2019年8月23日、「光復香港、時代革命(香港を取り戻せ、時代の革命だ)」と書かれた携帯を手に持つ香港の抗議者(ANTHONY WALLACE/AFP/Getty Images)

香港デモ題材の映画、カンヌ国際映画祭でサプライズ上映 監督「香港人にとって大きな慰め」

フランス南部カンヌで6〜17日の日程で開催された「カンヌ国際映画祭」は終了間近の15日、2019年の香港反政府デモをテーマとするドキュメンタリー映画「時代の革命(Revolution of Our Times)」を翌日上映すると突如、発表した。主催側は中国の妨害を懸念して、上映は直前まで告知しなかったという。

香港出身の周冠威(キウィ・チョウ)監督(42)が手掛けたこの2時間半に及ぶ作品は、最前線で戦うデモ参加者や抗議活動の支援者ら7人の物語で構成されている。

同ドキュメンタリーは、2019年6月に100万人が参加する抗議活動から始まり、学生と警察隊が激しく衝突した同年11月の香港理工大学(Hong Kong Polytechnic University)事件などを記録した。

報道によれば、映画祭の主催側は14日、カンヌで取材中のメディアに電子メールを送信し、ドキュメンタリーの上映を知らせ、記者10人を試写会に招待した。ただし、招待を受けたメディアは現地時間の15日午後まで情報を漏らさないよう求められたという。

米エンターテイメント情報誌「バラエティ(Variety)」のウェブサイトは「カンヌ映画祭は大きな賭けにでた」と題する記事を掲載した。

中国からの反発を予想した映画祭の主催側は、上映直前まで発表しないことを決めた。同日までに出品された中国映画はすべて上映済みだったため、中国側に作品の取り下げで抗議する隙を与えなかった。

香港の抗議活動をテーマとする映画が国際映画祭で上映されたのは今回、初めてではない。Anders Hammer監督の映画『分割しないでください(Do Not Split、不割席)』は米2021第93回アカデミー賞「短編ドキュメンタリー映画」部門にノミネートされた。

苦難満ちた製作過程

『時代の革命』を手がけた周冠威監督は香港メディア「HK01」のインタビューの中で、2年間にわたる極秘裏に進めてきた同作品の製作に関するエピソードを語った。

周氏は、香港理工大学が警官隊によって包囲され、学生らデモ参加者数百人が立ち往生した事件の時にも、校内に残って記録を続けたという。

その間、彼は警官隊の水砲車が発する青い水を浴び、ヘルメットには少なくとも1発のゴム弾が撃ち込まれた。編集期間中に、あまりの辛さで仕事に手をつけられないほど、何度か号泣した。その後も警察に追われる悪夢にうなされていた。

今春、周氏は同作品を「カンヌ国際映画祭」に送付した。しばらくして、彼の元に「特別上映の機会を得るだろう」との知らせが届いた。

同氏は声明の中で、「香港が受ける損失はいかなる人の予想も超えているが、この朗報は恐怖の中で生活している香港人にとって大きな慰めになるだろう」として、同映画祭に感謝の意を表した。

周氏は香港政府が映画の検閲を強化し、同ドキュメンタリーが香港で上映されないことを予想していた。それでも、香港から離れることや、映画に自身の名前を表示しないなどのアドバイスを全て拒否した。

「この恐怖心には負けたくない(I really don’t want to lose to this fear)!」「香港映画の『レッドライン』がどこにあるのか推測したくない。そうして初めて私は自由になれる(Only then can I be free)」と周氏は述べた。

(大紀元日本ウェブ編集部)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]