2月21日、 対ロシア戦争が3年目に突入する中、ウクライナ軍の第59歩兵旅団は厳しい現実に直面している。写真は 写真は4日、ドネツク州の前線付近に立つウクライナ兵(2024年 ロイター/Alina Smutko)

焦点:消耗するウクライナ軍、兵力も弾薬も不足 ロシア軍の優位鮮明に

[クラマトルスク(ウクライナ) 21日 ロイター] – 対ロシア戦争が3年目に突入する中、ウクライナ軍の第59歩兵旅団は厳しい現実に直面している。戦うための兵力と弾薬が尽きつつあるのだ。

ある小隊長によると、開戦時に数千人規模だった旅団の兵員数は、死亡や負傷、老齢や病気による除隊が相次ぎ、残存しているのは60─70%と推定される。

ロシア軍の攻撃で多くの死傷者が出ている上、東部戦線は季節外れの気温上昇で凍土がぬかるみと化して兵士の健康を蝕み、事態は一段と悪化している。

旅団の中隊長は「天候は雨、雪、雨、雪の繰り返し。そのためインフルエンザや狭心症が広がっている。罹患した兵士は一時的に任務を離脱するが、その穴を埋めることができない。兵員不足はどこの部隊でも喫急の課題だ」と述べた。

ロシアのウクライナ侵攻から24日で丸2年。第一次世界大戦を彷彿とさせる塹壕を使った消耗戦と、何万台もの機器が投入されているハイテク無人機戦が組み合わさった今回の戦争は、現段階ではロシアが優位に立っている。

この数カ月に小規模な勝利を収めてきたロシア軍は先週末に東部ドネツク州のアブデーフカを制圧。この地域の防衛にあたっていたウクライナ第3特別強襲旅団の広報担当者は、ロシア軍が圧倒的に優勢で兵力比率は1対7だったと認めた。

ロイターはウクライナ東部と南部の1000キロに及ぶ前線のさまざまな区間で、歩兵部隊や無人機部隊、砲兵部隊の兵士や指揮官20人余りに話を聞いた。

ウクライナ軍の士気は依然として高い。しかしゼレンスキー大統領の要請にもかかわらず西側諸国からの軍事支援が鈍っているため、規模と補給能力で上回るロシア軍を食い止めるのは難しいという。

第59歩兵旅団の別の指揮官は、5人から7人のロシア部隊による執拗な攻撃について、襲撃は1日に最大10回に達し、「1つか2つの守備陣地が1日中こうした攻撃を防いでいると、兵士たちは疲弊してくる。兵器は壊れる。弾薬や兵器の補充ができなければどうなるのかは明らかだ」と語った。

ウクライナのハブリロフ国防次官はロイターの取材に書面で回答、ウクライナ側は大砲の弾薬とロケット弾の不足で守勢に立たされており、ロシアは幾つかの前線で攻撃を強める見通しだと述べた。「必要な軍事援助がさらに遅れるようなら、前線の状況はさらに困難になる可能性がある」と警戒する。

<兵士と弾薬が不足>

ウクライナ政府は戦費の多くを海外から提供される資金と装備に頼っている。しかし米国からの支援610億ドルの議会審議が難航している今は、外国頼みの実態が一段と露わになっている。

ロケット砲兵部隊の兵士によると、この兵士のロケットランチャーのロケット弾はウクライナの同盟国がほとんど保有していない、旧ソ連が設計したもので、現在の稼働率は30%程度だ。

戦闘が長引き、西側諸国が出荷ペースを維持できないため、砲弾も不足している。米国の供給が止まっているほか、欧州連合(EU)も3月までに100万発を供給するとの目標を半分近く達成できないと認めた。

米シンクタンク、カーネギー国際平和財団の上級研究員でロシア軍事専門家のマイケル・コフマン氏の推定では、ロシア軍の砲撃規模はウクライナの5倍に達する。「ウクライナは防衛上最低限必要な砲弾を手にしておらず、この状態を続けることは不可能だ」という。

ウクライナ政府関係者によると、同国軍の兵力は約80万人。プーチン大統領は昨年12月、ロシア軍の兵力を17万人増員して130万人とするよう命じた。

ロシアは国防費でもウクライナを凌駕しており、2024年にはウクライナの目標額(438億ドル)の2倍以上となる1090億ドルを見込んでいる。

ウクライナも兵力増強に向けた法案を議会で審議中だが、前線の兵士の間には大幅な増強は期待するのは難しいと受け止める雰囲気が漂っている。

ウクライナのウメロフ国防相は最近、EUに宛てた書簡で、ウクライナの砲弾不足を「危機的」と指摘、各国に供給強化の取り組みを強めるよう求めた。

<無人機戦争>

ウクライナ戦では前線で戦闘機を見かけることが少ないが、これは防空システムが抑止力として機能しているのが主な理由だ。ただ、空域では両陣営が無人機技術で優位に立とうと争っている。

ウクライナは無人機の生産と技術革新の向上に取り組み、先進的な長距離無人機を開発している。一方、ロシアも巨額の投資により、ウクライナの初期の優位を帳消しにした。

その規模は驚くべきものだ。ウクライナのフェデロフ・デジタル変革相によると、ウクライナは昨年30万機余りの無人機を発注し、10万機余りを前線に送った。

一方、第59旅団の中隊長は、ロシアが無人機の使用を広げたことで、ウクライナ軍が要塞陣地を構築したり強化したりすることが難しくなったと述べた。「ウクライナ軍が何かしようとすると無人機に見つかり、2機目が何かを投下してくる」という。

ウクライナ軍の無人機パイロットに聞くと、ロシア軍も無人機のせいで貴重な車両や兵器を数キロ後退させざるを得なくなっている。

ただウクライナの3つの部隊のパイロットの話では、ロシアは無人機の数が既にウクライナを大幅に上回っている。ロシア国防省は今月、この1年で軍事用無人機の生産が急増したと発表したが、数値は明らかにしていない。

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