古代中国の非凡な医術 生死さえ予知した名医(1)
中国医学は長い歴史を持ち、古代中国の最も奥深い学問の一つである。 古来、多くの名医が修行の道に精通し、中には山中で修行者に出会い、神秘的な法術や驚異的な治癒技術を教わり、医学の道を歩み始めた人もいる。
これらの医師の中には、脈診で患者の運勢や生死をも予知する不思議な医術、「太素脈の術」に長けた者が多くおり、 明の時代にも後を絶たなかった。彼らは儒学を学んだ後、医学を学び、他人の病状の予知ができた。
張汝霖は山西省の出身で、若いころ儒学を学び、その後医術を学び、次第にこの地方で名を知られるようになった。 また、太素脈にも精通し、脈診後、死亡日を予言できた。 彼は自分の損得を一切考えず、常に患者の治療に全力を尽くした。
張汝霖の病気診断方法は独特で、しかも常に正確だった。ある和尚が夏ばてで苦しんでいたところ、張汝霖に出会い、井戸水で頭を洗っているのを見て、「一ヶ月後に頭が割れるほどに痛むだろう。今、薬を飲んでも遅くはないぞ」と言った。 和尚は聞き入れず、1ヵ月後、本当に頭が痛くなった。 その後、痛みはますます激しく耐えられず、再び張汝霖のもとを訪ねた。 「もう遅い、薬を飲んでももう遅い。今年を乗り切れば、来年には元気になるだろう。 でも、その頃には、歯がダメになるのではないだろうか」と張汝霖が言った。 翌年、和尚の頭痛はなくなったが、歯は全部抜けてしまったという。
またある儒学者が腸チフスにかかり、数年経っても治らなかった。張汝霖は家族に「症状が悪化するなら、治るからいいことだよ」と言った。 その後、張汝霖の言う通り、この儒学者の病状はさらに悪化し家族は心配した。治療のために張汝霖を連れてくると彼は、患者の睡眠と発病時の症状を聞き、すぐに「これはいいことだ、まだ急いで薬を飲まなくていい」と言った。
しかし、やはり家族は不安で、どうしても処方箋を書いてほしかった。張汝霖は考えた末、すぐに処方箋を書き、「汗をかかせましょう」と言った。家族はよほど秘密の処方箋だと思い開けたが、そこには一般的な薬草が数種類書かれているだけだった。 しかし薬を煎じて患者に飲ませたら、すぐに汗をかき始め、やがて、彼は完全に回復した。
張汝霖が93歳の時、彼は自分が世を去ることを知り、息子と孫をそばに呼び、「私は来年の某月某日に死ぬ。まだ書き終えていない医学書を完成させるために力を貸してくれ」と言った。
その後、張汝霖は毎日子どもたちに口述筆記を頼んだ。多くの原稿を作ったが、その中で何が足りないのか、何が間違っているのか、よく覚えていた。 「巻やページに数字を書いていないので、直ぐに補い、数字が間違っているので、訂正しなさい」と、よく子どもたちに言った。
亡くなる前日も元気で(かくしゃく)としていた。彼は一日中、家族や友人を招いては酒を飲み、昔ながらのおしゃべりを楽しんでいた。 翌日、張汝霖は息子たちに死後のことを話し、着替えを済ませた後、目を閉じて静かに息を引き取ったという
(翻訳・李明月)