宇宙で一番多い元素に健康上の利点も様々 研究で明らかに

水素の治癒力:抗酸化作用から抗炎症作用まで

近年、水素分子は、その潜在的な治療効果から研究者や健康愛好家の注目を集めています。水素ガスの吸入、水素を豊富に含む飲用水、水素風呂など、さまざまな形で摂取される水素に健康上の利点が多くあることは、これまでの研究で示唆されてきました。これらの利点は、その強力な抗酸化特性、抗炎症作用、およびさまざまな病気に対する予防効果に由来します。

水素分子とは

水素は宇宙で最も単純で、最も軽く、最も豊富な元素であり、水素原子、水素イオン(正または負)、化合物(水やグルコースなど)中の水素、および水素分子と呼ばれる二原子ガス(H₂)など、さまざまな形で存在します。

水素分子は、2つの水素原子が結合し、二原子分子を​​形成するガスです。広範な研究により、この形態の水素には健康上の利点があることが実証されています。

神経変性疾患における水素分子

水素がアルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患に対して予防効果を発揮できることが、研究から分かっています。これらの効果は、神経変性疾患との関連が知られている炎症と酸化ストレスを軽減する水素の能力によるものと考えられます。

非営利団体「分子状水素研究所」の創設者兼エグゼクティブ・ディレクターのタイラー・W・ルバロン氏は、水素分子の利点について数多くの論文を発表しており、その使用を促進すべく周知活動にも力を入れています。

ルバロン氏は、幅広い疾患に有益な効果を発揮する水素の能力について、エポックタイムズに説明しました。

「あらゆる疾患の根本には炎症と酸化ストレスというメカニズムが潜んでおり、水素は炎症反応と抗酸化/酸化バランス、つまり恒常性(ホメオスタシス)の両方を緩和し、調整するのに役立ちます」

新生児を対象とした研究では、水素の脳に対する保護効果が実証されています。

水素水を使ったヒト研究では、低酸素性虚血性脳症(HIE)の新生児40人が対象となりました。HIEは、出生前または出生直後に、赤ちゃんの脳に十分な酸素が行き渡らないことで起こる脳損傷です。研究では乳児を2つのグループに分け、一方には水素水を経口投与し、もう一方にはHIEの標準的な薬を投与しました。研究者らは、水素水を飲んだ乳児は対照群よりもHIEのバイオマーカーの血清レベルが低く、症状が緩和し、発達テストの成績が優れ、水素水には全体的に保護効果があることを発見しました。

他の研究でも、水素分子が脳に及ぼす有益な効果が実証されています。レボドパ薬を服用しているパーキンソン病の日本人患者を対象としたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、48週間毎日1,000ミリリットルの水素水を飲むと、プラセボ群と比較して症状と生活の質が大幅に改善することが実証されました。この研究では、水素水を飲むことは安全で忍容性が高いとも述べられています。

2023年の研究では、水素ガスがアルツハイマー病患者に有益であることが示されました。研究は、「水素ガス(H₂)は、抗酸化作用、抗炎症作用、抗細胞死作用、エネルギー代謝の刺激など複数の機能を備えた、健康回復に効果的な医療ガスです」と示しています。

このオープンラベルのパイロット研究では、アルツハイマー病患者に対する水素ガスの治療的吸入の効果を評価しました。アルツハイマー病患者8人が研究に参加し、6か月に渡って1日2回、3%の水素ガスを1時間吸入した後、ガスを使わずにさらに1年間の追跡調査を行いました。その結果、治療前後に実施した2度の認知評価から大幅な改善が見られ、1年後も改善が維持されていました。研究では、水素治療は一時的な症状を緩和し、「疾患修飾効果」があると結論付けました。

水素の健康効果

2007年、太田成男氏と彼の研究チームが、後の水素研究のきっかけとなる画期的な研究をネイチャー・メディシン誌に発表しました。

研究では、分子状水素が選択的に作用する抗酸化物質として、有益な活性酸素種に悪影響を与えることなく有害な活性酸素種を中和することが分かりました。つまり、水素は過酸化水素などの有益な活性酸素を損なうことなく、細胞を損傷から保護し、炎症を軽減できるということです。過酸化水素は、細胞機能を維持し、感染から私たちを守るために必要です。

太田氏らの研究結果は、水素が心血管疾患、神経変性疾患、慢性炎症性疾患など、炎症や酸化ストレスに関連する疾患と闘うことができることを示唆しています。慢性炎症と関わりを持つ疾患として、関節リウマチ、糖尿病、がんなどがあります。

