メリーランド州にある風力発電と石炭採掘場、2022年8月撮影 (Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

再生可能エネルギー開発で節税する米銀行

米政府は長年にわたり、再生可能エネルギー(以下、再エネ)開発へのインセンティブとして税額控除を用いてきた。そして銀行業界は、その恩恵を大いに享受している。再エネのタックス・エクイティの市場規模は、大手銀行にとって昨年時点で200億ドルに達した。さらにバイデン大統領の「ビルド・バック・ベター法」には、クリーンエネルギーの刺激策として5500億ドルが盛り込まれた。銀行業界にとって朗報だ。

タックス・エクイティとは、言ってみれば節税目的の投資だ。資金を求める開発事業者の多くには、十分な課税所得がない。従って、開発へのインセンティブとされた税額控除の恩恵を受けることができない。そこで課税所得が潤沢で、グリーンエネルギーという時流に乗ろうとする投資家から出資を受け、開発事業者は資金を確保する。いっぽう、投資家はその税額控除の恩恵を享受するのだ。

こうした投資家の大半は、銀行業界が占めている。2020年から2021年にかけて、タックス・エクイティ市場の50%以上がJPモルガンとバンク・オブ・アメリカという2つの銀行によってコントロールされていた。その他に大規模な投資を行っているのは、ウェルズ・ファーゴやU.S.バンクそしてクレディ・スイスなどである。

ミラー&カンパニーのマネージングパートナーで公認会計士のポール・ミラー氏は「映画産業と同様に、開発事業にも資金を供給する銀行が必要だ」という。数十億ドルの費用がかかるため、銀行の関わりなしで開発は困難だと指摘する。「あなたが投資家なら、この節税の恩恵を受けられるだろう。億万長者がこうした投資をするのはそのためだ。税制優遇措置に関して言えば、グリーンエネルギーに参入しようとする新しい企業は通常、建設にあたって金銭的な負担を負わないのだ」

企業や投資家に税額控除のアドバイスを行うチェリー・ツリー・グループのウォレン・キルシェンバウムCEOが大紀元に語ったところによると、米国の税額控除は、税法上のハードルからすべて大口納税者向けとなっているという。同氏は、個人や信託、非公開企業が、メジャーな金融関係者のように税額控除の恩恵を受けられるよう支援する専門家だ。

キルシェンバウム氏によると、たいてい銀行は投資家として、低所得者向け住宅ローンや歴史的建造物の税額控除をまず購入する。しかし、再エネ税額控除は課税単年度で請求できるため、近年は人気の投資対象となっている。低所得者向け住宅税額控除は10年、歴史的建造物の税額控除は5年である。太陽光発電の加速償却あるいはボーナス償却は、最初の1、2年で多額の減価償却費を計上できるため、納税者にとって非常に有利だという。

また同氏によれば、大口の納税者は、日常的に利用可能な税額控除の大部分を利用しているいっぽう、納税額の少ない企業が適格となって控除を利用するのは難しいという。

こうした税額控除について、多くの専門家が「大手銀行はグリーンエネルギー優遇措置という形で、意図せずしてタックスシェルターを提供されている」と主張している。

しかし、タックス・エクイティ投資会社フォス&カンパニーの再エネ・サステイナブル技術の担当ディレクターであるブライエン・ アルペリン氏の見方は異なる。同氏が大紀元に述べたところでは、「(政府は)税収で再エネ事業に現金で助成金を出すよりも、納税者が再エネ事業に直接投資する方が効率的と判断している」

助成金であろうと税額控除であろうと、再エネの恩恵を受ける納税者によって負担されていることに変わりはなく、税額控除の場合はその使い道を納税者がコントロールするようになっただけだと同氏は述べている。

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