鮮やかな花をさしてある花瓶、彩の貝殻、きれいに磨かれた豪華な食器……この優雅で古典的な静物画は、17世紀では、ヨーロッパの富裕層の家に良く見られるコレクションであり、当時、最もポピュラーな絵画の一つでした。
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しかし、この絵画に隠されたトリックに皆さん、お気づきでしょうか。
実は、画家の自画像があるのです!一番右側の食器にあるいくつもの丸い部分にパレットと絵筆を持ったミニ自画像が描かれているのが分かりますか?大小さまざま、形もさまざまで、背後の窓ガラスまであり、まさに実際に球状の面に映った時の姿そのままに、そして、些細なところまで描かれています。
実はこれは、17世紀フランドルの画家クララ・ペーテルス(Clara Peeters,1607—1621)の独特のサインなのです。彼女の名前について聞きなれない方がほとんどでしょう。実際、彼女は美術の歴史の流れの中でほとんど忘れ去られ、どの史料にも彼女に関する文献や記載はあまり載っていないのです。
現在分かっているのは、ペーテルスは13歳の時に、大作を完成させ、それ以降、本格的に絵画の道を歩み始めたことくらいです。ペーテルスは静物画を得意とし、精確かつ繊細な画風で知られ、彼女が描いたものは、実物ではないかと見る者に勘違いさせるほどリアリティに満ち溢れています。
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ペーテルスのサインはこの絵だけに限りません。良く見ると、水差しやゴブレットなど、ほぼすべての作品に彼女独自のサインが隠されています。次から次へと鬼ごっこ気分で愉快に芸術鑑賞できるのは、もしかすると、ペーテルスの作品だけではないでしょうか。
(翻訳編集・天野秀)
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