オミクロン株の変異種であるBA.2は、その病原性および感染力において、格段に強くなっています。(Shutterstock)

董宇紅博士が語るオミクロン株「更なる変異種が出現している!」

オミクロン株は、まるで通常の風邪のように、その病原性が低下しているため「もはや脅威ではない」と思われているかもしれません。

しかし、オミクロン株は、すでに初期の単独ウイルス株であるBA.1から、「兄弟株」とも言えるサブ変種に発展しています。

最近の日本の研究は、そのサブ変種の一つである「BA.2」に対して、更なる警戒を引き起こしました。そのBA.2とは、どれほどの脅威なのでしょうか。

サブ変種「BA .2」の出現

もともとオミクロン株は、単一の変種ではなく、いくつかのサブ変種を含んでいます。

私たちが現在よく耳にするオミクロン株は「BA .1」と呼ばれています。オミクロン株が世界中に感染拡大した後、すぐにその新しい亜変種であるBA.2が出現して流行し始めました。そして現在、BA .2は、BA .1とは明らかに異なるウイルスに発展しているのです。

下の図の左側はオミクロン株ウイルスの「家族関係」の変遷図です。これを見ると、BA.1とBA.2の差が大きいことが分かります。右側はBA.1およびBA.2が登場する時期を表したもので、BA.2が登場したのは2021年10月頃でした。

オミクロン株のサブ変種であるBA.2 とBA.1。(健康1+1)

BA .2は「病原性が強い」

両者とも、同じオミクロン株という同根から生まれた兄弟ですが、BA.2は、BA.1とは明らかに異なっています。

今年2月15日、日本の東京大学の研究者は、BA.2に関する最新の実験室研究を発表しました。それによると、BA.2の病原性、感染力、およびそれに対するワクチンの予防効果などには、BA.1のケースと比較して「明らかな変化」が生じていると言います。

その要点を、以下に挙げます。

 

1、感染力が強い

オミクロン株は、それが登場して以来、デルタ株の半分以下の短期間で世界の97%を占めるほどになり、その伝播速度の速さは驚異的なものがありました。

ところが BA.2の感染力は、BA .1よりも更に強力かつ速いことが指摘されています。現在のところ「BA.2の感染力はBA .1の1.4倍に相当する」と見られています。

 

オミクロン株の変異種BA.2 およびBA.1の繁殖速度。(健康1+1)

2、病原性が高い

動物研究によると、BA .2に感染したハムスターは、体重減少、機能、血中酸素飽和度などの各指標が悪化するなど、症状がより深刻であることが分かりました。

更に進んだ研究では、BA .2は主に呼吸器の位置より下の組織に浸潤するため、ウイルス感染後の3日目に肺のBA .2ウイルス量はピークに達し、それはBA.1のケースより明らかに高いと言います。

これに対し、BA .1の主な浸潤は比較的上の部位であり、気管支のウイルス量についてはBA .2より多いことが分かっています。

オミクロン株の変異種BA.2 およびBA.1の病原性。(健康1+1)

3、ワクチン効果は低下

モデルナ社およびアストラゼネカ社のワクチンを接種した後、できた抗体が、オミクロン株BA .1の感染から人体を護る確率は明らかに低下しました。

BA .2に関して、この2社のワクチンの感染予防効果は、さらに低下すると考えられます。そのため、たとえワクチンを複数回接種した人でも、BA.2に感染する可能性は依然としてあります。

オミクロン株の変異種BA.2 およびBA.1に対するワクチン効果。(健康1+1)

 

4、治療薬の効果も低下

現在、最も一般的な治療薬の1つが「モノクローナル抗体薬」です。

この治療薬は、ウイルス粒子を中和することで感染後の重症化を防止し、症状の軽減を目指すものです。

しかし変異種BA.2に関しては、モノクローナル抗体薬の効果も大幅に低下すると見られています。

BA.2は、モノクローナル抗体であるカシリビマブとイムデビマブには、ほぼ完全な耐性をもち、ソトロビマブに対しては、その耐薬性は35倍となっています。したがって、BA.2に感染した場合、これらの抗体薬の治療効果は著しく低下します。

 

オミクロン株の変異種BA.2 およびBA.1の治療薬効果。(健康1+1)

 

5、自然感染者のBA .2に対する免疫力の低下

新型コロナウイルスに(ワクチン接種せずに)自然感染した経験がある人でも、BA.2に感染する可能性はあります。

パンデミック初期のウイルスであるアルファ株やデルタ株に感染経験があり、その後回復した人も、BA.2に対しては保護力(免疫力)が著しく低下しています。そのため、再度感染する可能性は否定できません。

BA.1に感染した患者はBA.2に対する保護性は良好であると見られますが、動物実験では保護性が低く、両者のデータに矛盾があります。したがって、この疑問に答えるにはさらなる研究が必要になります。

オミクロン株の変異種BA.2 およびBA.1の自然感染の保護力。(健康1+1)

日本からの提言「新株と認定すべき」

BA .2について、日本の学者から「新しいギリシャ文字を当てるべきだ」という提言がなされています。つまり、新株と認定すべきであるというご意見です。

確かに、これほど大きな変化が起きているBA.2を、まだ「オミクロン株の変異種」と呼べるのでしょうか。

日本の学者は、「もはやBA.1と著しく異なる特徴を有しているBA.2に、新しいギリシャ文字を付与すべき」と述べ、それを今後徹底的に監視しなければならないと提案しています。

BA.2は「見えないオミクロン株」と呼ばれ、専用の検査方法の確立が、早急に求められています。BA.1に比べて感染力が強く、病原性も高いBA.2は、近い将来、世界における健康の重大問題になる可能性があると、日本の学者は警告します。

WHOによる毎週の疫学報告によると、BA .2は2月22日までに、18の国ですでに「主導的地位」を占めていると言います。それには東南アジア、欧州の各国、香港などが含まれます。

研究者にとっては、ウイルスが変異を重ねている様態を、順次察知することは重要です。

しかし、私たちが元来もつ自然免疫力を見直し、これを強化することも一層重要なのです。

人間の免疫システムには「ウイルスと戦う能力」があります。

人間がこの能力を絶えず維持し、改善し、強化することができるならば、私たちの体は、変異するウイルス以上に絶えず変化発展することができ、外部ウイルスの侵入を簡単に許すことはないでしょう。

(口述・董宇紅/翻訳編集・鳥飼聡)

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