同報告書表紙。(スクリーンショット)

FRBの経済学者、中国で4回拘束=米議会委員会報告書

中国による米国の情報の不正取得は、科学技術の分野を超え、中央銀行に当たる連邦準備銀行(FRB)にまで及んでいることがわかった。 米上院の国土安全保障・政府問題委員会は7月26日、FRB所属のエコノミストが中国滞在中に当局に複数回拘束され、経済機密情報の提供などを強要されたとして、5つの事案に関する報告書を公開した。

同報告書は、中国当局はFRBの幹部を懐柔するため、脅迫のほか、中国の大学や研究施設への招へい、共同研究の機会など硬軟織り交ぜた手口を駆使しているという。

報告書は、中国当局の目的は「米国の経済・金融政策の機密情報を得るためだ」としている。

標的となった幹部らは全員、米国の「連邦公開市場委員会(FOMC)」の機密情報にアクセスできるという共通点を持っていると報告書は指摘した。

報告書は、FRBの高官であるエコノミストのA氏の事例を取り上げた。A氏はFOMCへのアクセス権限を持ち、中国人民銀行(PBOC、中央銀行)を含むさまざまな中国の機関と繋がりを持つ。

報告書によると、A氏は海外のハイレベル人材を招致する中国当局の「千人計画」に選ばれ、複数の大学や公的研究機関で客員教授、研究責任者として採用された。

A氏は2019年まで自由に中国を出入りしていたが、ある時上海を旅行した際に4回当局に身柄を拘束された。

A氏は帰国後、拘束されたことをFRBに報告した。 中国当局者はA氏の家族を脅迫し、A氏の電話やパソコンを盗聴・監視し、同氏のWeChatアカウントから他のFRB関係者の連絡先を不正入手したという。

1回目の拘留中、2人の当局者がA氏の電話をずっと盗聴していた。「中国に有利なことを発信しなさい」と強請したという。

中国側はA氏に、中国の国家安全保障情報にアクセスできること、情報を漏えいする場合「相応の処罰を受け入れる」ことを了承する文書への署名を強制したという。

その後の2回の拘束では、当局はA氏に対し、中国での一連の出来事を家族に漏らさないこと、違反する場合は投獄されて彼の人生は「破壊されてしまう」といった内容の文書への署名を押しつけようとした。

中国当局はA氏に対し、FRBのエコノミストとしてアクセスできる機密・非公開の経済データを中国政府に共有することを命じ、「貿易関税やFOMC情報など、敏感な経済問題について中国政府高官にアドバイスすること」を指示したという。

最後の強制面談では、中国側はA氏に今後の定期的な面会を要求し、「中国と世界経済に関する経済的なアドバイスを提供する」ことを求めた。

FRBは米連邦捜査局(FBI)と国務省にこの件を通報し、FBIがA氏に事情聴取を行った。

2019年7月18日、FRBは傘下のエコノミストに対して中国への渡航中止勧告を発した。

 

(叶子静)

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