ある旅人が、遠く離れた土地へ行くためにロバを連れてきました。ロバの飼い主も同行し、ロバを引きながら道案内をしました。
道は木がない広い場所に続いていて、太陽がとても強く照っていました。とても暑かったので、旅人は休むことにし、日陰がなかったため、ロバの影に座りました。

この暑さは旅人だけでなく、ロバの飼い主にも影響を与えていました。むしろ、歩いていた分、飼い主の方がもっと疲れていたのです。飼い主もロバの影で休もうとしましたが、旅人は「ロバを借りたけど、その影まで借りたわけじゃない」と言って、言い争いが始まりました。
二人の言い争いはどんどん激しくなり、ついには殴り合いになりました。その隙に、ロバは逃げてしまいました。
このお話から、私たちが学べることは、
『自分のことばかり考えず、他の人の気持ちや権利も大切にしよう』
争いごとをしているうちに、思わぬ大切なものを失ってしまうことがあるよ。
この物語は『子どものためのイソップ童話』(1919年)から抜粋されたものです。
イソップ(紀元前620年頃–紀元前564年頃)は、ギリシャの物語作家であり、「イソップ寓話」として知られる多くの寓話を残した人物です。彼の物語はその道徳的価値を通じて、長い間、私たちの文化や文明に影響を与えてきました。これらの話は、子どもたちの教育や道徳的な人格形成に貢献しただけでなく、普遍的な魅力を持ち、大人たちがその中にある美徳や警告に耳を傾けたりすることで、自己反省にも繋がっています。
(翻訳編集 井田千景)
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