国際がん研究機関(IARC)が発表した2020年の世界最新の「がんデータ」によると、症例数の多い上位10位の各種がんのうち、大腸がんが3位に入っていました。
大腸がんは、発生率は高い種類のがんですが、中年期以降に大腸内視鏡検査を定期的に受けることで、早期の発見および治療が可能ながんでもあります。
「痔による出血」と自己判断しないで
大腸がんは(直腸がんも含めて)すべて始めはポリープからできたものです。ポリープは、大腸内視鏡検査で早期に発見すれば簡単に取り除くことができます。
逆に、放置しておいたポリープががん化する(悪性腫瘍になる)可能性もありますので、内視鏡検査は中年期以降にぜひやっていただきたい検査なのです。
家族に大腸がんの患者がいる場合、危険因子が高いと判断できます。
また、高齢になるほど大腸がんの発症率が高くなり、大腸がん患者の90%が50歳以上です。
ポリープや大腸がんが疑われる症状として、まず血便や排便習慣が変わるなど、便の状態の変化が挙げられます。
例えば、普段は便秘がちで突然下痢になる、また逆に、軟便から突然便秘になる場合もあります。
他に、腹部のある部位に不快感や痛みを覚える、血便にともなう貧血、失血に関連した疲労感が出るケースもあります。
注意すべきは、大便に血が混じっているのを見て「痔による出血」と思ってしまうことです。血便の原因は1つではないかも知れず、痔とともに、大腸がんから腸内に出血している場合も考えられます。
近年は若年化している大腸がん
大腸内視鏡検査でポリープが見つからなければ、とりあえず安心して結構ですが、5年後にまた検査をすることになります。
ポリープが目視できたら、多くの場合、医師がその時に切除します。
一般的に、ポリープが大腸がんへ変わるには、1年から3年はかかると言われています。
ポリープに潰瘍が見つかるなどの異常が見られた場合、大腸がんの可能性が疑われますので、切片を取り出して病理検査をします。
大腸がんが確定したら、専門医が、患者との相談の上で治療方法を決めていきます。
大腸がんは、全てのがんの中で長期予後が比較的良好ながんです。早期発見ができれば、根治はほぼ可能ですので、定期的な大腸内視鏡検査をぜひ受けてください。
ポリープが発生する原因は、実際のところ不明ですが、発見年齢が高いほどポリープが大きく、大腸がんを発症しやすいことは確実です。
それでも近年、大腸がんは若年化傾向にあり、20、30歳代の人でも大腸がんと診断される例が多くなっています。
日常生活のなかから「リスクを除く」
そのため、日常生活のなかに大腸がんのリスクがないか、今一度、ご自身で点検していただきたいのです。
大腸がんのリスクとなるものとしては、運動不足、赤い肉(豚や牛などの獣肉)および加工肉製品の頻繁な摂取、過度の肥満、喫煙、飲酒などです。
大腸がんだけでなく、肺がんやその他のがんの予防のためにも、喫煙はぜひ止めてください。その他のリスクについても、ご自身で意識して、ぜひ軽減するようにしていただきたいのです。
野菜や果物に残存する農薬、食品中の添加物や防腐剤、さらには新鮮でない食品については、大腸がんとの関連性は証明されていませんが、胃に悪影響を及ぼすことで胃がんの要因にもなりますので注意してください。
大腸がんリスクを軽減する食品として、食物繊維の豊富な野菜や果物などが挙げられます。
葉酸は大腸がんの予防に役立ち、カルシウムやセレンは大腸を保護します。
野菜や果物を多く食べることは、大腸だけでなく、体全体の健康に良いと言えます。
(口述・王朝陽/翻訳編集・鳥飼聡)
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