「あなたも気をつけて!」深夜スマホは不健康の元凶
現代社会の人は、1人1台のパソコンをもち、さらには複数台のスマートフォンやiPadを持っています。それらの機器は、仕事や交友に欠かせないアイテムになっています。
「五臓」を養う貴重な時間
しかし懸念されるのは、多くの人が深夜までネットを閲覧し、ゲームやSNSを際限なくやっている現状です。
こうしたネット中毒やスマホ病が、現代人の抱える健康被害の元凶であることを、もしかしたら私たちは、あまり意識していないかもしれません。
人間が疲れた体を癒し、体力を回復させる「養生」は漢方医学の思想です。その基本は、自然界の法則である春夏秋冬の変化に、人の体を順応させることにあります。
また、1日の時間と人体の五臓の経絡にも、相互に作用する関係があります。これを「12経脈養生法」と呼んでいます。
午後9時から11時までの亥(い)の刻は、三焦(さんしょう)の経絡が主となる時間であり、この時に夜更かしせず、きちんと睡眠に入ることで百脈を養うことができます。
三焦は漢方医学における六腑の1つですが、腑としての三焦は全身に通じています。
三焦が網羅する範囲のうち、上焦は心臓と肺を含み、中焦は脾臓と胃を含み、下焦は腎臓と肝臓を含みます。つまり、三焦の気は全身を巡って、体の全てを管理統括するのです。
臓器全体の運行、および水と栄養の運搬は、全てこの三焦で管理維持されています。
だからこそ、亥の刻になったら、もうスマホは手にせず、ゆったりと睡眠状態に入って、五臓六腑を養生しなければならないのです。
体の回復が始まる真夜中
続いて子(ね)の刻である午後11時から午前1時までは、胆(たん)の経絡が主となる時間です。
胆経は「少陽春生気」つまり冬の最も寒い時期から、春の陽気が少しずつ成長してくる過程です。
その初めの頃は、芽生えたばかりの早苗のように陽気が非常に少ないため、保護する必要があります。陽気は五臓の機能を表しますので、陽気を保護することは五臓を保護することと同じ意味になります。
次は丑(うし)の刻で、午前1時から3時まで。主たる臓器は肝臓です。肝臓は血を養い、体内の毒素を排出します。
「肺」は外敵を阻止する最前線
そして寅の刻は午前3時から5時、主たる臓器は肺です。
肺は外邪(ウイルス、細菌、寒気など)に抵抗する第一の防衛線です。この時間に肺を保護し、呼吸を守り、抵抗力を強化します。
卯の刻は午前5時から7時まで。大腸の経絡が主となります。ここで人は起き始め、トイレに行って老廃物を排泄し、腸を空にします。
辰(たつ)の刻は午前7時から9時まで。胃の経絡が主となります。ここで朝食をとることが、最も理にかなっています。
巳(み)の刻は午前9時から11時まで。脾臓の経絡が主となります。食べたものを消化して栄養にする時間です。
正午の前後が午(うま)の刻で、午前11時から午後1時まで。心(心臓)の経絡が主となります。1日の陽気が最も盛んな時間です。
健康維持も「天人合一」から
さて、こうした五臓六腑の経脈の運行に順応するために、現代に生きる私たちが、できるだけ「生物時計」に基づいて行動することです。
ただし、生物時計という言い方は、西洋医学からの概念です。
漢方医学において、それは人間が本来もつ機能であり、特に「生物時計」などと呼ばなくても、生まれつき定められているものです。1日のうちで、いつ細胞の修復が始まり、いつ肝臓が働き始めるかなどは、すべて対応する時点があるのです。
人間の場合、生物時計は「体内時計」という言い方もされます。
いずれにしても、その根底にあるのは漢方医学の最も基礎的な理論、つまり「天と人間は本来的に合一性をもつ」という「天人合一」の思想です。
そもそも人が病気になるのは、なぜでしょうか。
それは例えば良くない生活習慣など、自身の行動に起因する何らかの原因によって、人体の運行メカニズムに狂いが生じたからです。
治療のために西洋医学の病院で注射するにしても、手術をするにしても、それは人体の最も基本的な規律を回復して、病気を根治させなければ意味がありません。その際、病気の根本的な原因が何であるかを、見極める必要があります。
「天に反する機器」の弊害
今では、インターネット中毒やスマホ病などという言葉が、ほとんど病名のように使われています。
それらは実際に貴重な睡眠時間を奪うだけでなく、あらゆる方向から人体に悪影響を与えているのです。特に懸念されるのは、以下の4点です。
1、輻射(放射)障害
輻射(放射)障害とは、スマホやパソコン等の端末機器から絶えず放出される電磁波などの物質が、人の健康に悪影響を及ぼすことを言います。
ある実験によると、端末機器が置かれた部屋で眠る子供と、 端末機器が置かれていない部屋で眠る子供を比較した場合、 後者の子供のほうが良質で深い睡眠がとれていることが判明しました。
2、大脳の退化
現代では、多くの情報はインターネット上から直接入手できます。
それは確かに便利で手軽な手段です。しかし、いつしかその便利さが仇となって、長期的には脳の退化を招き、思考力が衰え、記憶力も低下することが懸念されます。
3、社会的障壁
人と人が社会的関係をもつことは人間の本能であり、人間の要求でもあります。
仮に、1人を社会から隔絶させ、他人に会わせず、言葉も交わせない環境に置いた場合、その人は精神異常を起こすかもしれません。
社交とは、目や表情、声のトーンなど、全体を通じた豊かなコミュニケーションです。ソーシャルメディア上の、いわゆる「交流」とは全く異なるものです。
長時間スマホ漬けになっていながら、実は人と本当のコミュニケーションがとれていないとすれば、そこに見えざる障壁があることの危険性を知るべきでしょう。
4、運動量の減少
ネット中毒になった人は、人間の自然な運動量が確実に減少しています。
その悪影響は不快な病状となって現れ、目まい、頭痛、視力低下、腰や背中が痛い、にきびや肌荒れ、顔色が悪い、精神的な不安や孤独感などがあります。
夜は適時にスマホ操作を止める
薬物中毒やアルコール中毒は、ごく一部の人に限られています。
しかし、インターネット中毒やスマホ病は、すでに非常に多くの人に見られる現象となってしまいました。
特に子供のなかには、言語の発達が十分でないうちから画面操作をする子もいます。
そのことが、子供の体の健康、情操の発達、脳の成長にマイナスの影響をもたらす可能性があるとすれば、この現状に対し、私たちは重大な関心をもつべきではないでしょうか。
漢方医学の立場から言えば、インターネット中毒やスマホ漬けの生活は、明らかに養生の敵です。
この道理をご理解いただいた上で、夜は適時にスマホ操作をやめ、良質の睡眠を保つことで、明日への活力を十分に補っていただきたいと願っています。
(文・慧聊養生/翻訳編集・鳥飼聡)