太田氏は、日本医科大学老人病研究所の生化学教授で、分子状水素に関する世界の第一線級の研究者でもあります。

同氏はエポックタイムズに対し、水素の効用について以下のように語りました。

「水素は実に素晴らしいです。水素には副作用、つまり毒性がないことから、従来の薬や食品とは異なります。重症患者にも健康な人にも、水素は有益な結果を示します」

太田氏と彼の研究チームは2007年の研究で、分子状水素は拡散しやすく、細胞膜を通過して組織に素早く移動する小さな分子であると述べました。

後続研究で、水素には幅広い有益な生物学的効果があることがわかりました。

肺疾患の治療薬として水素分子を調査した2022年の研究では、「分子状水素はほぼすべての臓器に生物学的効果を発揮します。水素には抗酸化作用、抗炎症作用、抗老化作用があり、オートファジーと細胞死の調節に寄与します」

オートファジーとは、細胞の自然な浄化・リサイクルプロセスのことで、特にストレス下や苦境において、古くなった、損傷した、または不要な成分を分解し、重要な細胞機能のためにリサイクルします。

分子水素研究所のウェブ記事には、論文が約3,000件、ヒト研究が150件しかない新たな研究分野であるにもかかわらず、水素が170を超えるさまざまなヒトおよび動物の疾患モデルと、基本的に人体のあらゆる臓器で治療可能性を持っていることを、公表文献や研究者らが示唆していると書かれています。

水素分子の投与方法

水素の摂取方法はいくつかあります。マスクまたは鼻カニューレを介して水素ガスを吸入したり、水素水を飲んだり、水素風呂に浸かるのが最も一般的で、いずれも水素ガス、つまり水素分子を使用します。

ルバロン氏は、分子状水素やその摂取方法、体内での機能について多くの誤解や行き違いがあると説明しています。

「ガスを吸入することも、水に溶かして飲むこともできます。つまり、水は溶解した水素ガスの運搬体でしかなく、たとえば炭酸水と同じです。水素はガスであり、水分子と結合したり、水の構造を変えたりすることはありません。水に溶けるだけです」

太田氏は、水素水を飲むことの利点をシンプルに説明しています。「分子状水素は非常に小さいため、細胞に入り込み、血液脳関門を通過できます。水素水を飲んだ後、約10分で水素が体全体に広がります。体内に1~2時間留まり、肺から吐き出されますが、その良い効果は丸一日続くため、一日中飲み続ける必要はありません」

安全性と毒性

分子状水素の最も素晴らしい点は、その安全性にあります。太田氏は、世界中で実施された数千もの研究に基づき、分子状水素は非常に安全であると述べています。「公表文献から分かる限り、副作用、有害作用、毒性作用の報告はありません」と彼は述べました。

ルバロン氏は、水素分子の研究はまだ初期段階にあることを強調しています。多数の小規模研究で有望な結果が示されていますが、その真の臨床的有効性、最良の投与方法、理想的な投与量と頻度に関する重要な疑問に答えるには、より大規模な研究が必要です。

ルバロン氏は、不確実性な側面があったとしても、潜在的な利点と高い安全性があるので、水素に関する議論に抵抗はないという。

「水素には多くの利点があるでしょう。副作用は知られていませんし、身体にとって非常に自然なものですから、誰でも手に入るようにすべきだと思います。それが、私が水素について公に話すことに抵抗がない理由です。安全性がすでに分かっているという点で、それは医薬品や新薬とは異なります」

結論

分子状水素は、ユニークな特性を持つ興味深い分子です。太古の昔から私たちと共にあり、私たちの体にとって自然なものであり、健康な腸内微生物叢が(消化の副産物として)生成するもので、無毒です。

水素治療はまだ主流の治療法ではありませんが、一部の国、特に日本やアジアの他の地域では医療に使用されており、広く受け入れられ、政府の支援を受けています。

一般の関心の高まりと有望な研究結果により、分子状水素の利点に関する調査が引き続き推進されています。認識が広がり、さらなる資金を得て研究が進めば、水素の効果に関して残された疑問に答え、将来の医療における水素の潜在的な役割を決定することにつながるでしょう。

太田氏は将来について明確なビジョンを持っており、今後の水素研究で重点を置きたい点についてエポックタイムズ に語っています。

「私の夢はアルツハイマー病患者を改善することです。アルツハイマー病患者を改善することに成功した人は誰もいません。これが私の夢です」

鍼灸医師であり、過去10年にわたって複数の出版物で健康について幅広く執筆。現在は大紀元の記者として、東洋医学、栄養学、外傷、生活習慣医学を担当。