コーヒーは世界中で愛飲されている飲み物です。
「コーヒーは健康に有益か、否か」は昔から議論されてきましたが、ここではそのことには触れず、飲み合わせの注意点についてお話しましょう。
芳さん(女性)は近い将来に出産する予定がなかったため、医師の助言のもとで避妊薬の服用を始めました。
はじめ特に不快感はなかったのですが、ある日いつもと同じコーヒーを一杯飲むと、急に体がおかしくなってしまいました。胸の動悸がして、吐き気がひどく、夜も眠れなくなったのです。
芳さんの体調不良は、何かの病気になったのではなく、避妊薬とコーヒーの「飲み合わせ」が悪かったために起きたものでした。
コーヒーにはカフェインが入っています。実は、コーヒー以外にもお茶やコーラ、チョコレート、エナジードリンクなどにもカフェインが含まれています。こうしたカフェインを含む飲料と、いくつかの薬を併用することによって、手の震えや動悸などの急性症状を引き起こすことがありますので、くれぐれも注意が必要です。
では、どんな薬を服用した場合に、コーヒー(カフェイン飲料)を避けたほうが良いのでしょうか。
1、避妊薬
コーヒーに含まれるカフェインは、中枢神経系を刺激する物質です。適度な量を摂取するならば、眠気を覚ます効果があります。ただし、カフェインを摂りすぎると、動悸、イライラ、不眠、頭痛などの不快症状が出ることがあるので注意が必要です。
芳さんが使っていた避妊薬は、コーヒーとの併用で血中のカフェイン濃度を高めるものでした。そのため中枢神経への刺激が強くなり、結果的に「コーヒー飲み過ぎ」の不快症状が生じたのです。
2、胃薬
胃アトニーなどの胃薬も、血中のカフェイン濃度を高め、中枢神経系への刺激を強める場合があります。
3、抗うつ薬
クロルフェニラミンなどの抗うつ薬は、カフェインの代謝を低下させます。薬の服用中にコーヒーを飲むと、睡眠を妨げたり、不整脈を起こしたりすることがあります。
4、降圧薬
カフェインは血管を収縮させることで血圧を上昇させ、降圧薬(血圧を下げる薬)の効果を低下させます。
5、消炎鎮痛剤
カフェイン飲料を、アスピリンやジクロフェナクなどの消炎鎮痛薬と一緒に服用すると、アスピリンの体内量が増え、ジクロフェナクの片頭痛治療効果も増強されることがあります。これは、当初予測された治療効果とは異なる結果をもたらすことであり、併用は好ましくないと言えます。
6、テオフィリン
カフェイン飲料と、気管支系疾病の薬であるテオフィリンの併用は、テオフィリンの血中濃度を上昇させます。両者の代謝経路は同じであるため、代謝率が低下すると、テオフィリンの毒性が生じて、手が震え、動悸などの副作用がよく見られます。
7、リチウム塩
主として躁(そう)病患者に投与されるリチウム塩ですが、投与された患者の約30~50%に持続的な震えがみられます。リチウム塩による震えは、通常は指先の微細な震えですが、リチウム濃度を高める要因である飲酒、カフェイン、ストレス、疲労などが加わると悪化します。
リチウム塩を服用しているときは、コーヒーなどのカフェイン飲料は避けたほうがよいでしょう。カフェインはリチウムの吸収を悪くしますので、治療に必要な成分の血中濃度が不足することがあります。
8、骨粗しょう症の薬
骨を弱くする骨粗しょう症は、高齢者に比較的多く見られる疾患です。一旦骨折すると、高齢者の生活に大きな不便をもたらしますので、骨密度を補強する薬の服用は再度の骨折を予防するのに重要です。
骨粗しょう症の治療薬には多くの種類がありますが、その中の一種はビスホスホネート類と呼ばれていて、アレンドロン酸はこの種類に属しています。
コーヒーとアレンドロン酸を併用すると、薬効成分の吸収が妨げられて治療効果を損ないます。
また、コーヒー自身にも利尿効果があるため、体内のカルシウムを腎臓から排出させる速度を高めます。骨粗しょう症の治療中には、お好きなコーヒーであっても、飲むのは控えめにされたほうが良いでしょう。
(文・花蓮慈濟醫院藥學部團隊/翻訳編集・鳥飼聡)
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