古代ギリシャの都市国家テーバイの王妃であったニオベーは非常に幸せな女性でした。豊富な財力だけでなく、権力も持っており、その上、7人の凛々しい王子と7人のかわいらしい姫を生み、誰もがニオベーを羨ましがっていました。
毎年、春になると、テーバイの女性たちは女神レートーを祭っている神殿に集まり、新鮮な花束を供えています。ギリシャ神話の中で、レートーは光明の神アポローンと月の女神アルテミスを生んだため、人々はレートーに対し、この上にない忠誠と敬意を払いました。しかし、このことがニオベーを深く嫉妬させました。
ある年の春、女性たちはいつものようにレートーに花束を供えに行きました。しかしニオベーの嫉妬はとうとう我慢の限界を超え、爆発しました。
「あなたたちがお供えしている女神はただの伝説よ。実際にいるはずがないわ。レートーになどお供えするよりも、私を敬うべきだわ。私の宮殿には数えきれないほどの宝物があるし、私だって女神のように美しいわ」とニオベーは人々の前に立ち、自分が女神レートーより尊く、偉大であり、人々に尊敬されるべきだと公言しました。
また、こうも言ったのです。「私は7人の格好いい男の子と、7人の可愛らしい女の子を生んだわ。レートーは2人しか生んでいない。私の7分の1でしかないのよ。私はその7倍尊敬されるべきだわ。レートーなんかより、私の方がもっと幸せになるべきだわ。永遠に幸せになるべきだわ! だから、あなたたちは今すぐこれらのお供えを下げなさい。2度とこのような真似をしないでちょうだい!」
ニオベーの傲慢さを見て、人々は驚愕しました。天上の神様の子供と比べるなど、なんて無礼なことでしょう!
ニオベーの嫉妬、傲慢、狂妄、そして、悪行が神々の目に入り、彼女に罰を与えることにしました。アポローンは弓矢を取り出し、ニオベーの7人の息子を目掛けて次々と射っていきました。間もなくして、7人の王子は亡くなりました。
しかし、ニオベーは悲しみながらも、神に対する無礼な態度を改めませんでした。「7人の息子を失っても、まだ7人の娘がいる!依然と2人の子しかいないレートーに勝っているわ。災いに遭っても、レートーより幸せよ!」と7人の娘を息子たちの死体の傍へと連れて行き、延々と女神レートーを罵りました。
これを見たアルテミスは、この神を軽蔑し、冒涜し続けている女に更なる罰を与えようと、弓矢を取り出し、ニオベーの残りの7人の娘を次々と射っていきました。
そして、7人のお姫様も次第に息を引き取ったのです。この光景にニオベーは呆然とし、自分の子供たちの死体に囲まれてその場に座り込み、悲しみと苦痛に満ちた涙を流しました。続けて、ゼウスはニオベーを岩に変え、風を起こして崖の上に飛ばしました。
この「ニオベーの泣き岩」は、現在のトルコ西部のスピル山にあり、彼女のような過ちを犯さないよう、人々に語り継がれています。
(作者・莫求 /翻訳編集・天野秀)
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