神医華佗の物語(5)

不思議な不老養生術

華佗(かだ)は、世界的に普及している奇跡的な養生術「五禽戯(ごきんぎ)」を考案しました。それは若さの維持、更には若返りの効果があるとも言われています。華佗自身は、老いてもなお、若者のように若々しい姿をしており、神仙の様であったため、人々は彼を神医として尊敬していました。

華佗が考案したこの五禽戯は、とてもシンプルで、誰でも簡単に実践できるものです。華佗の弟子である呉普(ごふ)は、何十年にもわたって五禽戯を続けたため、90歳以上も長生きした上、軽快に歩むことができ、耳目聡明で、歯も健康でした。体が弱い人は、五禽戯をすることで体力をつける事ができ、病気の人は、その病の回復を早めることができます。そのような点において、五禽戯はとても有効的な健康法と養生術といえます。

華佗は苦しんでいる人々に同情し、身体鍛錬による健康作用を重要視していました。華佗 は「人間の体は、定期的に動かさなければならないが、過剰に動かしてもいけません。定期的に活動することで、消化機能が強くなり、血や脈の流れが流暢になり、病気を起こしにくくします。ドアの軸のように、毎日回していれば虫は寄生しないでしょう」と言いました。華佗のこのような見解は、天神合一の理に従い、世間万物の道理は全て同じと見なしており、すなわち人も、自然の法則に従わなければ健康にはならないという思想です。

現代では、華佗は古代医療体育の創始者の1人と考えられています。彼は、「流水は腐らず、戸の軸は虫食いにならない」という原理に基づいて、「五禽戲」を創りました。 実は、華佗は修練界の最低レベルである健康法を皆に教えていたのです。人々はその奥深い微妙な部分を知らず、それを単なる運動として捉えていました。 華佗も真相を表明することができないので、誰もが理解できる自然現象を利用して、人々がこのような養生術を受け入れられるように説明したのです。

動作はとても簡単で、虎、鹿、熊、猿、鳥の5種類の動物の動きを真似ています。第1の動作は、虎が前脚で跳躍し、獲物を捕らえる動きを、第2の動作は、鹿が頭と首を伸ばした姿勢を真似ます。 第3の動作は、熊が横向きで寝そべる姿勢、第4の動作は猿がつま先飛びをする姿勢、第5の動作は、鳥が飛んでいる姿勢を模倣したものです。この5種類の動物の姿勢を真似ることで、表面的には体の関節や背中、腰、手足などを伸び伸びとさせ、気持ちよく感じられますが、実はそこには、人間には分からない他の空間の神秘が隠されています。

1700年以上も前に、華佗の「病気を治療するのではなく、病気になる前に治療する」という考え方や、予防を主とした考え方を継承し、発揚させ、積極的に健康増進のための治療を行ったことは、非常に価値のあることです。

高尚なる医徳

後漢末期から三国時代初期の激動の時代に、華佗は民間医師を志し、医療技術を駆使して、患者の苦しみを取り除くことを決意しました。名声や財産を軽蔑していたので、少尉の黄婉からは官吏になることを勧められ、沛国相は、孝廉の名義で彼を朝廷に推薦しようとしましたが、華佗はそれを全て拒否しました。 彼は布の衣を身にまとい、金色の鈴を手に、あちらこちらで治療を施しました。彼の足跡は、江蘇省、河南省、山東省、安徽省など、とても広範囲に渡りました。 彼は人々を愛し、高尚な道徳心を有しており、民を治療するためにしばしば山を登り、川を渡り、草をかき分けて治療に赴きました。特に貧乏な人には心を配り、治療の際には一銭も受けとりませんでした。 彼はよく道端に机を置いて、通りすがりの病人の病を治療していました。彼は人命を大切にし、職業に徹し、人々から尊敬され、愛された民間医師だったのです。

(翻訳・井田)