中国西安での臓器提供キャンペーンに批判 世論の反発招く
中国における強制的な臓器摘出は、長年にわたり国際的な非難の対象となってきた。
西安での新キャンペーンに批判
中国の西安市で当局が実施した臓器提供キャンペーンが、世論の反発を招いている。
キャンペーンは「生命をつなごう」というスローガンと、肺のイラストが描かれた紙を持つ少年のイメージを用いており、陝西省紅十字会と臓器提供管理センターが主導している。
当局は自主的な提供キャンペーンと位置づけているが、移植乱用の多い中国において、子どもを象徴に使うことはより深い思想的懸念を呼んでいる。
子どもへの思想的影響の懸念
独立評論家の張清氏は、中国のSNS上で怒る保護者らの投稿を分析。多くの親が、中国共産党が子どもに臓器提供を潜在的に刷り込んでいると批判しているという。
ある母親は、西安の小学校3年生の子が「自分の目を寄付したい」と言い出し驚いたと語った。その後、学校が保護者の同意なく臓器提供の概念を導入していたことが判明した。
張氏によると、これは孤立した例ではなく、2023年にはすでに国営メディアが学校での臓器提供宣伝を進めていた。高校生の保護者も同様の報告をしており、教材に臓器提供を奨励する内容が含まれていることも確認されている。
浙江省の教科書では、臓器提供の登録を「高校生の通過儀礼」と描き、提供を奨励していた。
教育現場での「美化」
小学校の国語教材には、子どもが臓器を寄付して「英雄」として描かれる物語が掲載されていることもある。
実際、6歳の男児が亡くなり臓器を寄付したという読解問題が小学3年生用に出題されるなど、子ども向け教材に頻繁に登場している。
さらに、2020年には中国全土で大学を中心に臓器提供の推進が指示され、大学キャンパスで宣誓やイベントが行われた。小学生も動員されるケースがあったという。
ある動画では、中国の学生が「臓器提供のために尽くす」と誓う場面が拡散された。こうした活動は臓器提供を「愛国的で美徳」とみなす風潮を生んでいる。
国際的な懸念と批判
このようなキャンペーンの背景には、中国の移植医療における深刻な乱用疑惑がある。
2019年、ロンドンで開かれた独立人民法廷は「中国では良心の囚人が臓器目的で殺害されている」と全会一致で結論づけた。特に法輪功学習者が主要な臓器供給源とされた。
法廷はまた「中国の移植インフラは依然として維持されており、臓器の短期間供給の説明がない以上、強制摘出は今も続いている」と指摘した。
米国務省も人権報告書で強制臓器摘出を懸念として繰り返し言及しており、2024年の報告書では国連人権専門家の声明を引用し「中国の強制臓器摘出は、特定の民族・宗教・言語的少数派を標的にしている可能性がある」と警告している。
米議会での動き
こうした事態を受け、米議会でも法整備が進められている。
2025年5月5日、米下院は法輪功保護法(HR 1540)を全会一致で可決。この法案には、法輪功学習者からの強制臓器摘出に関与した人物への制裁措置が盛り込まれている。