統計上の失敗
RCTにおける治療効果の定義は、実際の観察研究で議論されているものとは異なる可能性がありますので、注意が必要です。
また、臨床試験の結果が明らかな効果を示していても、有効性を統計学的にどう定義するかによって、同じ結果が「効果なし」と解釈されることもあります。
統計が複雑な数学的モデルや、特定の意図を裏付けるために操作可能な数値データを含む場合は、その解析が困難になります。とはいえ、ここではあらゆる研究が操作的な意図なく良心的に実施されていると仮定しましょう。でないと議論が前に進みません。
軽症から中等症の新型コロナ患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、イベルメクチン投与群では55例中1例も死亡例がなかったのに対し、プラセボ投与群では57例中4例の死亡例がありました。さらに、侵襲的換気を必要とした患者は、イベルメクチン投与群ではわずか1.8%であったのに対し、プラセボ群では8.8%でした。
つまり、イベルメクチンは死亡リスクを100%減少させ、人工呼吸器の必要性を80%減少させたのです。
しかし、この論文では死亡率の比較や侵襲的換気のp値(実現値)は0.102で、統計学的に有意とされる基準値0.05を超えています。P値とは、ある結果が偶然発生する確率のことであり、0.05以下であれば、その所見は統計的に有意であり、公表する価値があるとみなされます。
この研究のp値は0.05以上であったため、大したことがないと判断され、研究著者らは、イベルメクチンが「わずか限界便益(効果)しか示さなかった」と結論づけました。
死亡率の100%減少や人工呼吸器の80%減少が、どうしてこのような取るに足らないものとして解釈されるのでしょうか?
2022年にJAMA Internal Medicine誌に発表されたI-TECH試験では、イベルメクチンを投与された患者の死亡率は1.2%であったのに対し、比較群では4%でした。p値は0.09と0.05より高かったため、上述の研究と同じ結論となりました。
この試験で死亡率が70%減少したことから推定すると
新型コロナで死亡したと報告された700万人の患者にイベルメクチンを投与していれば、490万人の命が救われた可能性があります。あるいは、PRINCIPLE試験で死亡率が64%減少したことから推定すると、450万人の命が救われた可能性があります。
イベルメクチンが命を救う可能性は、不必要な統計的閾値によって置き去りにされてきました。統計的有意性をめぐる問題は広く存在しており、科学者の間でしばしば混乱を引き起こしています。
2016年のネイチャー誌の論文は、p値の誤用について懸念を示しています。同誌に掲載された2019年のコメントでは、「統計的有意性の誤用は、科学界および科学的な助言を信頼する人々に多くの害を及ぼしてきた」と述べられています。
著者らは、「薬剤Yは効かない」と述べるような、薬剤の有効性に関する結論を導き出すために統計的有意性を使用しないよう呼びかけ、そうした断定が命を救う可能性のある薬剤の放棄につながりかねないと警告しました。
P値が0.05などの閾値より大きいからといって、「差がない」とか「関連がない」と結論づけるべきではないと著者らは示しています。
選択バイアス
介入研究、特にRCTには多くのバイアスがかかる傾向があり、なかでも一番大きいのが選択バイアスであることを、医師を含む多くの人は知らないかもしれません。予想される研究対象者の割り付けために適格と思われる人を除外することで、選択バイアスにつながる可能性があります。
新型コロナの早期治療が効果的な結果を得るために重要であることは常識です。治療開始が早ければ早いほど、より効果的です。新型コロナに対して承認されている抗ウイルス薬は、新型コロナ感染後すぐに、通常は発症から数日以内に使用されます。
例えば、パクスロビドとモルヌピラビルの登録試験では、症状発現後わずか5日以内に患者を治療しています。
しかし、PRINCIPLE試験では、イベルメクチンは症状発現から14日以内の患者に使用され、ACTIV-6では感染から平均6日後の患者に使用されました。
重症の腎臓病患者は抗ウイルス治療に反応しにくいため、通常は第III相試験から除外されます。このような標準的な除外基準はレムデシビル、モルヌピラビル、パクスロビドで採用されていますが、ACTIV-6やPRINCIPLE試験では採用されませんでした。
なぜこれらの臨床試験でイベルメクチンが不当に扱われたのでしょうか?
