写真は自衛隊の儀仗隊。(Photo credit should read KAZUHIRO NOGI/AFP via Getty Images)

コロナ禍で脆弱さ露呈した産業 経済復興、そして危機管理は? 護る会アンケートに総裁選4候補が回答

自民党議員議連「日本の尊厳と国益を護る会」(以下、護る会)は、総裁選4候補に送付していた公開質問状と回答を24日に公表した。質問は、パンデミックによる経済・社会ダメージへの対処、そして、いざという時の危機管理対応に及んだ。

コロナ禍を経た日本経済は、2020年度の消費が前年と比較して7~8割減少した。2021年後半に入ると、医療体制の拡充およびワクチン接種の拡大で経済面や社会面に復調が見られた。しかし、中国共産党による日本周辺の地域的な影響は拡大し、新たなパンデミックや大規模災害、有事など、日本に大打撃を与える危機の発生リスクは依然として高い。こうした危機にどう対処するのか、4候補は考えを示した。

「有事想定」「デジタル化促進」…感染症対策

岸田文雄氏は、コロナ対策について「有事対応を想定」する、徹底した対策を行うと述べた。また、感染者ゼロではなく、医療体制を拡充することで社会経済活動を取り戻すことを優先するという。加えて、ワクチン接種と経口薬の年内開発に向けて加速する。さらに、危機時における国の権限強化のための法改正にも取り組むという。この法令発動は、人流抑制や医療資源確保を想定している。

高市早苗氏は、「しばらくは下支えが必要」と前置きし、5月、菅政権に提出した提言書で、「コロナ禍前の令和元年度の課税所得と2年度課税所得の差額の8割を、還付金用口座に振り込む」ことや「小規模事業者に100万円と200万円の持続化給付金を再支給する」ことなど支援策を掲げた。加えて、地方に人を呼び込む準備として、サービスやモノなど地域資源を再評価し、支援を図るとした。

野田聖子氏は、コロナウイルウス感染症による社会のダメージ抑制のために、感染症法の扱いを見直し、ワクチンの無料接種や疫学調査を進めて、通常医療に接続する仕組みを整える。そして、デジタル化を進めて、感染症だけでなく災害など国民の移動が制限される場合にも対応できる、強靭な社会体制を作り上げるとした。

河野太郎氏は感染症対策について、最新の科学的知見に基づいて議論を経て決めると述べた。また、三回目接種の準備を進めて、経済・社会の平常化プログラムを提示するとした。今後のさらなる感染症拡大にも対応するため、高度な専門性を有する人材を育成し、重症化を避ける治療薬と国産ワクチンの開発を強力に支援すると述べた。

新型コロナウイルス感染症の影響を抑制するため、一部の候補者はワクチン接種の拡大を提言している (Photo by HAZEM BADER/AFP via Getty Images)

需要減の回復には何が必要?

コロナ禍による雇用の減少、生活困窮者の増加、事業者の経営難など、人流抑制が敷かれているなか、これらの課題に対する政府の対処は急務だ。護る会は、「需要の一気消滅」を克服する経済対策について各候補に問うた。

高市氏は、提唱する「危機管理投資」には、感染症の発生や大規模災害といった緊急時の「生活・医療・衛生・産業に必要な物資」を国内で生産・調達する国内サプライチェーンの強靭化が含まれると説明。生産協力企業への設備投資支援、研究開発・生産拠点の国内回帰を促す税財政支援、基礎的原材料の確保という新規政策を盛り込むとした。また、治療薬の国産体制と緊急薬事承認制度の成立も掲げた。

野田氏は、経済再起動プランを作成する雇用調整助成金は「休んでいる」人に払うのではなく、「転職準備あるいは能力向上」をしている人に払うなど、次の経済成長のための労働移動を支援するとした。観光産業は、ワクチンパスポートなどを組み合わせて、感染拡大防止と同時に流動人口を増やす。産業政策では、食糧自給率向上や重要商品のサプライチェーンの国産化を掲げた。

河野氏は産業に関わらず、コロナによる需要消滅の影響を受けた中小零細事業者に必要な資金や支援の提供を速やかに行えるよう、政府としての基盤を整えるという。短期的には、ボトルネックとなっている事務に関する人材の投入、中長期的には、デジタル技術を用いて、プッシュ型、ワンストップ型の対応ができるよう「より機能の高い政府にする」との構想を示した。

岸田氏は、政府方針により不利益を受ける方やコロナで生活困窮に見舞われた社会的弱者らに対して、十分な経済対策を数十兆円規模で行うことを掲げた。例として、家賃支援給付金・持続化給付金の再支給など、地域・業種を限定しない支援を事業規模に応じて実施する。そして、非正規・女性・子育て世帯・学生らに給付金を支給すると述べた。

国家危機管理が「強靭な日本に変えるための策」は?

引き続き、護る会は、4候補に危機管理姿勢を問うた。

野田氏は、政治家は国民と危機管理意識を共有すべきであり、危機対応能力がある政治家を選出できる選挙態勢を整える必要があると述べた。そして、「最大の財政出動の必要があるのは、防衛戦争を余儀なくされた時」であり、緊急時のためにも平時は財政の健全化に努めるべきだと主張した。

河野氏は、新型コロナウイルスの流行で日本の危機対応の弱さが露呈したと述べるいっぽう、現場では「日本人のすばらしさを実感させた」と強調。日本人のすばらしさを生かした国づくりを進めるとのアイデアを示した。

岸田氏は、我が国における公衆衛生分野の危機管理能力を強化するため、法改正と新たな危機対応組織の立ち上げが必要だと主張。具体的には、公衆衛生上の危機発生時に、国や地方を通じた指揮権限を持つ「健康・危機管理庁(仮称)」の創設や、緊急事態条項を含めた憲法改正の実現を掲げた。

高市氏は、今後の国家危機管理には、海外からのサイバー攻撃の対応強化が不可欠と述べた上で、量子暗号通信技術の研究開発や社会実装、それに応じた「高度セキュリティ人材」の育成が急務だとした。さらに、国防体制を構築し、サイバー、電磁波、無人機、極超音速兵器といったゲームチェンジャーに対応するとともに、迅速な敵基地無力化を可能にする法制度の整備、訓練と装備の充実、防衛関連研究費の増額に注力すると述べた。

(佐渡道世)

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