ハナショウブ(大紀元)

【花ごよみ】ハナショウブ

紫(むらさき)という色を日本人は好む。

「むらさき」とは、花が「群れて咲く」様子から生まれた和語である。その白い花の根を染めものに利用したことから、布の染め色を紫(むらさき)と呼ぶようになったらしい。

『万葉集』で、額田王(ぬかたのおおきみ)が詠った「あかねさす紫野行き標野行き野守は見ずや君が袖振る」が知られている。この場面での「紫野」とは御料地で、そこには番人の「野守」がいる。

ということは、この紫は、宮中で最も高貴な人物の衣服に使われたものであるらしい。日本人の紫色好みは、このような飛鳥時代以前から始まったと考えてよいが、一般の民衆レベルまで普及したのは、やはり江戸時代に至ってからである。

江戸時代に発展した庶民文化のうち、園芸はその代表の1つである。武士や町人の嗜みとして、隠居した老翁が菊や牡丹などを大事に育てることが盛んに行われた。なかでも、ハナショウブの品種改良が進んだことは、江戸時代の輝かしい「業績」と言えるかもしれない。

江戸後期の旗本、松平定朝(1773~1856)は約60年にわたってハナショウブの改良に打ち込んだ。その自作の品種は300種にちかいという。なかでも「宇宙(うちゅう)」という品種は、定朝が手掛けた逸品として知られている。

『伊勢物語』以来、カキツバタを好んできた日本人の嗜好は、江戸時代を境にハナショウブに取って代わられた。深みのある江戸紫は、ハナショウブの色でもある。

 

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