眠れる夜へ:トマトを活用した不眠解消レシピ

を迎えると、夏という最も暑い季節が始まります。夏は五行説では「火」に相当し、心臓に関連しています。そのため、暑さで体が熱くなりやすく、不眠の症状が出やすくなります。眠れなかったり、途中で目が覚めたり、夢を多く見てぐっすり眠れなかったりすることがあります。

また、暦によれば、今年は「甲辰年」とされ、『黄帝内経』によると、この年は湿気が多く、胃腸が弱くなりがちです。その結果、食欲が落ち、腹痛や下痢を引き起こしやすくなります。また、イライラや不安が増し、不眠が悪化しやすくなるとも言われています。

そこで、胃腸を元気にし、「心」を落ち着かせる食事が大切です。「心」の熱さや湿気を解消する方法を見つけましょう。まずは、不眠を引き起こす原因を理解し、次に簡単に作れるトマトを使った食事療法のレシピをご紹介します。

 

夜の安眠を取り戻そう

不眠症は、まるで太陽が昇ったままで、夜が存在しないかのようなものです。

昼間、人は活動的になり、エネルギーが湧き出てきて元気に過ごします。これを中医学では「陽気」と呼びます。陽気は昼間に体を活性化させるエネルギー源です。しかし、夜になるとこの陽気は体の中に引きこもり、心を落ち着かせて睡眠へと導く役割を果たします。

昼間太陽が昇り、夜沈むように、体内のエネルギーも夜になると休息を取るために内側に引きこもります。

人体の五臓は四季に対応しています(sungoby / PIXTA)

 

しかし、特に夏の暑い時期には、心の「火」のエネルギーが強くなりすぎ、昼間のような興奮状態が続いてしまうことがあります。これにより、イライラや不安、不眠が引き起こされるのです。

したがって、安眠を得るためには、心の中の熱を冷ますことが必要です。では、一般的な食材の中で、この熱を調整し、体のバランスを取り戻すには何を食べればよいのでしょうか。

 

トマトの力で心と体をリフレッシュ

トマトには、心を落ち着かせ、睡眠を促進する効果があります。中医学では、赤い食べ物が心に良い影響を与えるとされています。トマトはその形が心臓に似ているだけでなく、水分が豊富で涼やかさがあるため心の熱を冷ますのに適しています。夏の暑さで過剰に熱くなった心を癒すための、自然の贈り物と言えるでしょう。

伝統的な食事療法では、夏には酸っぱい食べ物を多く摂ることが勧められています。これは、食欲を増進し、体に良い影響を与えるためです。

 

五味はそれぞれの臓器に対応しています(sungoby / PIXTA)

 

中医学では、酸味が肝臓に、甘味が脾臓に良いとされています。酸味と甘味を含む食材を摂ることで、血液を増やし、体の水分バランスを保つことができます。トマトは酸味と甘味を持ち、その鮮やかな赤い汁は血液を補う働きがあります。夏にトマトを食べることは、心を落ち着かせ、体をリフレッシュさせる最適な食事法です。

 

トマトの食べ方に注意

しかし、夏は体の表面に陽のエネルギーが集まりやすく、胃腸のエネルギーが不足しがちです。そのため、湿気や寒さの影響を受けやすくなり、下痢を引き起こすことがあります。特に湿気が多い今年は、胃腸が弱い人は生のトマトを避け、温かい食材と組み合わせて食べることが大切です。生のトマトのみですと、脾臓や胃を冷やしすぎて、エネルギーのバランスを乱し、睡眠障害を悪化させる可能性がありますので、気を付けましょう。

 

夏におすすめのトマトレシピ

■トマトととうもろこしのスープ

(matsun / PIXTA)

 

<材料>

・トマト:2個

・じゃがいも:半分

・とうもろこし:半分(粒にバラけるのも、適切な大きさに切るのも良し)

・玉ねぎ:半分

・卵:2個

・ねぎ:適量

・オリーブオイル:適量

・塩:適量

・ブイヨンまたはだしの素:適量

 

<作り方>

1.トマトを洗って一口大に切り、玉ねぎは細切りにし、じゃがいもは薄切りにします。卵は溶きほぐしておきます。

2.鍋を熱し、オリーブオイルを入れてじゃがいもと玉ねぎを柔らかくなるまで炒めます。適量の水を加えて沸騰させた後、トマトととうもろこしを加え、中火で5分煮ます。

3.溶き卵をゆっくりと注ぎ入れ、均一になるようにかき混ぜます。

4.ねぎ、塩、ブイヨンまたはだしの素で味を調え、さらに2分ほど煮ます。

 

<効能>

トマトは体に水分を与えて涼しさをもたらし、疲労感を和らげる効果があります。卵とじゃがいもは消化を助け、エネルギーの源である脾臓の働きをサポートします。とうもろこしは体内の余分な水分を排出するのに役立ち、玉ねぎは体を温めて血流を改善します。オリーブオイルは呼吸器系の健康をサポートし、風邪の予防や炎症を緩和する効果があります。これらの食材を組み合わせることで、体を冷ましながら消化器系と呼吸器系を健康に保ち、リラックス感を高めることができるでしょう。

 

■トマトと牛肉の炒め物

(しまじろう / PIXTA)

 

<材料>

・トマト:2個

・牛肉:150グラム

・玉ねぎ:半分

・生姜:適量

・塩:適量

・醤油:適量

・植物油:適量

 

<作り方>

1.牛肉を薄切りにし、トマトを一口大に切ります。玉ねぎと生姜は細切りにします。

2.鍋を熱し、少量の油を入れて牛肉を炒め、色が変わったら取り出しておきます。

3.鍋に少量の油を加え、生姜と玉ねぎを炒めて香りを出します。

4.トマトを加えて炒め、汁が出てきたら牛肉を戻し入れてよく混ぜます。

5.塩と醤油で味を調え、全体を炒め合わせたら完成です。

 

<効能>

牛肉は体を温める性質があり、消化を助ける効果があるとされています。また、トマトは肝臓や心臓の健康をサポートし、血液の流れを改善し、心を落ち着かせる働きがあると言われています。この料理を食することにより、消化機能が促進され、夜になると体が落ち着き、ぐっすり眠ることができるようになるでしょう。

白玉煕
文化面担当の編集者。中国の古典的な医療や漢方に深い見識があり、『黄帝内経』や『傷寒論』、『神農本草経』などの古文書を研究している。人体は小さな宇宙であるという中国古来の理論に基づき、漢方の奥深さをわかりやすく伝えている。