イベルメクチンで超過死亡が74%減、集中的に使用されたペルーで:新研究

今月8日に査読付きジャーナル「Cureus」に掲載された研究論文から、新型コロナウイルス感染症に対するイベルメクチンの有効性を示すエビデンスが得られました。

論文によると、ペルー政府が新型コロナのパンデミック期間中にイベルメクチンの使用を認可した際の自然実験から、同薬品に超過死亡を低減させる効果があることが分かったといいます。超過死亡とは、死者数が平年に比べてどれほど増減したか示す指標です。

イベルメクチンはかねてより寄生虫症に対する安価な治療薬として広く知られていますが、科学者らは、この薬が感染症を引き起こすウイルス「SARS-CoV-2」のスパイクタンパク質に結合し、罹患率と感染力を抑えると考えています。

今回の新たな生態学的研究によって、イベルメクチンが最も集中的に使用されたペルーの10州で、パンデミック期間中の死者数のピーク後30日間に超過死亡数が74%減少していたことが明らかになりました。研究者らは、ペルーの全25州にわたるデータを分析し、こうした超過死亡数の減少が、2020年の4か月間における同薬品の使用と密接に相関していることを発見しました。

また、イベルメクチンの使用制限がなかった期間にペルー全土での超過死亡数は14分の1にまで減少しましたが、政府による使用制限が始まると、2か月で超過死亡数が13倍に増加しました。この調査結果は、世界保健機関(WHO)のサマリーデータと一致しています。

使用制限へと舵を切ったペルー政府

新型コロナワクチンの接種が義務付けられる以前は、ペルーも他の多くの国と同様に、ロックダウンや治療薬などの緩和政策によって、感染症の原因となるウイルスの制御を試みました。

2020年5月8日、ペルー保健省はイベルメクチンの使用を広く承認し、全25州がそれぞれの規模・期間でイベルメクチンによる入院・外来治療を実施することになりました。さらにペルー政府は、国防省主導の国家プログラム「Mega-Operación Tayta(MOT)」を通じて、イベルメクチンの大規模配布を開始しました。

MOTは、他の11の政府機関との協力を通じて救急対応チームをあらゆる対象地域に派遣し、新型コロナの症例検出、イベルメクチンの投与、食料供給を行うとともに、患者が15日間の隔離に入れるようにすることを目指しました。その直後、MOTは、新型コロナの検査結果や症状の有無に関係なく、高リスクと判定された全員にイベルメクチンの配布を開始しました。

研究者が超過死亡を計算できたのは、ペルー政府が国民健康データベースを通じて、毎日の新型コロナによる死者数と全死因による死者数を独自に追跡したからでした。さらに、死者数やその他の公衆衛生上のパラメーターを探るための広範囲に及ぶデータ追跡によって、パンデミック時のイベルメクチンなどによる介入の潜在的な有効性が分析可能になりました。

2020年11月17日にフランシスコ・サガスティ大統領が就任すると、ペルー政府はイベルメクチンの配布を停止しました。処方箋によってのみ入手可能となったことで、イベルメクチンは格段と入手困難になりました。

研究者らは、この制限措置の実施前後で、毎日の全死因の超過死亡数が全国的に変化していたことを確認しました。

超過死亡に対するイベルメクチンの影響

全死因の超過死亡数は、2020年1〜2月に記録された死亡総数を基準に計算されました。計算された期間中における月ごとの全死因死亡数の変動は平均値5.2%で、標準偏差は3.8%でした。2020年5月までに、総死亡者数は1〜2月に計算された基準値の2倍以上変動しました。

パンデミック第1波における超過死亡数のピーク日を確定するために、60歳以上の超過死亡数の分析が州ごとに実施されました。その結果、死者数のピーク日から30日および45日後までの超過死亡数の減少が確認されました。

次に、全25州をイベルメクチンの配布量によって最大・中位・最少にグループ分けしました。「最大」はMOTを通じた配布によるものでした。

その結果、MOTが実施された10州では超過死亡数がピーク値に達した後に急激に減少し、ピーク日から30日後には74%減少し、45日後には86%減少したことが示されました。地域的にイベルメクチンを投与した14の州では、超過死亡数がピーク日の30日後には53%、45日後には70%減少しました。

ペルーの首都であるリマでは、4月の第一波から4カ月遅れて8月からイベルメクチンによる治療が実施され、超過死亡数は死者数がピークとなった5月30日から30日後に25%、45日後に25%しか減少しませんでした。

この研究によると、死者数のピークから30日後の超過死亡数の平均減少率は、イベルメクチンの配布量が最大、中位、最小の州でそれぞれ74%、53%、25%でした。ピークから45日後の平均減少率は 86%、70%、25%でした。

研究者らは、イベルメクチンが新型コロナの予防と治療の両方に効果があるからこそ、リスクにさらされている集団に大規模に配布されたときにこのようなプラスの数値が得られたと指摘しました。

インド北部の州でも同様の結果

研究者らは、ペルーと同様にイベルメクチンの配布が行われたインド北部のウッタル・プラデーシュ州でも、同様の結果が得られたことに注目しました。

同州では政府チームが新型コロナの管理プログラムの一環として97,941の村を巡り、イベルメクチン、ドキシサイクリン、亜鉛、ビタミンCおよびD3、アセトアミノフェン錠剤を含む家庭用医薬品キットを配布しました。 

イベルメクチンの大量配布後、ウッタル・プラデーシュ州における新型コロナによる死者数は7日間平均で97%減少しました。研究によると、2021年7月7日から2023年4月1日までの人口100万人当たりの新型コロナによる累計死者数はウッタル・プラデーシュ州で4.3人だったのに対し、インド全土では70.4人、米国では1,596.3人でした。

ペルーのデータほど包括的ではないものの、ウッタル・プラデーシュ州のデータは、イベルメクチンが新型コロナを予防・治療できることを示唆しています。

研究者らは次のように結論づけました。

「人口3,300万人のペルーで実施されたイベルメクチンによる治療から得られた心強い結果と、人口2億2,900万人のインドのウッタル・プラデーシュ州での同様の前向きな兆しは、新型コロナウイルス感染症の治療および予防のために、必要に応じてイベルメクチンをさらに大規模に導入するための有望なモデルを示している」

研究者らは、2020年5月に課された社会的隔離措置の影響、SARS-CoV-2のさまざまな遺伝子構成、抗体検査における陽性率のばらつき、ペルーの全25州各地の人口密度など、研究結果に影響を与えうるイベルメクチン以外のファクターも検討しました。その上で、データの範囲と信頼性を鑑みるに、それらのファクターは研究結果に大きな影響を与えないと述べました。

政治学の背景を持つ弁護士兼調査ジャーナリスト。栄養学と運動科学の追加認定を取得した伝統的な自然療法医でもある。