【有識者に聞く】内閣府中国企業ロゴ問題の本質 スパイよりタチが悪い「使える愚か者」とは

2024/04/29 更新: 2024/04/28

内閣府への提出資料に中国国営企業のロゴが入っていた問題は、国会とネット世論をどよめかせた。「中国共産党の浸透だ」とする論調に対し、有識者はむしろ「『使える愚か者(Useful ideot)』が日本の政策決定に関わっていることこそ問題だ」と指摘する。

「中国(共産党)が別に命令しなくても、中国の望むことしか言わない日本人がすごく多い。いわゆる『使える愚か者』だ。そういう人たちが政策決定に影響力を持ってしまっている。それが実はすごく問題だ」

キヤノングローバル戦略研究所の研究主幹で、環境・エネルギー分野に詳しい杉山大志氏は大紀元の取材に対し、こう語った。「使える愚か者」とは、かつて共産主義者レーニンが用いた言葉で、自由主義国家で無意識に共産主義者を利する言動を取る者を指す。

環境運動家の多くは、既存のエネルギー政策を否定し、再生可能エネルギーを推進する傾向にある。なかには、反資本主義・反自由主義的思想を持つ者もいるという。

「今の社会が気に入らなくて変えなければいけないという人たちは、自由主義・資本主義社会を嫌っている。嫌うと行き着く先は、共産主義になりやすい」と杉山氏は分析する。そのような思想は、やがて中国共産党の主張と共鳴するようになる。

杉山氏は「環境運動家の多くは、とにかく今の先進国の資本主義が問題の根源だと考えている。そのため、『途上国の代表』を装う中国(共産党)に非常に融和的になる」と指摘する。そのため、再エネ推進に熱心な欧米の環境運動家は「中国(共産党)による工作がなくても、結果的に中国(共産党)に都合がいい」動きをするのだという。

杉山氏は、環境問題における国連の問題点も指摘した。「気候変動に関して国連のやっていることは全くダメだ。2050年のCO2排出量ゼロは非現実的で、経済を崩壊させかねない」と断じた。さらに、日本はパリ協定から離脱すべきだと提言した。「アメリカと日本が抜ければ、協定は事実上空文化する。それは日本のためにも、経済的自滅の危機に瀕するヨーロッパのためにもなる」。

このような環境政策が実行される背景には、菅政権以降の自民党の左傾化・リベラル化があると杉山氏は指摘する。官邸や官僚の立場は弱体化し、かつては脱炭素政策に抵抗していた経済産業省も、今や推進派に回って巨額の利権を得ているという。

こうした動きは、中国共産党の戦略とも合致する。多数決原理の国連では、独裁国家や人権抑圧国家が「多数者の専制」を行うことがある。杉山氏は「中国(共産党)は戦略的に国連のポストを狙っている。『途上国の代表』を装うことで、環境運動家らの支持を得ているのだ」と見る。

エネルギー政策の歪みは、日本の国益を損ねかねない。バイデン政権との間で交わされた「グリーントランスフォーメーション」協定の名の下で、今後10年で150兆円もの資金が国庫から支払われる。これは防衛費をはるかに上回る規模だ。「官僚機構は一度肥大化すると、方向転換できない。政治家による是正が必要だ」と杉山氏は訴える。

来年の米国大統領選では、共和党のトランプ氏の復活も予想される。「米国の政権が代われば、エネルギー政策は180度転換する。日本もバイデン政権に合わせる必要はない」と杉山氏は述べた。

昨今の世界情勢を鑑みれば、中国共産党の影響力を排除しつつ、自由主義陣営の結束を強化させ、日本の安全保障と経済成長に資するエネルギー政策を確立することが急務だ。「エネルギードミナンス」の理念の下、脱炭素一辺倒ではない、真に国益に適った舵取りが今こそ求められている。

日本の安全保障、外交、中国の浸透工作について執筆しています。共著書に『中国臓器移植の真実』(集広舎)。
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