RCTのスポンサーが大手製薬会社である場合、研究機関が資金提供を受けていたり、研究員が製薬会社から雇われていたりといった、利益相反が生じることはよく知られています。利益と倫理の選択に迫られるこの業界で、金銭的誘惑に負けず、道徳的でいられる人はどのくらいいるでしょうか?
試験実施の目的が疑問に答えるためではなく、期待される結果を実証するためである場合、そこにはバイアスが潜んでいます。
利潤動機なく実証された有効性
RCTを実施してFDAの承認を得るには資金が必要です。あらゆる医薬品は、医師、データベース管理者、アシスタントからなる専門家チームが管理しなければなりません。そのチームが資金を確保し、治験責任医師をリクルートし、試験を実施する病院を見つけます。運営チームは試験を実施し、データを分析し、FDAの承認を得なければなりません。
イベルメクチンはジェネリック医薬品であり、収益性の高いマーケティングや製薬スポンサーがないため、保健当局、データ、顧客との新規申請を組織的かつ体系的に管理することは困難です。
とはいえ、世界中の医師がイベルメクチンを使用して患者を助け、貴重なデータを収集しています。
ウェブサイトc19ivm.orgは、新型コロナ治療におけるイベルメクチンの一貫した有効性を証明する102件の臨床試験データをまとめています。そこには、デザイン上の欠陥が認められた4件のRCTなど、イベルメクチンについて否定的な結論を出した研究も含まれています。
解析が開始されて以来、イベルメクチンは一貫して有効性を示しています。このメタアナリシスでは、対象となるすべてのイベルメクチン試験の綿密かつ透明性の高いリアルタイム解析が行われています。
試験は29ヵ国の医師または科学者1,139人によって実施され、142,307人の患者が対象となっています。全試験のうち、86件は査読付きで128,787人の患者を対象としており、49件はランダム化比較試験で16,847人の患者を対象としています。
比較群の研究では、イベルメクチンは新型コロナ感染のリスクを81%、死亡率を49%、ICU入室を35%、人工呼吸器使用を29%、入院を34%減少させることが示されました。
対照群と比較すると、感染前に予防策としてイベルメクチンを投与した群では、新型コロナの最も重篤な臨床転帰が85%減少しました。感染初期に使用した場合、イベルメクチンは重症度を62%減少させ、後期に使用した場合は臨床的重症度を39%減少させました。臨床的重症度は死亡、人工呼吸、病気の進行、入院によって測定されます。
全体像を検討するべき
これらの試験の設計者がイベルメクチンの投与量を知らなかったとは考えにくいです。以上のような解析があったにもかかわらず、イベルメクチンの投与量が不足したり、不利な試験デザインだったりしたのは、科学以外の要因が関係していると思われます。
既存の治療法がある場合、新薬や新たなワクチンは緊急使用許可を得ることができません。このたった1つの事実が多くの決定に影響を与えた可能性があります。
「新型コロナ治療にイベルメクチンを使用しないように」といった推奨を正当化するためにNIHのウェブサイトに掲載されているRCTは、いずれも私がデザイン上の欠陥(あるいは不正の可能性)があると判断したものです。
新型コロナ治療にイベルメクチンが有効であることを示す査読済みの研究は、説明もなく撤回され、医師らは悪者扱いされ、検閲を受けました。真実を語ったために、個人情報がインターネット上にさらされることもありました。
ニューヨーク・タイムズやCNNなどの大手メディアは、不完全かつ不適切に解釈された臨床試験を報道し、イベルメクチンの効果を正確に表せませんでした。
イベルメクチンの問題を検証する際は、陰謀論や誤情報として片付けるのではなく、心を開いて全体像を検討することが重要です。そうやって、より多くの情報に基づいた決断を下すことで、命を救うことができるのです。
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