自然の中で過ごすことを推奨する「自然処方」が、高血圧、うつや不安、不眠症の改善に効果があることが、新しい国際的な研究で明らかになりました。自然処方とは、森や庭、公園、草原などの緑の多い場所で時間を過ごすことを勧めるものです。
この研究は、2023年4月5日に『ランセット・プラネタリー・ヘルス』に発表され、ニューサウスウェールズ大学のシャオチー・フェン教授と、ウーロンゴン大学のトーマス・アステル=バート教授が主導したもので、92の国際的な研究を系統的にレビューし、メタ分析を行いました。
フェン教授によると、自然とのふれあいは、人々が社会的交流を深めたり、身体活動を増やすといった健康的な行動を促進するため、うつ病、喘息、心血管疾患などに対する処方薬の必要性を減らす可能性があるとのことです。
「証拠は、自然処方が身体的および精神的な健康を回復し、向上させる能力を育てるのに役立つことを示しています」とフェン教授は述べています。
「今後は、特に自然とのふれあいが少ないが、最も恩恵を受ける可能性が高い人々に対し、持続的に自然処方を実現する方法を考える必要があります」と彼は付け加えました。
フェン教授によると、この研究は、自然環境が健康に与える影響に関する長期的な研究プログラムに基づいています。彼の以前の研究では、特定の緑地の近くに住むことが、治療的な効果をもたらす可能性があることが示されています。
ニューサウスウェールズ州の5万人を対象とした調査では、樹木の覆いが30%以上ある地域に住む人々が、より良い健康状態を報告し、心理的なストレスが軽減されていることがわかりました。
この研究は、シドニー市が2050年までに緑地の40%カバーを目指すために、3億7700万豪ドル(2億5400万米ドル)の投資を行う方針にも影響を与えています。
しかしフェン教授は、「近くに質の高い緑地、例えば公園があったとしても、すべての人がその場所を訪れ、恩恵を受けるわけではありません」と述べています。
「どのようにすれば、人々が自然と再びつながり、自然を楽しむようになるのか。そこで『自然処方』のアイデアが出てきます」と彼は説明しています。
薬の必要性を減らす効果
フィンランドで行われた7,300人以上を対象とした研究が『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル』に発表されました。この研究によると、週に3~4回自然の緑地を訪れる人々は、週に1回未満しか自然環境に触れない人々と比較して、向精神薬を使用する可能性が33%低く、降圧薬を使用する可能性が36%低く、喘息薬を使用する可能性も26%低いことがわかりました。
この2年間の研究は、自然環境に身を置くことが、人間の健康に有益であるという新たな証拠を提供しています。
予防医学の専門家であり、ロブサン予防医療クリニックの院長であるギャルツェン・ロブサン医師は、次のような多くの健康効果があるとして、患者に森に出かけることを勧めています。
慢性炎症の軽減
免疫力の向上とがん予防
ストレス解消、気分の改善、自律神経系の調整
血圧の低下と糖尿病の管理
注意の集中が難しく、衝動性や多動性が特徴の神経発達障害(ADHD)の管理と集中力の向上
喘息の管理と肺機能の改善
目の健康の改善
自然処方への関心の高まり
自然処方は、標準的な医療ケアを補完するものとして、世界中でますます広がっています。
イギリス政府は最近、「グリーンソーシャル処方」の試験プログラムに5.77億ポンド(約7.22億米ドル)の投資を行い、カナダでは全国的な自然処方プログラムが導入されています。
フェン教授は、オーストラリアでも大規模な自然処方プログラムが必要だと指摘しています。
「自然処方はどのくらいの期間が適切なのか? 処方にはどのような内容が含まれるべきか? 誰が、どのように処方を実施すべきか? これらの疑問には、まだ明確な答えがありません」とフェン教授は述べています。
「もし自然処方を全国的な制度にしたいのであれば、しっかりとした証拠を提供する必要があります」と彼は付け加えています。
(翻訳編集 華山律)
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