写真はイメージです(Shutterstock)

湿気疲れに鯛の蒸しもの

大暑はただ暑いだけでなく、心臓への負担が大きくなる時期です。さらに、この時期は五行でいう「土」の季節にあたり、湿気が体にこもりやすくなります。その結果、胃腸の働きが弱まり、食べ物からうまくエネルギー(気血)を作れなくなる――これが中医学でいう「湿気が脾を困らせる(湿困脾)」という状態です。

脾(胃腸)は栄養を体中に運ぶ役割を持ちますが、湿気でその働きが鈍ると疲れやすくなり、湿気がたまりすぎると体がむくみます。元気を取り戻すには、まずは胃腸を軽くしてあげることが大切。それには、胃腸を整え、湿気を外に出す魚料理がぴったりです。

今回おすすめするのは、夏にうれしい「鯛」。

鯛のイラスト(Shutterstock)

鯛は身がやわらかく上品な甘みがあり、体を冷やしすぎず温めすぎない平性の食材。胃腸を助けながら水分代謝を促すので、むくみやすい人、食欲がわかない人、朝起きるとまぶたや脚がむくむ人、食後にだるさを感じる人に向いています。日本では一年中手に入りますが、特に夏の海鯛は風味が良く、おすすめです。

これからご紹介するのは、さっぱりしているのにしっかり満足できる一品です。

 

鯛と枝豆・冬瓜の蒸しもの

【材料(2〜3人分)】

・鯛の切り身 2切れ(約200g)

・冬瓜 150g(皮をむき薄切り)

・枝豆(むき実) 50g

・生姜 2枚

・長ねぎ(ぶつ切り) 適量

・昆布だし 200ml

・塩 少々

・しょうゆ 小さじ1

・日本酒 大さじ1

【作り方】

  1. 鯛に塩と日本酒を少しふり、臭みを取る。
  2. 深めの器または蒸し器に、冬瓜と枝豆を敷き、その上に鯛、ねぎ、生姜をのせる。
  3. 昆布だしと調味料を加え、蒸し器で約15分、鯛に火が通るまで蒸す。

    (蒸し器がない場合は、深めのフライパンや鍋で蒸してもOK)

冬瓜は水分代謝を助け、枝豆は胃腸を元気にし、生姜は体を温めて余分な湿気を追い出してくれます。やわらかな鯛の身と合わせれば、油っこさがなく、軽やかでありながらも、しっかり力になるひと品です。夏の湿気でむくみやすい人、食欲が落ちている人の体を整えるのにぴったり。

蒸す調理法は胃腸にやさしく、素材の味と栄養をそのまま生かせるので、子どもから年配の方まで安心して食べられます。

ごはんや雑穀ごはんを添えれば、大暑の時期にぴったりの、体にやさしい食卓が完成します。

夏の養生でいちばん避けたいのは、実は冷たい飲み物ばかりに頼ること。本当に元気を取り戻してくれるのは、湯気が立ち、体の巡りを整えてくれるこんな家庭料理です。体が楽になれば、心もすっと軽くなります。

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