ふきの煮物(kikisorasido / PIXTA)
【伝統が紡ぐ養生料理】

千年の歴史を持つ春の薬膳「ふきの煮物」

愛知県の伝統的な郷土料理である「ふきの煮物」は、平安時代から愛され、千年にわたる歴史を誇ります。

「ふき」は、漢方医学では木の性質に分類され、主に肺の潤いを保ち、咳を和らげる効果があります。また、体内の熱を冷まし、血行を促進し、腫れを抑えるなどの効果もあります。これらの特性から、「ふき」は肝臓や肺の健康をサポートし、体にある熱を冷ましたり、潤したりする役割を果たします。

蓮のような葉、セロリのような茎、独特の香り

ふきを初めて見たとき、多くの外国人が西洋のセロリと間違えることがあります。

市場でよく見かけるふきの多くは愛知県で栽培されたものです。愛知県のふきは、成長速度が速く、葉ののびが早く、茎も太く、香りも良いことが有名で、「愛知早生(わせ)ふき」として知られています。このふきの主な産地は知多半島で、その栽培の歴史は明治時代中期にまでさかのぼります。

市場でよく見かけるふきの多くは愛知県で栽培されたもの(マーボー / PIXTA)

現在の東海市で最初に発見されたこの品種は、経済価値やシャキシャキとした食感、健康に良いとされる点で、日本にある他のふきよりも優れていると評価されています。その結果、周辺地域でも広く栽培されるようになり、愛知県の自慢の食材となっています。

立春を過ぎると、市場で次第にその姿を見かけるようになります。2月から5月に収穫される「春ふき」は春の到来を感じさせる野菜です。春ふきは、肝臓や肺の健康をサポートし、心臓や肺の病気を予防することが期待されています。中医学の文献によれば、ふきは咳や痰を和らげ、肺を潤す作用があります。そのため、春に起きやすい疲労や不調を軽減し、めまいや不眠、イライラ、食欲不振、肌の乾燥やかゆみ、目や喉の不快感など、季節の変わり目によくみられる症状に効果が期待されています。

 

「ふきの煮物」レシピ

ふきを調理する際は、まずあく抜きを行います。約4cmの長さに切り、だし汁で煮て召し上がるのが一般的な食べ方です。味噌を加えてアレンジすることもおすすめです。

ふきは独特の風味や食感を楽しめる食材ですが、下処理を怠ると苦味やえぐみが強くなってしまうことがあります。また、天然の毒素を含んでいるため、しっかりと下ごしらえすることが大切です。あくを抜く方法は、ふきに少量の塩を振り、板ずりをして表面をこすることです。その後、熱湯に数分間浸して煮こぼし、流水で冷やした後に、筋を取り除きます。

 

<材料>

ふき(水煮)  200g

【A】 白醤油  大さじ1強

【A】 みりん  大さじ1

【A】 だし汁  150ml

【A】 酒    大さじ1

 

<作り方>

1,ふきは塩をまぶしてまな板で擦ります(板ずりします)。

2,フライパンで湯を沸かし、1を5分ほどゆでて冷水に取り、薄皮を丁寧にむき、4cmの長さに切ります。

3,鍋にAを沸かし、2を入れて落し蓋をし、10分ほど煮ます。そのまま煮汁につけて冷まします。

 

関連記事
ナスは、現代医学の観点からは単なる野菜、食材であり、薬ではありません。しかし、伝統的な中国医学では、薬として使用することができるため、薬膳という考え方があります。 では、なぜ食材が中国医学では薬になるのでしょうか?実際、中国医学の視点からは、何でも薬になり得るとされています。
日本の味噌汁が、人体の五要素の力を動員して免疫力を高め、ウイルスの侵入を防ぎ、風邪や疫病を防ぐ薬膳であることは驚くべきことです。 その背後にある理由は非常にシンプルなので、コロナの流行を背景に調べてみましょう。
「たけのこの木の芽和え」は京都発祥の春の伝統的な郷土料理です。食材は季節に応じており、京たけのこと木の芽(山椒)を組み合わせることで、胃腸を温め、血を補い、代謝を促進する働きを持ちます。
「たけのこの木の芽和え」は京都発祥の春の伝統的な郷土料理です。千年の歴史を持ち、陰陽説や五行説に基づき、中国・唐の時代に伝わる養生料理の一つです。
昔から、冬には体を養うべきだという民間の言い伝えがあります。冬は脾と胃をケアするのに適した時期です。人々は特別な栄養食品がないと心配する必要はありません。日常的にジャガイモを食べるだけで、最も良い養生法です。ここで、伝統的なジャガイモ料理を2つご紹介します。
蓮根は漢方医学では「霊根」と称され、血管の詰まりを解消し、血栓の形成を防ぐ効果があるとされています。古くから、「霊薬」として、心肺の調和を図り、さまざまな病気を予防するために民間で用いられてきました。