歯磨きとは別に、毎日デンタルフロスも使うととても良いです。しかし、フロスが歯に良いかどうかについては議論があり、一部の研究ではフロスの中に発がん性物質が含まれていることが判明しています。結局フロスはしたほうがいいのか、それともしないほうが良いのでしょうか?
フロスの3大効果:食べ物のカスや歯垢を除去する
多くの研究により、口腔疾患は多くの慢性疾患と強く関連していることが示されています。例えば、重度の虫歯(う蝕)を持つ人は冠動脈疾患の発症率が高く、歯周病の人は一般人に比べて認知症の発症率が高く、歯周病は心疾患や糖尿病とも密接な関係があると言われています。
例えば歯周病は、歯垢や歯石を除去することで骨の損傷や歯肉の炎症を抑制し、歯と歯肉を健康に保つことで予防できます。歯磨きとは別に、フロスも重要な予防策です。
フロスの効果として以下の3つの効果が挙げられます。
1.歯と歯の間の食べかすを除去
歯ブラシや爪楊枝ではなかなか取れない、歯と歯の間に詰まった食べカスを取り除くには、フロスが最も効果的です。
フロスは歯と歯の間の狭い隙間に入り込みやすいので、歯垢や柔らかい歯石も含めて食べカスを取り除くのにはフロスが最も効果的なのです。
2.徹底的に歯垢を除去
歯と歯の間の歯垢や歯石を除去しないと、虫歯や歯石の原因となり、歯ぐきの炎症につながります。フロスは、歯と歯の隙間の「掃除屋さん」にもなるのです。
2015年に『臨床歯周病学雑誌』(Journal of Clinical Periodontology)に掲載された文献レビューでは、歯磨きでは約42%の歯垢しか除去できません。電動歯ブラシでは46%と少し優れていることが示されています。
2019年の『カオキョウブルーシステムオムニバスデータベース』のレビューでは、フロスを使用した合計582人の被験者を対象とした12の臨床試験を分析し、フロスがさらに4%から7%の歯垢を除去するのに役立つことがわかりました。
3.歯肉炎の予防・改善
また、2019年の研究では、歯磨きとフロスをどちらもした場合は、歯磨きだけよりも軽度の歯周病や歯肉炎を有意に減少させることが判明しました。
フロスが口内の健康に良いとはいえ、懸念や論争もあります。
フロスの論争その1:フロスを使うと歯の隙間が大きくなるのでは?
フロスを出し入れすることで、歯の間が緩んでしまうのではないかと心配される方もいると思いますが、実はこれは余計な心配なのです。なぜなら正常な歯と歯の隙間は、平らなフロスが通れるほどの隙間は元々あるからです。
もし、隙間が広がってきたと感じたら、フロスが正しく使えているか、歯茎を傷つけていないかなどを確認し、歯茎の後退がないかどうか、医療機関を受診することをお勧めします。
フロスの論争その2:フロスには発がん性物質が含まれている?
2019年の『曝露科学と環境疫学』雑誌に、フロスが体内のPFAS(Perfluoroalkyls Substances)濃度の上昇につながる可能性を示唆する研究結果が発表されました。
PFASは油や水に強い合成化学物質で、そのため家庭や産業プロセスで広く使用されています。 例えば、デンタルフロス、ノンスティックフライパン、食品包装紙、カーペット、家具、繊維製品などです。
PFASには、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)などの物質が含まれています。また、テフロン素材の製造には、PFOAやPFOSを補酵素として添加する必要があるため、その量が多いのです。
PFASは分解されにくく、生物蓄積性・難分解性が高く、体内に入ると長期間にわたって構造変化しません。水や土壌、そしてほとんどすべてのアメリカ人の体内から検出されています。
PFOAは、国際がん研究機関(IARC)により、ヒトに対する発がん性物質としてグループ2Bに分類されています。いくつかの研究により、PFOAとPFOSの暴露が人体に異なる影響を及ぼす可能性があることがわかりました。成人は腎臓がんや精巣がん、潰瘍性大腸炎、甲状腺疾患のリスクが高く、PFOAは子どもの性ホルモンと成長ホルモンの減少にも関連しています。
そのため、上記の研究でフロスが体内のPFASの増加につながる可能性が示唆されたことで、懸念が生じました。
研究者たちは、178人の中年女性からアンケートと血液サンプルを採取しました。その結果、Oral-B Glideで定期的にフロスをする女性は、フロスをしない女性に比べて、血中PFHxS濃度が24.9%高いことがわかりました。
また、18種類のフロスのうち6種類にフッ素が含まれていることが判明しました。このうち、3つはオーラルシリーズ、2つは他のフロスブランドのものでした。その結果、フッ素が検出されたフロスは、テフロンが含まれている可能性が高いと結論づけられました。
しかし、この知見を検証するためには、例えば、フロスに含まれるPFASが唾液に移行しやすいかどうかなど、より多くのデータが必要であるとも述べています。
では、テフロンフロスを使っている人、または使ったことのある人はどうすればいいのでしょうか?
この点について、悅庭口腔医療グループ国際医療事務局長である王巍穆氏は、テフロンを含むフロスからPFASが放出されるという直接的な証拠は既知の研究からは得られず、フロスからのPFASが体内に移行するという証拠もない。従って、現在テフロン製のフロスをご使用の方は、ご安心ください。と述べました。
もちろん、迷っている人は、PFASを含まないフロスを使うという選択肢もあります。
デンタルフロスの正しい選び方、使い方とは?
市販のデンタルフロスは、簡単に言うと「ワックスド・フロス」と「アンワックスド・フロス」に分けられます。
ワックス入りのフロスは、フロスをより滑らかにするために使用されます。王巍穆氏は、どのタイプのフロスを使用しても歯の清掃に効果的であると指摘します。
また、ワックスフロスは表面が滑らかで歯の隙間を通りやすいので、初心者や隙間の狭い人に向いていると付け加えて述べました。
2018年の『歯周病学雑誌』(Journal of Periodontology)誌の研究によると、フロスの後に歯磨きを行う方が、歯磨きの後にフロスを行うよりも歯垢除去の効果が高いことがわかりました。
また、歯を清潔に保つ為には、お菓子や炭酸飲料、歯にくっつきやすい食べ物の摂取を控えることも大切です。
(翻訳:香原咲)
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