ギリシャ神話における人類の起源
人類の起源に関するお話は定番として、世界各地、各民族における神話の中で、必ずと言っていいほど伝えられています。ギリシャ神話も例外ではありません。
ギリシャ神話では、天と地が神によって創造された後、魚は大海原で自由自在に泳ぎ、鳥は空中で楽しくさえずり、多くの種類の動物たちが大地で走り回り、繫栄していく、こうして人類が生存できる環境が生まれたとされています。
この時、ある神が大地に降臨し、泥をすくい、自分の姿かたちをもとにして人間の外観を作り出しました。そして、その体内に善と悪を埋め込み、最後に魂を注ぎ込み、聖なる息を吹き込みました。
こうして、最初の人間が作り出され、間もなくして、人間は世界各地に現れました。しかし、長らくの間、人間は自分の手足の使い方や火の起こし方、陶器の焼き方、食べ物の作り方など、万物の使用方法について何も知りませんでした。人々はまるで働きアリのように光の入らない洞窟に住み、季節の移り変わりすら知らず、本能のままに生きていました。
そこで、神はプロメテウスを遣わして人類に基本的な生活知識を教えました。プロメテウスは、ギリシャ神話では英雄であり、神の子で、その名前は「先知」という意味です。プロメテウスは人々に季節の移り変わりや、物の数え方、思っていることを書き留めて記録に残したり、家畜を使って物を運ばせる方法など、数々のことを教えました。
プロメテウスが現れる前、人類は病や薬に関する知識が全くなかったため、病気にかかった人は何を飲むべきか、何を禁ずるべきかを全く知らず、苦痛を和らげる術も知らなかったので、全て運任せでした。運のよい人は生き伸びることができ、悪い人は苦しみの中で息絶えるしかありませんでした。しかし、プロメテウスはそんな人類に薬の調合を説きました。
その他にもプロメテウスは鉱石や鉄、銀、金などの金属類をどのように使用し、またどうやって見つけるかを教え、そこから派生する生活用品の製造や使用方法まで伝授しました。こうして、文明が開かれ、人類は正常な暮らしができるようになったのです。
神は人類に魂を注ぎ込んだだけでなく、善と悪をともに人間の体に封じ込めました。したがって、人間には良い面と悪い面が存在するのです。別の言い方をすれば、良き人間には必ず欠点があり、そして、悪いとされる人も、実は心のどこかで優しい部分、つまり、善良な部分があるのではないでしょうか。
(翻訳編集・天野秀)