健康長寿の鍵! 胃がんを防ぐ生活習慣

塩は人間の体にとって必要不可欠な栄養素の一つです。しかし、過剰に摂取することは健康に悪影響を及ぼします。最新の研究によると、食事の際に意識せずに食べ物に塩を振りかける人は、胃がんのリスクが大幅に高まることがわかりました。

これまでの胃がんリスク研究の対象は、塩辛い漬物、塩漬けの魚、ソースや味噌を好むアジア人が中心でしたが、今回の最新研究では、イギリスバイオバンク(UK Biobank)のデータを使用したことで、アジア人だけでなく、欧米人でも高塩分の食事によって胃がんのリスクが高まることが明らかになりました。

研究結果は2024年4月に『胃がん(Gastric Cancer)』誌に発表されました。イギリスの成人47万人を対象に約11年間の追跡調査を行い、食事の際に追加で塩を振りかける頻度と胃がんリスクの関連性を評価しました。塩を追加しない人と比べ、頻繁に塩を追加する人は胃がんにかかるリスクが41%増加することが判明しました。

研究責任者のティルマン・キューン(Tilman Kühn)氏は、「私たちの研究結果により、高塩分食事がもたらす悪影響を人々に認識させ、胃がん予防のために役立てたい」と述べています。
 

胃がんの若年化傾向

胃がんにかかるリスクは通常、年齢とともに増加します。胃がんと診断されたアメリカ人のうち、64歳以上の人は約60%を占めています。しかし、近年の研究では、50歳以下の成人が胃がんにかかる割合が増えている傾向がみられます。現在、高塩分の飲食は胃がんリスクを高めることがすでに証明されており、高塩分の加工食品やテイクアウトを好む若者も胃がんにかかるリスクが高くなっています。
 

頻繁に塩をかけることで寿命を縮める

食事の際に頻繁に塩をかけることは胃がんだけでなく、寿命にも悪影響を及ぼします。2022年に『ヨーロッパ心臓ジャーナル(European Heart Journal)』に発表された研究では、イギリスバイオバンクにある50万人のデータを9年間にわたり追跡調査した結果、食事の際に頻繁に塩をかける人は、尿中のナトリウム濃度が高く、過剰にナトリウムを摂取していることがわかりました。

塩を追加しない人や微量に使う人と比べ、頻繁に塩を追加する人は、50歳になると男性は寿命が2.28年、女性は1.5年短縮され、75歳前に死亡するリスクが高くなりました。
 

小さじ半分の塩で心臓病リスク1割増

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、アメリカ人は一日平均3300ミリグラム以上のナトリウム(約8.4グラムの塩)を摂取していますが、推奨量の2300ミリグラム未満(約5.8グラムの塩)を超えています。塩の過剰摂取は心血管疾患を患うリスクを高めます。

今年3月にアメリカ医学会誌『JAMA Network Open』に発表された研究では、アメリカ南東部の12州に住む合計6万人以上の成人を対象に、平均13.8年間の追跡調査を行いました。その結果、低所得者層のうち約80%の人が一日に摂取する塩の量が基準を超えていることがわかりました。

研究者はその他の要素を取り入れて分析した結果、一日にナトリウムの摂取量が1千ミリグラム(約2.5グラムの塩、小さじ半分に相当)増加するごとに、白人があらゆる誘因の心血管疾患で死亡するリスクが8%増加し、冠動脈心疾患で死亡するリスクが13%増加することが判明しました。黒人の場合はそれぞれ7%と8%増加しました。

一日にナトリウムの摂取量が1千ミリグラム(約2.5グラムの塩、小さじ半分に相当)増加するごとに、心血管疾患で死亡するリスクが増加する(Shutterstock)

 

高塩分を避けて天然食材を使いましょう

人間が通常に摂取する塩分の由来は、食材(ベーコン、塩漬けの魚、漬物、ソース、味噌など)や高塩分のスナック菓子(ポテトチップス、ポップコーンなど)、調理時に加える塩、食卓での追加の塩などです。

健康管理機関は塩分の過剰摂取を避けるように推奨しています。食材の面では、塩分を大量に使用している加工食品を避け、生活習慣の面では食卓にある追加用の塩を使わないようにしましょう。そして、通常の料理を作る際には、風味を増すために塩の代わりに天然食材を使いましょう。

  1. 料理に酸味を加える際には、レモン、リンゴ、パイナップル、トマト、ルバーブなどの天然の果物や野菜を使いましょう。
  2. 香りの強い天然食材(パクチー、タマネギ、ニラ、セロリ、パセリなど)を使って、食材本来の風味を引き出しましょう。
  3. 天然調味料(ネギ、ショウガ、ニンニク、コショウ、シナモン、オールスパイス、ローズマリー、タイムなどの天然のハーブやスパイス)を使って、料理の風味を引き出しましょう。
  4. 調理方法に工夫し、塩の使用量を減らしましょう。焼く、蒸すなどの調理法を活用し、食材の自然なうま味を活かして塩の使用量を減らしましょう。

また、外食を避けられない場合は、できるだけ塩分を減らすように店に頼むと良いでしょう。例えば、野菜炒めの際にしょうゆを少なめにするよう頼んだり、くん製、漬け、煮込みなど塩分が高い調理法の料理を注文しないようにすることが挙げられます。家での食事と同様に、食卓に置く塩やしょうゆなどをできる限り使わないようにし、追加の塩分摂取を避けることも重要です。

王佳宜