雨の中の老僧 【ものがたり】
夕方、一人の僧侶が僧院に戻る途中、雷が大きく鳴り響き、激しい雨が降り出した。雨は降り続いていて、しばらくは止みそうにない。幸いなことに、すぐ近くに荘園があったので、僧侶はそこで一晩、嵐を避けようとした。
門番の召使は、僧侶が門を叩いているのを見て、「ご主人様は僧侶とは縁がないので、他をあたったほうがよい」と冷たく言い放った。僧侶は「雨が激しくて、近くに他に泊まる店などもないので、何とかお願いできませんか」と懇願した。
使用人は、「許可がないとできないので、中に入ってご主人様にお聞きしてみます」と言った。奉公人は中に入って許可を求めたが、僧侶のもとに戻ってきて、再びだめだと言った。屋根の下でも良いから一晩、雨宿りさせて下さいと頼んでも断られ、僧侶は仕方なく使用人に荘園の持ち主の名前を聞き、土砂降りの雨の中、びしょ濡れになって寺に走って帰った。
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