰国した後、再教育施設に送られ、3年間の洗脳と迫害を受けた。
同紙は、カザフスタンの市民記者であるメイアベク・サランベク(Meiirbek Salanbek)氏にもインタビューした。サランベク氏はこれまで、映像や写真を通して、新疆ウイグル自治区の再教育施設で約千人のウイグル人女性が迫害を受けていたことを報道した。
サランベク氏はこれらの事実を国連人権理事会に提出したが、親中国の同国政府に脅迫され、フランスに政治亡命した。
ガセリン副編集長によると、子ども読者は新疆ウイグル自治区での人権侵害について強い関心を寄せている。
いっぽう、フランスに住む中国人保護者15人は、モン・コティディアン編集部に共同書簡を送り、記事の撤回を求めて抗議したという。保護者らは、記事が原因で、学校で中国人の子どもが差別やいじめを受ける可能性があると主張した。このため、保護者らはネット上で、記事の取り下げを求める署名活動を起こした。
ガセリン氏は保護者の抗議について「ある程度理解できる」としたが、中国大使館の干渉は「これまで見たことがなく、非常に暴力的だ」と述べた。
「大使館側は不誠実だ。われわれの報道を読んでいれば、われわれは中国に反対しているのではないとわかる。実に、今までわれわれは中国について多くの特集を組んだ。数年前、中国人がなぜ差別を受けているのかについても記事を公開した」
副編集長は、中国大使館の干渉は「(報道の自由への)脅威である」と話し、「われわれはこの報道を行ったことを後悔しないし、謝罪するつもりもない。そして、記事の取り下げもしない」と示した。
(翻訳編集・張哲)