米国防長官や軍人らと会談するバイデン大統領。会談後、中国に対する軍事的優位性を維持すると発言した(Photo by SAUL LOEB/AFP via Getty Images)

中共こそ真の敵…中間選挙の結果は米国の対中政策を左右せず=専門家

米国では中間選挙の開票作業が続き、共和・民主両党の接戦が繰り広げられている。下院を失えばバイデン政権にとっては痛手となるが、共和党のマッカーシー院内総務が超党派の「中国委員会」を提案するなど、対中問題では統一した政策が期待されている。

台湾の2人の専門家は大紀元の取材に対し、米国政府は中国共産党の脅威を認識しており、選挙結果が米国の対中政策を左右することはないとの見方を示した。

共和・民主両党、対中共で結束感示す

台湾・政治大学国際関係研究センターの宋国誠氏は8日、大紀元の取材に対し、民主党と共和党は国内政策において大きな対立はあるものの、対中政策では史上稀に見るほど見解が一致していると述べた。そして「中間選挙で議席数が変わっても、対中政策が変わることはないだろう」と語った。

中国共産党の第20回大会では、目立った政治的成果のない人物が最高指導部に抜擢されるなど、習氏による独裁体制が固まった。宋国誠氏は、こうしたやり方は民主主義諸国にとっては考えられないもので、米国の民主の価値観とも相容れないものであると指摘した。権力の一極集中が進むにつれて独裁的な性格がさらに強まり、2024年の大統領選では民主・共和のいずれが政権を掌握しても、対中強硬の方針に変更はないだろうと推測する。

米国の核戦略にも変化はあると宋国誠氏は指摘する。米国は10月末に発表した「核態勢見直し(NPR)」において、核兵器の先制不使用を断念し、同盟国に対し拡大抑止を提供することを約束した。中国を「最重要な戦略的競争相手」と位置づけ、その戦略ミサイル基地を公表した。

台湾の防衛に対する米国の決心は今まで以上に固く、明確なものになっている。北朝鮮に対しては、米国とその同盟国に核攻撃を行えば「政権の終焉につながるだろう」と強く牽制した。

「これは中国共産党に対しても同じことが言える」と宋国誠氏。「習近平が台湾侵攻を決行した場合、金正恩氏への姿勢と同様に、米国が習近平政権を終わらせることができるだろう」。

真の敵に気づいた米国

台湾・政治大学国家発展研究所の李酉潭教授は8日の取材で、米国は中国共産党こそ諸悪の根源であると気づいたと語った。「9.11」同時多発テロによって米国は対テロ戦争に専念しなければならず、中国共産党とは妥協せざるを得なかった。そして中共はこの機に台頭した。

李氏は、米国が中国の戦略ミサイル部隊の詳細を公表したことや、核態勢見直しで先制不使用を断念したこと、半導体の供給で制限を設けたことを挙げ、一連の動きから米国への信頼感を覚えたと述べた。そして、独裁政権が崩壊しなければ、世界は安定しないとの考えを示した。

「米中対立というより、自由・民主主義と権威主義体制の正面衝突が避けられない段階に来ていると言えるだろう。こうした状況下では、中間選挙の結果がどうなろうと、2024年に誰が大統領になろうと、対中強硬の趨勢は継続することになる」。

米国はロシアのウクライナ侵攻以降、中国共産党こそが本質的な邪悪勢力であり、ロシアを陰で支える黒幕だと認識した。成熟した二大政党制のもと、共和・民主両党は激しい政争を繰り広げるなかでも、対中政策については党派を超えて確固たる姿勢を堅持していくと李氏は見ている。

「ポンペオ前国務長官の中国政策顧問を務めたマイルズ・ユー(余茂春、Miles Yu)氏でさえバイデン政権の政策を批判していない。対中政策において両党が一致している証だ」。

習近平3期目、米中関係に改善の余地なし

先月閉幕した共産党大会で、習近平体制の3期目が発足した。トランプ政権時代の米中貿易摩擦を経験した高官は軒並み一線を退き、代わりに習氏の側近が経済の舵取りを行うこととなった。

米国の留学経験を持つ劉鶴副総理や、ウォール街と親密なコンタクトのある王岐山国家副主席は担当を外れた。いっぽう、上海で厳格なゼロコロナ政策を実施した習氏の側近・李強氏が首相候補となり、強硬な外交を率いてきた外交部長の王毅氏は政治局入りを果たした。次期国防部長として目されている装備発展部長の李尚福氏は、ロシアとの武器取引に関与した経験から米国の制裁対象となっている。

宋国誠氏は、米中対立は今後さらに激化すると指摘した。先日の党大会で、政治局から中央軍事委員会に至る最高指導部で穏健派が跡形もなく「殲滅」され、タカ派のみが残ったからだという。

「米国に制裁されている人物を国防部長に任命しようものならば、その非友好的な意図は火を見るよりも明らかだ。王毅氏の政治局入りと秦剛駐米大使の中央委員会入りは、米国に対する戦狼外交の継続を意味する。全体的に、習氏は米国との対立・競争を望んでおり、今後の米中関係は悪くなる一方だろう」。

(翻訳編集・王天雨、Wenliang Wang)

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