建設中の台山原子力発電所 (Photo by PETER PARKS/AFP via Getty Images)

燃料棒破損した中国・台山原発、親会社の仏電力公社「もしフランスなら止める」

中仏合弁会社が広東省で運営する台山原子力発電所では6月、燃料棒の破損による放射能漏れ事故が発生した。しかし、中国当局は重大事案とみなしておらず、運用継続を許可している。近日、原発を設計した仏企業の親会社である仏電力公社(EDF)は、もしフランスで台山と同じ問題が起きたならば、「停止して調査しているだろう」とコメントした。

中国生態環境省と国家核安全局の共同声明によれば、放射線量の上昇は台山原子力発電所2基のうち1基で確認され、6万本ある燃料棒のうち5本が破損したことが原因だという。当局は「よくある現象」で、懸念する事案ではないと説明している。

仏電力公社はこの事案を重く受け止めている。事案から1か月以上経た22日、台山原発の分析の結果を公表した。問題となった原子炉の放射能は国際基準を下回っているものの、もしフランスであれば、まず原子炉を停止して、状況を把握し、問題の拡大を防ぐ行動を取ると強調した。

関連報道:台山原発の放射性物質漏洩疑惑 日本の原子炉専門家「かなりの燃料が損傷している可能性」

仏側は以前から、中国の情報透明性の欠如に懸念を抱いていた。AFP通信によれば、2020年10月、台山原発一号基では燃料棒に埋め込まれるウランを交換した後、再起動時、密閉トラブルが発生した。仏電力公社とその子会社で燃料棒を製造しているフラマトム(前・アルバ)とともに問題対処の助言を行った。しかし、広核集団はそれを聞き入れるどころか、フランスの情報開示請求を鼻であしらうなど「透明性のルールを順守しなかった」という。

報道によると、仏電力公社は、技術的な問題が発生したことも知らされず、臨時の取締役会も開かれず、中国当局の機嫌を損ねないよう仏政府と共に細かな調整を図ることに辟易している。

今回の放射能漏れについても、仏電力公社が事態を知ったのは6月12日のことだった。臨時取締役会の開催や情報開示を求め連絡をしたが、 広核集団からは1週間近く応答がなかったという。

台山原発は、仏電力公社と広核集団の共同プロジェクトだが、実際の運営は中国当局ならびに広核集団が行っている。仏電力公社は30%の台山原発の株式を保有している。

この漏えい問題は最初、米CNNが6月14日、フラマトムが米国原子力委員会に対して台山原発に関する報告書を受け取り、テクニカルサポートを求めたとの報道で注目を集めた。フラマトムは6月3日と8日、『放射能漏れの脅威が差し迫っている』とする文書を発行した。さらに、中国当局が運転停止させないように、放射線数値の許容量を徐々に引き上げているという。

なぜ、フラマトムは米国に助言を求めたのか。広核集団は米国の制裁対象企業リストに入っており、米国で事業を展開しているフラマトムが台山にさらなる技術を提供するには、米国政府の承認が必要なためだ。

カーネギー国際平和財団の原子力政策上級研究員であるマーク・ヒブス氏は、中国当局が福島原発の処理水に関する問題を大々的に批判してきたのだから、台山原発についての事案も「中国の国民に説明を求められるだろう」とAFP通信に述べている。

(佐渡道世)

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