イベルメクチンを服用したコロナ患者は比較群より早く回復した=研究で示唆

新型コロナウイルス感染症の陽性と診断され、治療薬としてイベルメクチンを服用した人は、比較群よりも早く回復したことが、新たな研究で明らかになった。

英国の大規模研究において、イベルメクチンを投与された患者では、自己申告された回復までの期間が中央値で2日早かった。

回復の早さは統計的に有意であった。

イベルメクチンを投与された人は入院や死亡の可能性も低かった。入院・死亡した人の割合はイベルメクチンを服用した人で1.6%だったのに対し、一般的な治療を受けた比較群では4%だった。英国では症状の管理に主眼を置いた治療が一般的だ。

また、イベルメクチンを服用した患者は重篤症状が軽減し、回復が持続したという。

論文は2月29日にJournal of Infection誌に発表された。

この試験は、2021年6月23日から2022年7月1日にかけて実施された、イベルメクチン投与群2157人、通常治療群3256人を対象とした非盲検試験だ。参加者は無作為に割り振られ、症状と回復について報告した。

イベルメクチンの使用は支持しない=研究者ら

オックスフォード大学教授で試験の共同治験責任医師であるクリストファー・バトラー教授らは、ハザード比が1.14と、著者らが事前に規定した有意のハザード比(1.2)より低かったこともあり、肯定的な所見を軽視した。ハザード比は、治療が有益かどうかを判断するための1つの方法である。

論文著者らはまた、治療後3か月、6か月、12か月の時点で、参加者の過去2週間に体調不良を感じた日数、仕事への影響、医療制度を利用する可能性に差がないことにも注目した。

「全体として、これらの所見は症状の持続期間においてわずかな有益性を示すものの、我々が使用した用量と期間では、新型コロナの治療薬としてイベルメクチンの使用を支持するものではない」と著者らは述べている。

研究資金は英国政府が提供した。

利益相反の内容としては、研究者1名がアストラゼネカ社を含む製薬会社から助成金を受け、他の著者はオックスフォード大学から助成金を受けた。

PRINCIPLEとして知られるこの臨床試験は、研究者らによって「新型コロナによる自宅や病院以外の環境での回復の可能性に関する世界最大の臨床試験」として宣伝した。

イベルメクチンに対する評価が発表された際、バトラー博士は次のように述べていた。

「イベルメクチンは世界中で容易に入手可能であり、他の多くの感染症に広く使用されているため、安全性プロファイルが良好でよく知られた薬だ。いくつかの試験で初期の有望な結果が得られたため、すでにいくつかの国で新型コロナの治療に広く使用されている」

「PRINCIPLEのような大規模な試験にイベルメクチンを含めることで、新型コロナに対する治療効果がどの程度あるのか、またその使用に関連する恩恵や害があるのかどうかを判断するための確実なエビデンスが得られることを期待している」

医師らの見解

試験には参加していない米国人医師のピエール・コリー氏は、イベルメクチンが新型コロナからの回復をいかに改善したかについて、論文著者らは誤っていて軽視していると述べた。

新型コロナの治療薬としてイベルメクチンを長らく推進してきたコリー氏は、「PRINCIPLEは非常に肯定的な研究であったが、かえって否定的な研究として分析され、書き立てられた」とエッセイに綴っている。

彼は、著者らが事前に規定されたハザード比を用いて「統計的奇策」を行ったと非難し、PRINCIPLE試験の他の部分ではそのような基準は用いられなかったと指摘した。

「ハザード比に事前に規定されたレベルは必要ない。もしハザード比が1.0以上であり、統計的に有意であれば、ロバストな所見だ」と彼は言う。

また、この肯定的な所見に関しても、イベルメクチンが3日間にわたり1日1回しか投与されず、投与前に食事をとらないように指示されていたことを考慮して解釈されるべきだとコリー博士は述べた。

バトラー博士と共著者らは、イベルメクチンを食事と一緒に摂取すると血漿中濃度が上昇するという過去の研究結果があるにもかかわらず、「投与の前後2時間は食事を摂るべきではない」と述べていた

イベルメクチンが投与されたのは、中央値で症状発現から5日後であり、この期間は遅すぎてあまり効果がないと考えられる。イベルメクチン研究のメタ回帰分析によれば、イベルメクチンは症状発現後24時間以内に投与するのが最も効果的だ。

バトラー博士はコメント要請に応じなかった。

イベルメクチンが新型コロナに効いたとする研究もある。世界中の医師がマラリア対策などによく使われるこの薬を新型コロナの治療に使い始めた2020年以降、科学者たちの間で意見が分かれていた。

米国の臨床試験を含む他のいくつかの研究では、イベルメクチンは回復までの時間は改善しなかった。

もう一人の米国人医師で、この臨床試験の運営に携わったデビッド・ボールウェア博士は、英国の臨床試験で記録された回復の早さは、新型コロナの治療に使われることもある抗ウイルス薬のモルヌピラビルの非盲検試験で報告された回復の早さと同様だとXで主張した。

「モルヌピラビルもまた、『通常のケア』よりも2日早く症状が改善したが、二重盲検試験では有益性は認められなかった。プラセボ効果は自己申告の症状に影響するからだ」

メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。